アパレル販売や接客中、お客様の自虐や謙遜をどう返す? 前川裕奈さん×西井寛子さん
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第22回のゲストは、アパレルブランドの本社で働く西井寛子さん。店頭での販売員経験をもとに、お客さまのオシャレや体型の悩みに向き合ってきた西井さんが考える、私たちらしいファッションの選び方は、どのようなものなのでしょうか。フィットネスウェアブランドを経営する前川さんとともに、接客でのポイントも含めておしゃべりしました。
販売員とお客様、関係性を作っていくこと
——最初に、西井さんの経歴を簡単にお伺いできますか?
西井:もともとは関西出身で、新卒で今も働いているアパレルブランドに入社しました。3年ほど販売の仕事をしたあと、東京の本社へ。現在は、WEBマーケティング領域でブランドの販売促進に携わりながらチームリーダーとして働いています。
前川:西井さんは、販売員として働いていた頃から発信することも好きで続けていたんですよね。
西井:昔から、人と話したり発信することが好きで。好きな服を着てSNSに載せたり、日常で感じたことを自分なりに言葉にするのは、自然と続いてきたことです。今もPodcast「TOKYO OTONA DIARY」で考えや日常のことをラフに話しているのは、その延長線上にある気がします。

前川:それで現在はマーケティングのリーダー、ぴったりだと思います。今でも店頭に立つことってあるんですか?
西井:不定期ですが、時々あります。うちのブランドはもともとお客様の年齢層も幅広いので、20〜60代くらいまでのお客様とお話しさせていただいていますね。私は時間さえあれば長時間お客様とお話するのが好きなので、そのコミュニケーションを好きだと思ってくださるお客様だと長いお付き合いになったりして。
前川:わかります!長い付き合いになると、前回買ったものや会話内容などを覚えていたりしますよね。私もkelluna.の古参のお客さんに関しては、店頭でお話ししてくれた趣味や生活スタイルはすべて覚えてます。「ピラティス通ってますもんね」みたいな話ができたり。容姿やコンプレックスに関わる話になりやすいアパレルの接客では、特に関係値ができているのは大事だと感じます。
西井:そうですね。私自身はライフスタイルまで一緒に考えられるような関係になれたら嬉しいですが、販売という場だからこそ、お客様が関係性を選べるのも大事かなと考えています。
お客様からの“第一声”で多いのは
——西井さんは販売員として店頭に立つこともあり、前川さんはフィットネスウェアブランド「kelluna.」のポップアップでお客様に向き合うこともあると思います。それぞれお客様との対話のなかでルッキズムを考えることはありますか?
西井:当時は「ルッキズムだ」とは思っていませんでしたが、やはりお客様が体型を気にされることは多いように思います。販売の現場ではサイズ展開があるのは当たり前のことだし、そこに良い・悪いは特にないんです。でも、お客様から「このサイズだと私には入らないから」とか、逆に小柄な方だと「服に“着られちゃってる”感じしますよね」とか……。
前川:わかります。kelluna.はフィットネスウェアなのでお腹や二の腕が見えたり、ピチッとしたレギンスだったりするので余計に体型を気にするお客さんは多いです。「セルフラブ」をテーマにしたブランドにも関わらず、「もうちょっと痩せてから着ようかな」「私にはこれ無理」という発言も、時々あります。
西井:気にされている方が多いですよね。「脚が短く見えるよね」「太って見えるよね」といったように、ご自身の見え方を気にされるところからお話しされる方が多い印象があります。
前川:私は店頭のマネキンの体型が非現実的な体型や画一的なスタイルで作られているのが好きじゃなくて、本当は多様な体型のマネキンを使いたいんです。ただ、会場によっては規定のマネキンを使わなくちゃいけなくて。でも、それを見たお客さんが「こんな体型だったらいいけどねえ」と言うのを聞くと、やっぱり悔しいなと思います。
kelluna.ではモデルにいろいろな体型の方を採用しているので、マネキンよりもポスターやフライヤーを見てもらうことも多いですね。「自分の体型では着れない」と思っていたのと同じウェアを、いわゆるモデル体型ではない子たちもイキイキと着ている様子を見てもらうと「自分もいいかも」となるお客さんも多いです。

自虐に対して「そんなことないです」と言うのって
西井:体型について言われたとき、こちらの返し方ってすごく難しいなと感じることがあって。気にされていることに対して「そんなことないですよ」と否定するのも、それって本当にいいのかな?と思う場面もあるんですよね。このあたり、前川さんはどう考えていますか?
前川:そうですね。「そんなことない」と言うと、結局「そうであってはいけない」という価値観を強めることになりますからね。私も「太ってるから」と言われたときに「太ってないですよ=太っていてはダメ」とは言いたくなくて、そういう返答はしないように気をつけてます。
しかも、「私の体型だと、このタイトな服は着れない」と言われたときに、お客さん自身がその体型を嫌だと思っているかどうかって正直わからないですよね。別に「私は自分の体型が好きだけど入らないだけ」という意味かもしれないし。
西井:たしかに。

前川:私はずっと色黒なのがコンプレックスだったんですけど、単純に「私の肌の色だと、この色は合わないかも」と言ったときに店員さんから「全然黒くないですよ!大丈夫!」と言われるとちょっとモヤモヤします。それで「やっぱり色黒はだめなんだ」と思っちゃったこともあるから。
西井:肌の色も体型と同じくらい様々ですよね。私自身も色黒で悩んでいたことがあるんですけど、いろいろな人と話すと逆に「色が白すぎて青ざめて見えるのが悩み」という方もいらっしゃいますし。
前川:接客に限らずですけど、やっぱり簡単に容姿のことを言及するのは難しいですね。
容姿を気にするお客様に、どう寄り添うか
——おふたりは、お客様がご自身の体型や見え方についてお話しされるとき、どのように接客するんでしょう?
西井:私の場合は、そこを無理に否定するのではなく、服自体の話をすることが多いです。「このアイテムのどこが好きでしたか?」などとヒアリングしていくと、素材や色などの好みが見えてきて、着こなしの幅が提案できるんですよね。服ってアイテム単体で完結することはないので、スタイリング含めて、お客様が安心できる範囲で求めているものを一緒に探していきます。
前川:「気にする必要ないです」「似合ってます」とゴリ押しはしないということですね。
西井:そうですね、もちろん客観的な意見はお伝えします。ただ、お客様自身が似合ってないと思っているものを無理に押し付けるのは違うなって私は思うので。お客様がネガティブだと感じている部分を無理に肯定はせずに、寄り添いたいと思います。心地よいと思ったり安心したりできるなかで、「この素材がお好きならこれはどうですか?」「似た色でこの形もありますよ」と提案しています。
前川:いいですね。kelluna.の場合は基本的に型のバリエーションはあまりないので、代替案を出すというよりは、「太ももが気になる」と言われたら「レギンスは、太ももやお尻が見えてたほうがかっこいいんですよ〜!」とか、お客様が体型を前向きに捉えられるような声がけをします。もちろん「私は、気になるときは上着を腰に巻いたりします」など正解を提示せずにヒントを提案することで、寄り添うことも忘れずに、ですけどね。
西井:自虐されたときは、否定もお世辞も言わないというのは販売員は意識している点かもしれませんね。あと思うのは、ファッションって“その人が着てファッションになる”んですよね。だから、その人が着るからこそ素敵だなと思う点は伝えますね。
前川:わかります。自分のブランドだと私自身が普段から着ているアイテムも多いんですけど、やっぱりお客さんが着ると雰囲気が全然違う。それを「肌が白いから似合う」「目の色が明るいから印象が変わる」とは言わずに、「自分が着たときと全然違くて驚きました!すごく素敵です!」と良い意味で抽象的に、でも素直に本音を伝えるようにしてます。
*次回、情報が多い今の時代、あえて店頭で服を買う理由とは。2本目「オンラインの時代に、お店で服を買うことのメリットとは」は、こちらから。
Profile
西井寛子さん
関西出身。新卒でアパレルブランドに入社し、店頭での販売を経験後、東京本社へ。現在は接客経験を通して培った視点をもとに、WEBマーケティング領域でブランドの販売促進に携わり、チームリーダーを務める。プライベートではInstagramやPodcastで、30代のリアルなファッションや日常、価値観について発信中。
Instagram:@hirokonishii
Podcast:TOKYO OTONA DIARY(Spotify / Youtube / Apple Podcast)
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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