セルフラブの土台は、日常の小さな視点から 前川裕奈さん×福田萌子さん|連載 #しゃべるっきずむ!
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第21回は、モデル・タレント・スポーツトラベラーとして活躍されている福田萌子さんをゲストにお迎えしました。初代バチェロレッテとして、自分自身や目の前の人に向き合う姿に心を奪われた人も多いはず。福田さんと前川さんがそれぞれ大切に発信されてきた「セルフラブ」についておしゃべりしていきます。
日常の小さなところから、視点を変えてみる
——「セルフラブ」を語る上で、福田さんが2025年春に立ち上げたウェルネスプロジェクト「retreat noie(リトリート ノイエ)」についてもお伺いしたいです。前回お話に挙がった、前川さんのブランド「kelluna.」との共通点もあるように思います。
福田:retreat noieは「誰もが本来の自分自身に還れる場所」という言葉を掲げて、イベントやリトリートツアーの開催をおこなっているプロジェクトです。裕奈さんが「kelluna.のウェアを畳んでいるときに、セルフラブを思い出すお客様がいる」とおっしゃっていたように、私もみなさんが「自分を大切にしよう」と思う瞬間を日常のなかに増やしていきたいと思って活動しています。
前川:Instagramの発信を拝見していると、「手を洗う」「歯を磨く」「靴を履く」といった日常の行動を振り返るような視点が多いですよね。
福田:そうなんです。セルフケアって必ずしもエステに行ったりヨガをしたりすることだけではなくて、日常の動作一つひとつのなかにあるんだよ、とお伝えしたくて。手を洗って自分を清潔に保つこともセルフケアですし、お水を飲むのだって自分の身体を潤すセルフケア。自分を大切にして1日1日を笑って過ごすことが、ウェルネスだよねと伝えたいんです。
前川:日常の小さなことへの視点を変えることは、誰にでもできますもんね。私自身は、そこまで日常生活の動作に気を遣って過ごしていなかったので、確かにそこに意味を持たせると心がもっと元気になるんじゃないかなと思いました。
福田:自分がしていることに「心地がいい」と、意味を持たせて日常を過ごしてほしいという思いがあります。この活動が結果的にどこにつながっていくのかはわからないですが……それでも始めなければどこにもつながらないわけですよね。今の時代を担っている1人として、小さくても発信してみる。そうすることで同じ思いの人が集まって社会が良くなって、次の世代も良くなって……行き着く先は世界平和というか、幸せに溢れる世界であってほしい、と思っています。

「自分に丁寧に生きる」とは
前川:お話を聞いていて、萌子さんはすごくマインドが丁寧だなと思いました。一つひとつの行動や物に対して、とても深く考えたり感じ入ろうとしているからこそ生まれたプロジェクトなんだと思います。私自身は暮らし全体で言うとそこまで丁寧ではないんですけど(笑)、自分に素直に生きるという意味では似ていると感じる部分もあります。
福田:“自分に丁寧”ですね。
前川:例えば、「自分が今日何をしたいか」「誰と過ごしたいか」という行動を決めるときは、自分の声に対して正直に従います。勢いや妥協ではなく、ちゃんと自分に向き合うという意味では丁寧かもしれません。

福田:そんな裕奈さんに、一つ質問してもいいですか?
前川:もちろん!なんでしょう?
福田:例えば、人と会う約束をしていた日に、ちょっと乗り気じゃなくなっちゃった……みたいなときってありませんか?そういうとき、裕奈さんだったらどうされるのかなと。
前川:そういう日ありますよね〜。その人が嫌とかではなく、単純に気持ち的な問題で。私は結構リスケをお願いしちゃいます。というのも、自分が乗り気じゃない理由があるわけですよね。「自分のメンタルの調子が悪いから、会ってもいい話ができなそう」とか。そういう自分の声を無視して会っても、相手にとってもいい時間にはならないと思うので、惜しみなく別の日にしてもらうと思います。単純に寒すぎて家から出るのが嫌みたいな理由ではリスケしないですけど、自分の心の状態的に会いたくない場合はお互いのためかなって。
福田:やっぱりそうですよね……!
前川:そういうとき、萌子さんはキャンセルできないタイプですか?
福田:私も裕奈さんと同じように考えてお断りすることが増えたんですけど、そう思えるようになったのは実は最近で。以前は「でも約束したし……」「せっかく時間を作ってくれたのに……」と、多少は無理してでも行くタイプでした。だけど、自分にも相手にも優しくできていないなと思ってからは、少し変え始めていて。だから、裕奈さんの回答を聞いてホッとしました。
前川:難しいですよね。スケジュール合わせるのが大変な相手だと余計に。時間って貴重だし、それをシェアしてもらうわけだから。ただ、別に相手のことが嫌いになったわけじゃないけど、「今日じゃないな」ってこと、やっぱりあると思います。そういう自分は大事にしてあげたいですよね。
傷ついたり悩んだりしてきたからこそ架け橋に
——以前の萌子さんと同じように気を遣って、多少は無理をしてでも行く、という人がとても多いのではないかと思います。
福田:でもね、相手には「無理するくらいならキャンセルしてほしい」と思っているんですよね。みなさん、そうなんじゃないかな。「何かあれば、全然ドタキャンでもいいからね」って、相手に対しては心から思っています。自分自身は妊娠中の座っているのもつらいときでも無理していたこともあるのに、そのときの自分にはなかなか同じ声をかけてあげられませんでした。
前川:私は結構「無理なときはすぐに言う」というキャラクターになっているので、自分も相手も言いやすいところがあるんだと思うんですよね。萌子さんのように優しい人だと、やっぱり相手をがっかりさせたくないから言いづらい、というのもあると思います。
福田:でも、やっぱり回り回って、それは相手にとってもいい空間ではない可能性が高いですよね。本質的な優しさとは何か、考えさせられます。
前川:特に日本人は空気を読んでしまうところがあるので、そういう人が多いかもしれないですね。
福田:前々回もお話しありましたけど、やっぱり日本の社会で生きてきた私たちは、根底に自己肯定感がない状態の人が多いのかもしれないと思います。私自身も経験を通して「自己肯定感ってきっとこういうもの」「セルフラブってこういうことなんじゃないか」と、少しずつ育んできた感覚があります。

前川:今回の対談ですごく安心したのが、セルフラブについて発信されてきた萌子さんご自身ですら、やっぱり迷いがあるんだとわかったこと。私もブランドを通してセルフラブをテーマに発信してても「できてないじゃん」と思う瞬間が時々あるんです。発信していると常にセルフラブを体現できているように思われがちなんですけど、全然そんなことなくて……。
福田:迷いながら、自問自答しながら、ですよね。
前川:セルフラブについて考えて発信している私たちですら、こんなにも迷いブレることがある。だとすれば、普段から仕事としてここまでセルフラブを考えることのない多くの人たちからしたら、もっと難しくて脆いものなんだろうな、と思いますね。
福田:裕奈さんは一度、幼少期にセルフラブの土台が一度壊れてしまったからこそ、そこからの回復の道のりを説明できますよね。私の場合は、その土台がないところから作り上げる経験をしたのが今に活きています。裕奈さんも私も“ない状態”を経験したから、「セルフラブってこういうことなのでは」と説明できるのではないかなって。生まれ持った人は体現することに長けているけど、当たり前すぎて言語化することに難しさもあると思うから。
前川:本当にそうかもしれませんね。ルッキズムで苦しむ方々の痛みに寄り添えるのも、私自身にそういう経験があったからだというのは、いつも感じます。
福田:苦しんでいる方々と、セルフラブを体現している方の中間地点というか、そこを言葉にして伝えることができるのかもしれません。裕奈さんのような方が、発信してくださるのが心強いです。
前川:ありがとうございます!でも、その言葉、そのまま萌子さんにもお返ししたいです!

Profile
福田萌子さん
沖縄県出身。モデル・スポーツトラベラー。12歳からファッションショーやCMに出演し、モデルとして活動。現在は執筆活動のほか、SNSではスポーツの素晴らしさや、セルフラブ・メンタルヘルスの大切さを世界中に発信。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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