「おばさんはノースリーブ着るな」がまだ出回る世の中で、自分らしさを表現するために|前川裕奈さん×西井寛子さん
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第22回のゲストは、アパレルブランドの本社で働く西井寛子さん。店頭での販売員経験をもとに、お客さまのオシャレや体型の悩みに向き合ってきた西井さんが考える、私たちらしいファッションの選び方は、どのようなものなのでしょうか。フィットネスウェアブランドを経営する前川さんとともに、接客でのポイントも含めておしゃべりしました。
「こういうのもありなんだ」ファッション業界の変化
——プロとしてファッション業界を見てきたおふたりには、ここ数年の意識や価値観の変化はどのように映っていますか?多様なブランドが増えたような印象はあるのですが……。
西井:「こういうのもありなんだ」という幅が広がった感じはありますよね。これまでだったら「だらしない」と言われていたようなビッグシルエットが流行したり。
前川:人気の芸能人やアーティストの影響を受けて、今まではNGとされていたものがOKになったり、むしろオシャレと言われることもありますよね。私たちが学生の頃は、安室奈美恵さんや浜崎あゆみさんなどの“カリスマ”がいましたけど、今はSNSによって発信力のある有名人も多様化して、ともなって服装の正解も多様化しているイメージです。

西井:ファッションはルッキズムの影響を強く受けている業界のように思われがちですけど、実は比較的早い段階で、多様性の時代に入っていった業界なんじゃないかなと思っています。以前の画一的な「これがオシャレの正解」という時代から、「こういうのもオシャレだよね」と受け入れられる流れへの移行は、比較的早かったんじゃないかと。着こなし自体も、あえて着崩すこと楽しむような提案も増えてきていますし。
前川:ファッションを楽しむ人たちにとっては、「こうあるべき」という壁を壊していける存在ですよね。
勝手に“評価されやすい”ファッション
前川:業界全体も広告も多様化はしている……一方で、SNSを始めとした社会ではいまだに「脚が太いのにミニスカ履くな」とか 「おばさんはノースリーブ着るな」という声がありますよね。ファッションを見ている側の価値観は、そんなに多様化していないのかなと思ったりします。
——これは年齢差別であるエイジズムも関係してきますけど、たしかにSNSでは「年齢を重ねても好きな服を着よう」という投稿がある一方で、「こんな服装はおばさんに見えるからNG」みたいな投稿も話題です。それを見て「これを着なければいいんだ」と正解を見つけて安心する人もいる一方で、やっぱり「こうでなければダメ」という価値観があるなと感じますね。
前川:前回、西井さんが「無理にファッションで自己表現する必要はない」と言っていたのはその通りで、音楽や運動と同じように、好きな人が極めればいいとは思うんです。ただ、ほかの趣味と違うのは「ファッションは見られる」という点。音楽や運動の能力は披露するかどうか選べるけれど、ファッションは隠すこともできないし、必ず他人の目に触れてしまうんですよね。
西井:たしかに、ファッションだけは「見せない」という選択は難しいですもんね……。
前川:だから、やっぱり勝手に評価されやすい分野ではあります。「太っているのにピチピチの服を着てる」とか「ああいう服を選ぶってことはセンスないのかな」とか。もちろんそれってジャッジする側の勝手な価値観や思い込みなわけですけど。

西井:私は職業柄、着る人の目線で服を見ることが多いですが、たしかに同時に「他者からどう見えるか」という視点が切り離せないのもファッションの難しさですよね。
前川:他者から攻撃されにくい服を選ぶのも、寛子さんがおっしゃっていたように安心感にはつながると思います。でも、本当はめちゃくちゃ着たい服があるのに、それを他者の視点を気にして抑圧することになっているんだとしたら、やっぱりもったいない!
改めて話をしながら、自分らしさを見つけていく
西井:そのあたりも含めて模索しながら見つけていくのが、自分らしいスタイルなのかもしれないですよね。自分の好きを優先させることと、他者の視点を取り入れていくこと。これはどちらかに白黒つけなきゃいけないものでもないのかなって。
前川:そうですね。例えば、自分は金髪が好きだけれど、会社員として働くなかでは規定の範囲内の髪色にしておこう、とか。でも社会の枠組み的に「本当に金髪はダメなの?」と枠を広げていくことも必要なので、個人と社会、両方にアプローチしていくことが大事かなと思います。
西井:ファッションに関するルッキズムの話も、こうやって話していくこと自体に意味があるのかなと思います。人の服装を見てコメントする人って悪気がないケースも多いじゃないですか。
前川:一緒にいる人が、通りすがりの人を見て「ああいう格好ができるのは20代までだよね」とか言ってくるとか日常茶飯事ですよね。そのときは自分のことを言われていなくても、無意識のうちに「年齢が上がったときに若い格好をしていたら言われるんだ。着ないでおこう」となりますよね。
西井:「それを聞いてどんな気持ちになった?」とか「そういうときにどう返答する?」とか。毎日着たり見られたりする身近なものだからこそ、会話を重ねていけるとといいのかもしれないです。

「今の私」をファッションで表現していくこと
前川:話が戻りますけど、やっぱりそれが「自分軸」を見つけるということにもつながっていきますよね。尖った服装をしていたりする人って「自分軸」に見えやすいんですけど、例えば黒髪で、流行も取り入れた服装をしている場合こそ、ある意味「流行ってるから」なのか「自分のため」なのか見極めが難しいというか。
西井:そうですね。一見「誰にでも受け入れられる」ようなカテゴリの服装を選ぶことも、「自分が好きだから」ということも十分ありえますもんね。私は、今までいろいろなファッションを楽しんできて、今は自分らしさを表現するのに、よりシンプルなファッションを選ぶようになっています。そういう「今の自分」を楽しめているのが、今日の私の服装かなと思います。
前川:今日の服装もとっても素敵ですよね。ファッションは自由自在に変えていけるものなので、そのときの自分に合わせて素直に選んでいきたいですね。

Profile
西井寛子さん
関西出身。新卒でアパレルブランドに入社し、店頭での販売を経験後、東京本社へ。現在は接客経験を通して培った視点をもとに、WEBマーケティング領域でブランドの販売促進に携わり、チームリーダーを務める。プライベートではInstagramやPodcastで、30代のリアルなファッションや日常、価値観について発信中。
Instagram:@hirokonishii
Podcast:TOKYO OTONA DIARY(Spotify / Youtube / Apple Podcast)
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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