しゃべるっきずむ!それぞれが自分の容姿に向き合うヒントを考える|前川裕奈さん×小渡結稀さん
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第20回は、容姿にコンプレックスを抱える人のための居場所「Color Code」を運営する小渡結稀さんをゲストにお迎えしました。醜形恐怖症を患い、高校時代に整形した小渡さん。整形が身近に、若年齢化している現代、私たちはどうやって自分の容姿と向き合っていけばいいのでしょうか。幼少期からの経験を振り返りながら、整形との付き合い方についておしゃべりしていきます。
整形や美容医療が身近になるのってどう思う?
前川:前回の整形の低年齢化とも関連して、整形がどんどん身近になっていることについても、小渡さんとお話ししたいなと思っています。私が学生の頃にも整形している子はいましたが、今より何倍も値段も高かったし、クリニックや情報も少なかった。今は金銭面でも、アクセシビリティ面でも、かなりハードルが下がっている印象があります。
小渡:整形が身近になること自体は、私は別に悪いことじゃないと思っています。容姿にコンプレックスのある方々の相談を受けていると言うと、「整形否定派なんですか?」と聞かれることも多いのですが、私自身は全然そこに拒否感はないんです。
前川:私も同じです。私自身も整形に反対というわけではないですが、ルッキズムについて発信していると「ルッキズムをなくしたいと言っているのに、整形に反対していないのは矛盾じゃないか?」と言われることが時折あって……。私は「社会からの圧力による整形」ではなく「自分のための整形」は全然いいと思っているんですが、なかなか伝わらない。
小渡:わかります。必ずしも美容外科が悪者というわけでもないんですが、みんな、わかりやすい分類を求めているんでしょうね。
前川:本当に一人ひとりの状況も価値観も違うので、「こっちが正解!」みたいなアンサーってやっぱり出せないんですよね。悩みの内容も理由も深さも、その解決策も本当にそれぞれだから。整形や美容の問題は白黒つけにくく、ふんわりと議論が終わることも多いので難しさを感じますね。

小渡:前川さんは、整形が身近な存在になっていくことについて、どういう考えですか?
前川:前々回のお話を聞いて、中学時代の小渡さんのようにつらい思いをしている人にとっては希望にもなるのかなとは思いました。なので、そういった解決ツールが身近にあるのはいいことだとは思います。でもやっぱり、そこまで容姿にコンプレックスを抱えてつらい思いをしているって、容姿だけの問題じゃないとも思うんですよ。小渡さんが整形後に「これは精神の問題だ」と気がついたように。解決ツールを複数用意しておくのと同時並行で、根本の問題も紐解いていくことは止めてはいけないな、とも思います。
小渡:当時の私は「もう整形しなきゃ死んじゃう。失敗したら死ねばいいし、もういいや」みたいな、投げやりな状態だったんですよね。本当に、病的な整形でした。整形が身近になるということは、そういう病的な子たちが手を出しやすくなるということでもあるので、そこは問題なのかも。
前川:そこまで深刻な状態になってしまうと、周りに何か言われたからといって考えを変えることもできないし、自分だけで解決するなんてもっと難しいですよね。
自分の中に、圧倒的な軸を持っていること
前川:整形が身近な存在になってきたことで、インフルエンサーなどには、すごく気軽な感じで整形を繰り返す人もいますよね。そのことについて、小渡さんはどう思います?
小渡:実際の事情は直接お話を聞かないとわかりませんが、「自分がかわいくなりたいから」とポジティブな整形をしている印象ですよね。私も、整形はかわいくなるための手段として、楽しいものであってほしいとは思っています。
前川:ああいうインフルエンサーを見ていると、必ずしも整形は悪いことじゃないのかもって思います。コメント欄は、まだまだ整形に対してネガティブな反応が多いですけど、そういう方の発信があるからこそ、本当に整形をしたいと思っている人にとっても言い出しやすいトピックにもなってきているように感じます。
小渡:世間からの声を気にせずに、自分のことを決められる人たちですよね。
前川:そもそもは周りの目を気にするがゆえに変わろうとしていた場合が多いと思うのですが、整形や内省を経て変わっていくのかもしれないですね。そう思うと、やっぱり自分の中で圧倒的な軸を持っていないと、結局は左右されちゃうってことですよね。整形に限らず、ダイエットやファッションなどもそうだと思いますが。
小渡:どんな選択をしても「他人の意見には意味がない」と本気で思えるか、みたいな。
前川:意味ないですからね、本当に。私もSNSでランニングのウェアでの写真をあげると「太ももムチムチだね」とか書かれたことが何度かあって。最初は驚いたけど、今は「当たり前だろ、太ももは太いから“太”ももなんだろ」って気にはならなくなりました。だから、最初からまったく気にならないって人は少ないんじゃないかと思いますね。
小渡:何かしらの経験を経て、 ゆっくりな感じで。
前川:でも、それもどうなんですかね……。言われる側が強くなっていく必要があるっていうのが。言葉を受け取る側のトレーニングももちろん大事だとは思いつつ、そんなトレーニングしなくてもいい世界だったらいいのに、とも思います。
小渡:私が開発している醜形恐怖症の方に向けたプログラムでも、やっぱり“ちょっと嫌なこと”を経験しなきゃいけなかったりはします。例えば、「外に出てみる」「人と目を合わせて話してみる」とか。本来は、マイナスからゼロにするのではなく、みんなが自己実現のためにがんばれる社会がベストだとは思うので、そこを目指したいですけどね。
「容姿に執着しなくてもいい」と思えるようになるコツ
小渡:人の言葉が気にならないトレーニングとはまた違うかもしれませんが、美容や容姿以外のところに自信の軸を持つというのも大事だと思います。年収や学歴など容姿に限らずですが、一つの軸に自信が依存している状態が、問題を引き起こすんじゃないかと。もっと視野が広くなると「これがダメでも大丈夫」という気持ちになりますよね。
前川:「しゃべるっきずむ!」のほかの回でも、そういう話が出たことがあります。仕事で評価されたり、人柄を好きでいてくれる人がいたり、ほかの分野で自信がついたから堂々とできるようになった、と。

小渡:私自身も美容ばかりを追いかけていたときに比べて、ビジネスにも興味を持ったあとは執着が落ち着いていったと感じています。精神論のように聞こえるかもしれませんが、現実的に効く手法だと思います。
前川:自分の武器やスキルが増えるほど、容姿に関する比重が軽くなっていく感じですね。たしかに、社会人になってからは仕事や家庭など容姿以外の話がたくさんありますけど、学生時代は向けられるベクトルが少なかったかも。そうなると、ルッキズムの影響を受けやすいのは、やっぱり若い子かもしれませんね。
小渡:あと、活動していくなかで「容姿で判断されなかった」「自分がブスだからって雑に扱われなかった」みたいな成功体験もすごく大きいと思います。「Color Code」でも、何かに挑戦したときに「実際は周りの反応が、容姿によって変わらなかった」という実感を持つプログラムを作っています。
前川:なるほど。自信をつけるまでいかなくても、「このままの私でもいいんだ」と思える環境に気づくということですよね。周りに容姿で評価する人がいなかった、逆に評価してくる業界にいた、などによって左右される面も多そうです。そう思うと、やっぱり容姿で人を判断するルッキズムは少ないほうがいいですよね。
人々の悩みへの寄り添い方
前川:最後に、醜形恐怖症やルッキズムで悩んでいる人たちを、小渡さんがどんなふうに支援していきたいと思っているのか、教えてもらえますか?
小渡:私自身が元当事者だという事実はもちろんありますが、支援する場面ではそれを押し付けたくないなと思っているんです。やっぱり育ち方も感情も人それぞれだし、私の視点だけではそれを全部わかってあげられないだろうなと。しっかりと客観的な視点を持ちつつ、相手の苦しみをちゃんと拾って、必要な支援をしたいです。

前川:私も個別で相談の連絡をもらうことが多いんですが、本当に背景も悩みも人それぞれ。正直言うと、最近はすべての相談に的確な答えを返すことが難しいと感じています。私は精神科医でもカウンセラーでもないので、自分の実体験や考えを話すことしかできない。個別でアドバイスして「前川さんがそう言ったから」と言われても、責任が取れない怖さもあります。
小渡:とはいえ、個別の相談ってむげにはできないですよね。
前川:そうなんです。私の場合は、自分の経験や考えは各発信に載せているので、それが届くといいなと思って活動しています。それを見てくれた人たちへのヒントになるような、幅のある発信に力を入れていきたいなと思ってます。
小渡:私も相談の受け答えをするだけでなく、美容業界や社会全体を巻き込んでいきたいなと思っているので、スタンスは似ているかもしれません。私たち一人ひとりのリテラシーが上がって、容姿で悩む人自体が減ったり、悩みに対する解決策を得られる状態がベストかなと思います。

Profile
小渡結稀さん
東京理科大学 経営学部 国際デザイン経営学科1年。中高6年間、身体醜形障害(醜形恐怖症)に悩まされる。当事者としての経験を原点に、「外見の悩みで人生が狭まらない社会」をつくりたいと考える。大学進学後は、VC・スタートアップ領域でのインターンや事業づくりに携わりながら、外見コンプレックス支援プロジェクト「Color Code」を立ち上げ。外見の悩みを抱える人の支援と、自己肯定感やセルフイメージを取り戻すための発信・コミュニティづくりに取り組む。「誰もが“可愛い”を安心して楽しめる世界」を目指し、活動を続けている。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。
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