ウェルビーイングに自分を保つ、運動の魅力 前川裕奈さん×福田萌子さん|連載 #しゃべるっきずむ!
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第21回は、モデル・タレント・スポーツトラベラーとして活躍されている福田萌子さんをゲストにお迎えしました。初代バチェロレッテとして、自分自身や目の前の人に向き合う姿に心を奪われた人も多いはず。福田さんと前川さんがそれぞれ大切に発信されてきた「セルフラブ」についておしゃべりしていきます。
仲間ができることで自責から連帯へ
——おふたりの共通点として「運動」もテーマだと思います。前川さんはフィットネスウェアブランド「kelluna.」を経営しながら、趣味でランニングや自転車など。福田さんもスポーツトラベラーとしてトライアスロンなどのさまざまなスポーツに挑戦されています。
前川:萌子さんがSNSで開催されているランニングチャレンジ「#RunForTheFriendship」、私も参加させていただいています。「1ヶ月間、毎日2km走ろう」というコンセプトがちょうどよく、今朝も2kmを4本走ってきたところです。
福田:嬉しいです。1人だとなかなか重い腰が上がらないことでも、誰かと連帯して走るだけで支えられますよね。自己申告制なのですが、「誰かが私のことを思って走ってくれている、私も誰かを思って走ることができる」と思えるのが力になるなって。

前川:私自身、大学生の頃からランニングは続けているんですけど、最初は極端なダイエットの一貫で走っていました。食事も摂らずに無理して走るような感じで、全然楽しくなかったんです。だけど、駐在でスリランカに行って日本のノイズから離れ、現地で仲間と一緒に走ることで見える景色が変わった経験があります。
当時は国際協力の仕事でスリランカにいたのですが、あの国が私に与えてくれたエネルギーやセルフラブの考え方を日本に伝えていきたいという思いで、kelluna.を7年前に立ち上げました。「運動は痩せるためじゃなくて、心のウェルビーイングのためだよね」ということを発信しています。
福田:素晴らしいですね。
前川:先ほどの「仲間がいると支えられる」という言葉にすごく共感で、ブランドを始めてから、私もお客さんとの連帯をすごく感じるんですよね。ポップアップの店頭で何時間もお話ししてくれるお客さんが多くて、「服を買う」という行為はむしろ副産物なのかもと思います。「自分らしくいていいんだ」ということを確認して持ち帰る、パワースポットのような場所になっているんです。
私やスタッフ、お客さん同士が仲良くなっていくことで、いきなり「ルッキズムの呪いが溶けた」と簡単に解決できるわけではないかもしれません。でも、1人じゃないと思えたら、自責を払拭できます。「同じように思っている人がいるんだ」と思えるだけで、考え方が少しずつ変わっていくのかなと思いますね。
福田:人とのつながり、大切ですね。
前川:お客さんのなかには、kelluna.のウェアを着て運動するだけじゃなくて、部屋着や普段着として活用してくれる人たちもいるんですね。「畳んでいるときにセルフラブを思い出すよ」と言っていただいたりして、リマインダーになっているのが嬉しいです。この連載もさまざまなゲストに来ていただいて、仲間づくりだと思っていて。1人じゃない、ということが大事かなと思っています。
運動するのは誰のため?
福田:フィットネスウェアを販売していると、「ピッタリしたウェアを着るのが恥ずかしいから、少し痩せてから……」という方もいらっしゃいませんか?ボディポジティブの考え方が広まって、最近はよくなっているのかもしれませんが。
前川:よくありますね!ブラトップやタンクトップがメインなので「今の二の腕だと着れないから、もう少し走れるようになってから」という方、たくさんいます。「お尻が隠れるような丈の長いものは作らないの?」と聞かれることも多いです。ただ、kelluna.はセルフラブを伝えるブランドなので、“隠す”というのはコンセプトとズレてしまうな、と……。
福田:そうですよね。「痩せよう」という気持ちはすごくポジティブだし、モチベーションも大切だと思います。私自身も、外に出るお仕事をしているので、自分なりの理想の姿を目指して運動することもあります。それは容姿の面だったり、動きやすさだったり、さまざまな理由でね。だけど、そこに到達するまでの過程も含めて、運動や食事を楽しんでほしいという気持ちもあります。
前川:わかります。運動をハッピーなものとして捉えてほしいですよね。運動して痩せたり筋肉がついたりして体型が変わっていくのは全然悪いことではないけれど、身体を変えたい理由によっては運動自体が楽しめるかどうかが変わると思います。
私も大会前は減量したり走り込んだりしますけど、それは自分のベストを出したいから。萌子さんのように自分の美意識や動きやすさのためにボディメイクする人もいると思います。それが「恋人に好かれたいから」「SNSで褒められたいから」という他人軸になって運動するのは、つらいんじゃないかなって。

自分のためと人のための境界線を曖昧にする
福田:セルフラブに関することも、主軸をどこに置くのかが大切になってきますよね。頭がいいと思われたいから本を読むのではなく、自分が楽しいから読書をするとか。かわいいと言われるためにお洋服を選ぶのではなくて、自分が好きだから着るとか。理由を外側に託してしまうと自己陶酔や承認欲求になってしまうので、「私が好きだから、楽しいから、やりたいから」という軸を自分のなかに持っておくのが、セルフラブの土台なのではないかなと思っています。
前川:本当にそれが大切なんですけど、「自分のため/他人のため」という判断も紙一重の難しさがありますよね。世間が「これがいい」というものを押し付けてくる社会のなかで、「これは自分のためだ」と思っていても紐解いていくと、意外と社会からの刷り込みだったみたいなこともあったりします。だからこそ「これは本当に自分のためなのかな」という問いかけを自問自答する癖をつけるといいなと思います。
福田:結構「これは自分のため」「あれは人のため」って白黒つけられるものでもないのかなと、最近思うんですよね。自分のためでもあり人のためでもある、みたいなグラデーションのような気もします。例えば、私はよくランニング中に飲んだコーヒーの空きカップにゴミを拾って帰るのですが、それは自分がゴミ拾いをすることで気持ちよくて満たされるという側面があります。走りながらサッと拾ったり、スクワットしながら拾えると運動にもなりますし。
前川:めちゃくちゃポジティブ!
福田:一方で、それは街中からゴミがなくなってきれいになるという清掃活動でもありますよね。自分のためか、街のためか、どっちのためにやっているかと言われれば「どっちも」という感じです。ただ、“やらされている”わけではない、というのが大事かもしれません。その軸は持ちつつ、グラデーションのようにつなげていきたいなと思います。

変わっていくその過程を楽しんでほしい
——世の中では「運動=体型管理」のイメージが強いと思うのですが、おふたりは運動がダイエットや体型変化だけでなく、心のウェルビーイングにつながっていることを体感とともに発信されていますよね。
前川:すごくその実感がありますね。私はもともと痩せるために走っていて、そのときは景色も覚えていないくらいランニングがつらいものだったんです。でも、スリランカでランニングチームに入ってからは、みんなで一緒に走るのが楽しくて。走っていて気持ちいいなと思える心の健康につながっているのを感じていました。
福田:裕奈さんが参加してくださったランニングチャレンジも、毎日2km走ったところで痩せはしないと思うんです。まったく運動してきていない人だったら多少の変化はあるとは思いますけど、急激に痩せたりはしませんよね。目指しているのは、痩せることではなくてヘルシーな習慣をつくること。やっぱり体を動かすと血流がよくなって気持ちがいいし、気分もリフレッシュされて心が健康になると感じます。ダイエットのためだけじゃなくて、そういう心地よい習慣になってくれたら、と思います。
前川:あと、やっぱり「続けたこと」に対する自分への自信にはなりますよね。もともと運動が得意だったわけでもない人が毎日2kmを走り続けるってすごいことです。それをやりきった!がんばった!という実績そのものが、自分を褒められる証拠のようになっていく感覚がありますよね。
福田:何かを努力したという根拠がある自信は崩れにくいですよね。
前川:タイムや大会の順位がどうだったかという結果ではなくて、そこまでの過程で自分によしと言える。そういう意味では、受験勉強とかも似ているところがあるのかな。希望の学校に入れるかどうかも大事ではありますが、もし仮に希望通りにいかなかったとしても、毎日しっかりと勉強したことや身につけた知識は無駄にはなりません。大人になると、そうやってコツコツやっていく機会が減っていくので、運動でそういうことをしていけるのはいいですよね。
福田:あと運動のよいところは、わかりやすく体力がついてくること!「あれ、この階段を登り切っても息が切れていないな」という違いが、身体の変化は特にわかりやすいなって感じます。それもまた、自己肯定感につながりますね。
前川:運動は「やらなきゃ」みたいな文脈で語られがちですが、本当に体にも心にもいいことが多いし、素敵な思い出や経験にも繋がるから、自分に合った運動を見つけることをおすすめしたいなと思います。
*次回、セルフラブは日常のなかにあるということ。3本目「セルフラブの土台は、日常の小さな視点から」は、こちらから。
Profile
福田萌子さん
沖縄県出身。モデル・スポーツトラベラー。12歳からファッションショーやCMに出演し、モデルとして活動。現在は執筆活動のほか、SNSではスポーツの素晴らしさや、セルフラブ・メンタルヘルスの大切さを世界中に発信。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り+α」。
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