しゃべるっきずむ!整形は何歳から?ハッピーエンドかどうかを決める、大切なこと|前川裕奈さん×小渡結稀さん
容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。
第20回は、容姿にコンプレックスを抱える人のための居場所「Color Code」を運営する小渡結稀さんをゲストにお迎えしました。醜形恐怖症を患い、高校時代に整形した小渡さん。整形が身近に、若年齢化している現代、私たちはどうやって自分の容姿と向き合っていけばいいのでしょうか。幼少期からの経験を振り返りながら、整形との付き合い方についておしゃべりしていきます。
渦中にいると、周りの声は届きづらい
前川:小渡さんは高校生での整形だったと思うのですが、周りの人の反応はどうでしたか?
小渡:整形すること自体、両親から反対はされませんでした。特に母は、私が毎晩泣きながら「もう早く死んだ方がいい」みたいなことを言っていたのを知っていたので。
前川:前回、「かわいい」と言って育てられたと言っていたので、反対されたのかと思っていました。容姿について苦しんでいるときって、きっと親からは「いや、あなたは十分かわいいよ」みたいな肯定の言葉もあったのではと思うんですが、コンプレックスを払拭するには至らなかったんですよね、きっと。
小渡:「家族だからそう見えてるんだよ」って思っていましたね。
前川:本当そうですよね。お母さんも、自分は心の底からかわいいと思っているけど、本人が変えたいなら応援するべきなのかと葛藤があったでしょうね。
小渡:そうだと思います。一緒に整形外科に行ったときに「私はいらないと思うんですけど……」という話は毎回していましたし、葛藤しているんだろうなとは思っていましたね。

前川:そういうとき、整形外科の先生はなんて答えるんですか?
小渡:本当に先生によってバラバラですね。当時はまだ17歳だったので「親の同意があるなら大丈夫」と言う人もいたし、「僕は今やりたくないから、大学に行ったあとにまだやりたかったら戻っておいで」と言う先生もいました。
前川:それは、17歳だとまだ若すぎるから?
小渡:その先生に言われたのは、「自分では大人だと思っているかもしれないけど、世界にはいろんな価値観を持っている人がいるから、そういう人たちと話してからまた来たらいい」と。
前川:なるほど。いい先生ですね。
小渡:今考えたらそうなんですけど、当時の私には全然響かなくて……。結局、別の先生のところに行って目と鼻を整形しました。
顔が変わっても、コンプレックスがなくならなかったから
前川:今振り返って、17歳のときに整形をしてよかったなと思いますか?
小渡:私は、すごくよかったと思っています。でも、それは「顔が変わってよかった」というより、「顔が変わったからこそ、自分が醜形恐怖症だと気づけたから」なんです。
前川:というと?
小渡:整形したあと一時的には、「理想の顔になれたかも」という希望があったんですけど、だんだんと顔全体のバランスなど別の部分が気になるようになってきて。「結局、全然コンプレックスがなくなっていないな」と気づいたんですね。そこで、外見を変えれば解決する問題じゃないとわかったのは、整形したからこその気づきだったと思っています。
前川:整形したあとに別のところが気になってくるのは、あるあるだと思うんですが、そこから「じゃあ次はここを整形しよう」とならなかったのが、不思議だなと思いながら聞いてました。100%の理想像にならなかった場合、整形を繰り返す人も多いと思うんですよ。
小渡:整形後のダウンタイム(回復期間)がすごく暇だったんです。外出もできないし、笑っちゃダメだから好きなお笑い番組も見られないし……それで、何もすることがなくてひたすら“考え事”をしているうちに、内省が深まっていったんだと思います。

前川:どんなことを考えていたんですか?
小渡:自分みたいに容姿へのコンプレックスが原因で、健康な体にメスを入れる人は、周りを見てもほとんどいないじゃんって、改めて思いました。そこから、私が容姿に執着していたのは、単純に「きれいになりたい」という気持ちではなくて、評価されない不安を止めるためだったのかも、とか。もともと醜形恐怖症は知っていたんですけど、そうやって自分のことが客観的に見られるようになって初めて「あ、これは精神の問題なのか」と理解できました。
前川:レアなパターンですよね、きっと。
小渡:先日、知り合いからも「もともと客観的な視点が備わっていたのが、整形をきっかけに引き出されたんじゃないか」と言われましたね。
「自分のため」かどうかがエンディングを決める
前川:私自身、10代の頃から過激なダイエットを10年以上繰り返した先で「これは社会に踊らされているだけなんだ」とようやく気づけたのは、28歳くらいのとき。体型のことを気にし始めた小学生の頃から考えたら、20年近くかかってるんです。この時間を長いと捉えるか、はたまた小渡さんが気づくまでの時間を短いとするかは人それぞれではあるし、苦しみの長さは測れるものではないと思っています。それでも、小渡さんが整形をした少し後に自力で気づけたのは、やっぱりすごいなと思います。そういう客観的な視点を持つのが難しい世の中で、10代などの若者が整形することについては、どう思いますか?
小渡:私は整形自体を悪いものだとは思っていませんし、ポジティブな整形で幸福度が上がる人もいると考えてます。ただ、リスクもあるのは事実です。整形外科はマーケティングがすごくうまいし、お金もかけられるのでどんどん宣伝できちゃいます。例えば「奥目・出目」(顔の眼球の位置の違い)といった見た目の分類を作り出して「こっちが正解」と優劣をつければ、それに当てはまる人は必ずいるわけです。それを信じて整形するリスクは、やっぱり10代は多いのかなと。
前川:そうですよね。私も整形反対派ではないですし、周りにも整形して生きやすくなった人たちがいます。ただ、その人たちの話を聞いていると、ずっとコンプレックスと付き合ってきて、ついに30代で変えたという人が多いんです。だから、本当に自分の心身に向き合って、自分の生きやすさのために整形しているなら、いいんじゃないかって思えるんだと思います。この先、もし私も整形することがあるとしたら、誰かに認めてもらうためではなく、長年のコンプレックスと向き合った結果の手段として、自分のためにするんだろうな、と思いますし。自分の意志か否かが、整形をハッピーエンドにするかどうかをわける気がします。
小渡:「やらなきゃ」という強迫観念で整形するのは違いますよね。今の整形に関する広告は「整形しなきゃ」と病的に思わせるようなものがすごく多いのが問題です。そうやって追い詰められていると冷静な判断もできないし、本人の意志とは言えないと私は思うんです。そこを社会を見落としやすいと思っています。
前川:そうなんですよね。
整形するかを決めるのは年齢じゃない、だとしたら
小渡:世の中にある整形についての情報は、やっぱり手軽さや安さなどのメリットばかりになっている印象もあります。加工や広告などが入り乱れて情報が偏っていることも多い上に、デメリットの説明も圧倒的に足りていない。それなのに、失敗やトラブルが起きたときに「自己責任」にされやすいのも、問題だと思います。
前川:そうですよね。そんな危うい状態を、若い子たちがサバイブしていくのって本当に大変だと思います。そう考えると、心身ともに成長過程にある10代の整形ってやはり大人よりもリスクはありますよね。とはいえ、「若い」の定義や成長過程がいつまで続くのかははっきりしたものではないので「何歳からだったらOK」と数字では明確化しづらいし、今つらい思いをしている子が待たなきゃいけないのも酷だし。
小渡:そうですよね。
前川:それに必ずしも“年齢”でもないんですよね。だって、小渡さんのように10代から客観的な視点を持っている人もいれば、30代になっても情報に踊らされてしまう人もいる。今日お話ししてて、改めて年齢だけで判断できることではないなと思いました。
小渡:でも、今もし当時の自分と話せるとしたら「今じゃない」と伝えるかなとは思います。「まずは一度、醜形恐怖症の専門家と話してから考えなさい」って。
前川:結果的に整形という手段を取ることになったとしても、そっちが先だよってことですよね。

小渡:私は「若いからダメ」というより、若い人ほど生活圏が狭いことが問題だと思っています。知り合いの数も種類も少ないし、周りの価値観や評価基準にも圧倒的に多様性がない。SNS上でもアルゴリズムによって同じような発言ばかりを目にすることになりますし。そういった判断材料が偏りやすいなかで、自分にとって整形が必要なのかを決めるのは難しいことだと思います。
前川:小渡さんも言っていたとおり、親や病院の先生など自分と違う価値観の声は届きにくいですしね……。ルッキズムを発信している私のような第三者や、小渡さんのような経験者が伝えていくことが大事なのかなと思います。
小渡:若い人ほど「同年代の基準」が絶対に見えやすいですからね。だからこそ、大人側が「整形するな」という否定だけじゃなく、他の価値軸を増やせる場を用意するのが健全なんだろうと考えています。
*次回、その整形は“誰のため”? 3本目「それぞれが自分の容姿に向き合うヒントを考える」は、こちらから。

Profile
小渡結稀さん
東京理科大学 経営学部 国際デザイン経営学科1年。中高6年間、身体醜形障害(醜形恐怖症)に悩まされる。当事者としての経験を原点に、「外見の悩みで人生が狭まらない社会」をつくりたいと考える。大学進学後は、VC・スタートアップ領域でのインターンや事業づくりに携わりながら、外見コンプレックス支援プロジェクト「Color Code」を立ち上げ。外見の悩みを抱える人の支援と、自己肯定感やセルフイメージを取り戻すための発信・コミュニティづくりに取り組む。「誰もが“可愛い”を安心して楽しめる世界」を目指し、活動を続けている。
前川裕奈さん
慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。- SHARE:
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