「私はちゃんと太っていますか?」という問いが炙り出すもの|連載「ボディポジティブを見つめて」

「私はちゃんと太っていますか?」という問いが炙り出すもの|連載「ボディポジティブを見つめて」
Photo by Poko
Poko
Poko
2026-05-21

ぽっちゃり女性専門の写真家として活動するPokoさんは、「ボディポジティブ」という言葉が日本で広まる以前から、ふくよかな女性たちの姿を作品として発表してきました。連載「ボディポジティブを見つめて」では、体型や女性、そして社会との関係を、Pokoさん自身の経験をもとに紐解いています。今回は、ボディポジティブという営みを支える社会のあり方にも目を向けながら、Pokoさんがいま感じている危機感について語ります。

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先日、即興を交えた演劇を展開する劇団【インプロカンパニーPlatform】の公演を観に行って来ました。
開演前にお客さんから集めたアンケートを公演中に引いて、そのワードによって演劇の内容が即興で変容していく舞台です。

彼らの舞台に久し振りに行ったのは、劇団を主催する住吉美紅さんに誘われたからなのですが、それも、9年前、彼女が今回のコラムに出てくる写真集のモデルになってくれたことから続いている関係があるからです。

また、先日、やはり8年前に撮影して写真集を作ったRIOちゃんとも久し振りに撮影をしたのですが、二人の共通点はほぼ同じぐらいの時期に写真を撮ったというだけでなく、体型的にも似ているという点があります。

それは端的にいって「それまでの僕のモデル達に比べて体が大きくない」というものです。

ですがそれは、偶然ではありません。

今回は、その理由について書いてみようと思います。

Miku
9年前の住吉美紅さん(写真集『Am I Fat?』より)

「私はちゃんと太っていますか?」「私はぽっちゃりに含まれますか?」

僕は2012年から「ぽっちゃり女性専門写真家」を名乗って活動しています。

その活動の初期に僕が悩んだひとつの問いがありました。

それはモデルに応募してくれた女性からの
「私はちゃんと太っていますか?」
「私はぽっちゃりに含まれますか?」
という問いです。

要するに、僕に写真を撮ってもらうにはちゃんと太っていなければならず、自分はちゃんと太っているでしょうか、という意味の問いなのです。

こう書くととても奇妙に感じられると思うのですが、コンプレックスというのもまた奇妙なもので、彼女達は「自分は太っている」と感じている反面、僕の写真を観ていると「自分は撮って貰えるほど太っていない」となってしまうのです。

実際、応募して来てくれた女性達は僕から見るとそれほど大きくもなく、街中で普通に見掛ける、言ってみれば普通体型に含まれるであろう女性達だと感じました。

写真家を名乗り出した初期、僕は「写真に撮っても印象が薄いだろう」と思うと同時に、写真を観た人に「なんだ、たいしてぽっちゃりしてないじゃん」と思われるのを危惧して、それほど体型の大きくない女性の応募は、悩みつつも大概は断っていました。

そうした時に応募してくれた女性が大概言うのは
「私は社会の中ではデブと言われ、でもぽっちゃりとしても中途半端なんですね…」
ということでした。

要するに「ぽっちゃり女性」としてでも何処かに帰属したくて、あるいは女性としての魅力を自分でも肯定したい、承認されたいという思いで僕のところに応募して来てくれたわけなのに、僕にも断られてしまって、自分のアイデンティティーが更に迷子になってしまったわけです。

それは僕にとっても長らく悩ましい問題だったのですが、はっきりとした自分なりの答えを出したのが、2018年に作った『Am I Fat?』という写真集です。

そのキャプションを紹介します。

『ぽっちゃり』とは何なのか、という問い掛け

僕がMikuちゃんの写真集を作ろうと思ったのは、僕の中のモヤモヤに、そろそろひとつの答えを出さなければと思っていた頃だったからです。

僕の中のモヤモヤとは、彼女くらいの体型のモデル応募者を、体型が小さいからと、僕が撮影を長らく断って来たことです。

「自分の体型は普通ではない、太っているのだ」と思い詰め、せっかく勇気を持って応募して来てくれたのに、
「僕が写真に撮るにしてはちょっと体型が小さいので」
と断られると云うのは、それこそ彼女達の居場所を否定することですし、僕のしているような活動が彼女達の受け皿になれないことの矛盾も、つよく感じて来ました。

なので『Am I Fat?』という新しいシリーズを始めることにしました。

これは、
「自分では太っていると思っている女性が、他者からはどう見えるのか?太って見えるのか?それともそれほど太っては見えないのか?あるいは普通に見えるのか?」
という、本人や皆さんへの、客観的基準、主観的基準への問い掛けなのです。

Poko

写真集『Am I Fat?』より

昨今、フェミニズムやボディポジティブの世界でのスタンダードな思考として「他人の体型をジャッジするな」というものがありますが、言ってみれば、僕は「自分は太っている」と思っているモデル候補の女性の体を「太っていない」とジャッジすることを辞めたわけです。

なので、それ以降、僕に応募して来てくれた女性に関しては、体型を理由に断ることは辞めることにしました。

「ぽっちゃり女性専門写真なんて言いながらそんなに太ってないじゃん」
と思う人もいるかも知れませんが、そうした人は、是非、
「でもこの人は自分を太っていると思っているのだな、それはなぜだろう?」
「社会や親や周りの人が彼女をそうした自認に追い込んでいるのかもな」
「メディアやダイエット産業が多くの人にそうした自認を与えているのかもな」

そんな風に考えてみて貰えたらなと願っています。

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