人気ポッドキャスト配信ユニット「ハダカベヤ」に学ぶ、センシティブな話題をフラットに話し合う方法


タレントのIMALUさん率いる「ハダカベヤ」は、メグさん(起業家・ プロデューサー)、なつこさん(マーケティングプロデューサー)といった同世代の3人からなるポッドキャスト配信ユニット。番組では、ジェンダー、恋愛、結婚、セックス、女性活躍、人種問題などの社会課題にあえて触れ、オープンにディスカッションを繰り広げている3人。センシティブな話題にも自然体でお話する様子を聞いていると、「私はこう思う」と自分の意見を伝えたくなる空気感を感じます。今回は、そんな3人に「自分の意見の伝え方」をテーマにインタビュー。
Vol.1では、ハダカベヤを始めたきっかけから、フラットに意見を言い合えるようになるまで、をお聞きしました。
飲み友達同士、お試しで始めた配信
――もともと飲み友達だった3人が集まったそうですが、ハダカベヤとして活動を始めたきっかけから教えてください。
IMALUさん:まず、メグと私は小学校からの同級生で、メグとなつこは高校からの友だち。普段からよく飲みに行ったりしている仲だったんですけど、ランジェリーブランドを立ち上げたメグが性教育の大切さなどを発信していて、それを見ているなかで、私自身も30代になっていろいろと思うことが出てきたんですね。結婚や出産、ジェンダーなど、そういった女性のウェルビーイングみたいなことを話せる場を作りたいね、ということで、最初はイベントをやろうとしていたんですけど、ちょうどコロナ禍になってしまって。そこで、当時流行っていたClubhouseでお試しみたいな感じで配信したのがスタートでした。
メグさん:いつからお試しじゃなくなったんだろうね。
なつこさん:気付いたら200回以上やってるってすごいよね。
メグさん:Clubhouse上で、皆さんの熱量を浴びた感じがありました。最初のテーマがたしか「わきまえない女たち」だったんですけど、思った以上にたくさんの声が集まって。私たちだけじゃなかったのか、みたいな。
IMALUさん:それで本格的にポッドキャストを始めることになり、少しずつアップデートしながら今に至るという感じです。
メグさん:でも、話したいテーマが無限に湧いてくるということは、世の中まだまだアップデートできていないんだなと思いますね。
――番組では、さまざまな話題を取り上げられていますが、そのテーマはどう決めているんですか。
メグさん:結構、会議してから決めるよね。それこそ飲んでいろんな話をしているときに、IMALUちゃんが「それ面白いね」とメモしてくれて、後日トークテーマになることもあるし、「これって私たちだけかな」というものやSNSで見つけたニュースを持ち寄ることもあります。
なつこさん:基本的に会話から生まれることが多い気がします。
メグさん:そのなかでも誰かを傷つける可能性があるものやセンシティブな話題はしっかりとミーティングして、私たちが見落としていることはないか、確認するようにしていますね。
IMALUさん:この間、配信したフジテレビ問題の回とかね。事前にしっかりと話し合ったよね。
――ハダカベヤでフジテレビ問題に触れるんだ、と驚いたところでもありました。
メグさん:触れない方がおかしいよねって言ってたんですよ。
IMALUさん:私はメグが言いだしてくれなかったら、話せなかったと思う。
メグさん:実際にお仕事しているIMALUちゃんはもちろん、誰も傷つけたくなかったんですね。IMALUちゃんが忖度する人間じゃないのも分かっていたし、どう取り上げるべきか迷いました。だからこそ個人を対象にするのではなくて、社会の構造やなぜこうなってしまったのか。今度はどうすればいいのか。そこにフォーカスして話せば、誰も傷つけずにディスカッションできるかなと。いや、でも話しづらかったよね、ごめん。
IMALUさん:いや、話せてよかったなとは思う。私自身、整理できていないところがあったから、どういった方向性で話すか、打ち合わせの時間を作ってもらったんですけど、そこでいろいろ気持ちや考えがまとまった感じでした。
ハダカベヤを始めてから変わった関係性

――番組を聴いていると、自由に自分の意見や考えを言い合っていて、その関係性にうらやましさを感じるところもあります。その正直に言い合える関係性って、どういう風に築かれたのでしょうか。
メグさん:本当はバチバチ?
IMALUさん:あはは(笑)。
なつこさん:最初のきっかけが飲み仲間としての紹介だったし、共通の友人がいるからこそ悪い人じゃないんだろうな、変な考えをぶつけてこないだろうな、というのは前提としてありましたよね。
IMALUさん:結構シリアスな話をすることになるから、ハダカベヤを始めるときに、なつこには確認したよね。なつこは会社勤めだから大丈夫?って。そう思うと、なつことは仲を深める前にハダカベヤが始まった感じ。むしろ深い話しかしていないかもしれない。
メグさん:私とIMALUちゃんは、激動の幼少期を一緒に乗り越えてきた感覚があって。深い経験を共有したいうか。成人式で再会したときに「よくぞここまでお互い生きてきたね」みたいな空気感だったんですよ。幼少期のときの関係にぐっと戻った感じがありますね。なつことは高校からの付き合いですけど、深い話をする関係じゃなかったんですよね。2人でいるのが心地いいから一緒にいるみたいな。そのなかで、なんとなくお互いの価値観やマインドセットを知っていった感じはあります。
――ハダカベヤを始めたからこそ言い合えるところもあるといった感じですが、そもそも皆さんはディスカッションするのが得意なタイプでした?
なつこさん:私は、苦手でした。というか、今も苦手かもしれません。ハダカベヤを通じて、わりと言えるようになったとは思いますけど、もともとは人の意見を聞いて、それを受け入れるタイプでした。
IMALUさん:誰に対しても?
なつこさん:そう。仕事も、友だちも、恋人も。ハダカベヤを始めてこうすれば話しやすいんだ、というのが自分のなかで分かってきたようなところがあるんですよね。「私、こういう意見なんだけどどう?」と真正面からガンガン来られるのが苦手なんだなと気付いたので、それをしないように話せばいいんだなと。「いったん私の気持ちだけ言います」みたいな、ふわっとした感じでテーブルに置いてみる。それに対して「よかったら感想とか教えてくれたらうれしい」みたいな感じで、見返りを求めなければ自分の意見を伝えられると思ったから、それをハダカベヤでは実践しています。
――自分の意見を言ったらどうなるのかな、と周りの目を気にしていた感じでしょうか。
なつこさん:めちゃくちゃ気にしていましたね。ちょっとでも相手に嫌だなという顔をされるのが苦手なんですよ。人目を気にするタイプなので、だったら言うの止めとこうと思っていました。
IMALUさん:ハダカベヤでだいぶ変わった?
なつこさん:むきだしで歩くようになってきたと思う。相手によるところもあるけど、近い人にはもっと出さなきゃ伝わらないんだ、というのは実感としてありますね。でも、それは2人がすごく自分をさらけ出してくれるタイプだから、なのかなとも思います。特にメグは、ディスカッションが得意なタイプじゃない?
メグさん:そうなのかな。ディスカッションしようと思って、ディスカッションしたことはないんですよね。会話をしていく中で、この人は、なぜそう思ったんだろう?と、理由が知りたいから質問してみるとか。もともと、知的好奇心が強いタイプだから、気付いたらディスカッションになっているだけのような気がする。
なつこさん:「それはこういうこと?」という感じで考えながら聞いてくるよね。
メグさん:それは、大人になったから。20代前半なんて、直球だったよ(笑)。大人になれたのは、ハダカベヤのおかげだなと思いますね。自分が「なんで?」と直球で聞くことが相手を否定してるように見えてしまうときがあるんだろうなと。特にポッドキャストは表情が見えず、声だけなので。相手に対して「純粋に興味があります」という態度を一度見せることが必要なんだと思って、そういう風にしてみようと。
でも、振り返ると小さいときから家族間でディスカッションすることが多かったようにも思います。父親が映画やアニメを見せて「どう思った?」と聞くタイプだったんですよ。当時、小学校低学年とかの私に。直接話せなかったら、親との交換日記に感想文を書かなきゃいけなくて。そういう経験が自分の意見や考えを他者に伝えることが楽しいという感覚を持った原体験かもしれないですね。
ディスカッションはお菓子を持ち寄るようなイメージ
――IMALUさんは、いかがですか。昔から物事をはっきり言える方でした?
IMALUさん:カナダに留学したことで変わった気がします。小さいときから、Yes/Noをはっきりと言える海外の人に憧れを持っていたんですけど、留学してから先生はもちろん、周りの人に「君はどう思うの?」と聞かれることがすごく多くて。個人の意見を尊重してくれるんですよね。そういった環境にいたのは私にとってすごく大きかったですね。

メグさん:主張しないと生きていけなそうだね。
IMALUさん:そういう人に憧れていたから近づきたい、というのが根っこにあるのかもしれない。
なつこ:確かに、IMALUちゃんはごまかすことがないよね。分からないが答えだとしても濁さず言ってくれるよね。
メグさん:分かる。適当に「分かった~」って飲み込むことがない。「分からないよ!」とちゃんと言ってくれる。
IMALUさん:でも、メグが言ってたみたいに若い時は私も白黒はっきりさせたい気持ちが強すぎて、「私はこうなの!」と言ってたような気がする。30代になって、ハダカベヤの影響もあると思うけど、相手をいったん受け入れるようになった。自分だけが正しいわけじゃないからね。
――お話を聞いているとハダカベヤのようにあえてテーマを設けて話す、というのも必要なことなのかなとも感じますね。
メグさん:会話のなかで「どう思う?」と相手に振ってみるだけでもいいのかもしれないですよね。意外とみんな気になっていたり、考えをシェアしたがっていたりする。ディスカッションって自然発生的に生まれていくものがベターだと思うんですよ。このテーマで話そう、とかしこまると白か黒かみたいになっちゃうけど。ティンカーベルの魔法の粉を浴びたらふわっと宙に浮いちゃうみたいにみんなが自然と話し出すことが理想の形なのかなと思います。ディスカッションは勝敗を決めるものじゃないので論破する必要がない。ディベートと混同しないでほしいなと思いますね。
なつこさん:私たちはハダカベヤという番組で発信しているから、皆さんも気になっていたんだなということが分かりますけど、そういったことをもっと自然と話せる場が増えるといいですよね。
メグさん:みんなでお菓子を持ち寄るような感覚でいいのかなって。「これ美味しいね」「私はこっちの方が好きかな」とか、そういうノリでいい気がします。
IMALUさん:たしかにディスカッションというと硬すぎるかも。話すことで、自分だけが悩んでいるわけじゃない、ということにも気付けるし、もっと声をあげていいんだ、声をあげることが大切なんだということはすごく感じます。
プロフィール
なつこ
マーケティングプロデューサー
アパレル・芸能事務所・webデザインの会社などに勤め、現在、国内でも有数のマーケティング関連企業にて勤務。直近まで国内大手の総合広告代理店に勤務しており、様々な角度からのコミュニケーションやマーケティング領域に精通している。
IMALU
タレント
語学を学ぶためカナダの高校へ留学。帰国後、ファッション誌でモデルデビューした後、現在はタレントとしてTVやラジオで活躍しながら、東京と奄美大島の2拠点生活をしている。映画・音楽好きでも知られており、イベントや配信ライブなどのMCやゲストとしても活躍している。
メグ
起業家・ブランドクリエイター
「株式会社XY」創業者兼COO。“下着で性教育”を標語に「Albâge Lingerie」設立。渋谷パルコにて同ブランドの直営店出店('21〜'23)。フェムテックのアクセシビリティ格差是正のため吸水ショーツを児童養護施設に寄贈するプロジェクト「Lingerie For Education」主宰。個人ではウェルビーイング視点でのブランディング支援やセクシャルウェルネス&ライツの発信を行う。
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