オンラインの時代に、お店で服を買うことのメリットとは 前川裕奈さん×西井寛子さん

オンラインの時代に、お店で服を買うことのメリットとは 前川裕奈さん×西井寛子さん

容姿で人を判断したり、揶揄したりする「ルッキズム(外見至上主義)」。言葉の認知が進む一方で、まだまだ理解されていないルッキズムについて、おしゃべりしてみよう!自身もルッキズムに苦しめられた経験を持ち、Yoga Journal Onlineで「ルッキズムひとり語り+α」を執筆する前川裕奈さんとゲストが語り合う連載が「しゃべるっきずむ!」です。

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第22回のゲストは、アパレルブランドの本社で働く西井寛子さん。店頭での販売員経験をもとに、お客さまのオシャレや体型の悩みに向き合ってきた西井さんが考える、私たちらしいファッションの選び方は、どのようなものなのでしょうか。フィットネスウェアブランドを経営する前川さんとともに、接客でのポイントも含めておしゃべりしました。

カラーや骨格の診断にとらわれた概念を崩す

——以前に比べて「パーソナルカラー診断」や「骨格診断」と言ったカテゴリー分けを目にする機会が増えたように思います。アパレル業界にいて、傾向を感じることはありますか?

西井:本当にたまに、パーソナルカラー診断の表のようなものを持参して、それと合わせながら服選びをする方もいらっしゃいます。ただ、色って本当にたくさんあるので……同じブルーのなかにも、くすんだブルー、ネイビー寄りのブルーなど何通りもあって、素材によっても見え方が違います。あまり「この色じゃなきゃ似合わない」ととらわれすぎなくてもいいのかなとは思いますね。

前川:オンラインなどで自分で服を選ぶことが増えたからこそ、そういった診断が助けになる場面も多くなってきたんでしょうね。店頭に来ていない方だと、診断を気にしている人はもっとたくさんいるのかも。

西井:パーソナルカラー診断や骨格診断が広まったことで、不安が解消される良さもありますね。けど、逆に「これじゃないと似合わないんだ」と、とらわれている方には、その思い込みを少しずつほぐしていけたらいいなと思います。

前川:例えば、どんなふうに言うんですか?

西井:例えば、私自身もパーソナルカラー診断では「ブルーベース・ウィンター」という、ベージュがあんまり得意ではないタイプ。それを知った上で、今日ははっきりとした白や黒を合わせることでベージュがぼやけた印象にならないようにコントラストをつけています。そういったテクニック的なことをお伝えしたいな、と。

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前川:説得力ありますね。

西井:「水泳をずっとやっていたから肩幅が気になる」という方には、襟のついたジャケットなら肩のハリが目立ちにくいとお伝えできます。場合によっては髪型でも印象が変わるので、トータルのバランスでお話しすることもありますし。私も含めて、販売員にももちろんコンプレックスがありますから、いろんな方法をお伝えできるんだと思いますね。

接客してもらって買うメリット

西井:今、洋服はオンラインで買う人も多いと思うんですけど、実際に店舗に行くと、販売員に相談しながら一緒に服を選べるのが良いところだと思うんですよね。

前川:たしかに。kelluna.も基本的にはECサイトでの販売ですが、ポップアップをするのはそれが理由。特にコロナ禍で「実店舗を持たずに小さく動く」アパレルのやり方が広まりましたけど、やっぱり実際にお客さんが足を運んでいるからこそ店舗というもの自体はなくならないんだと思います。

西井:そうですよね。

前川:私はポップアップでは必ず試着してもらうんですけど、同じくらいの身長や似たような骨格であっても合うものが違います。特にウェアは動いたときのフィット感がとても重要なので、オンラインだけで簡単に「Sサイズですよ」と言い切れない難しさもあります。

西井:本当に様々なんですよね。ファッションは立体的なものなので、同じようなパンツでもブランドや素材によってシルエットが違ったりもします。販売員は日々たくさんのお客様と向き合っていて、様々なお悩みや体型に触れてきたプロ。同じアイテムでも、違う人が着るたびに印象が変わることを目の当たりにしているので、自然と経験やデータが積み重なっているんですよね。ぜひ頼っていただけたら嬉しいなと思います。

前川:実は西井さんには、先日TEDx Talkに登壇した際の衣装を選んでもらったんですよね。あの独特な舞台やライティングの暗さに合わせて、オールホワイトでまとめてもらいました。自分ひとりだったら、あれは選べなかったかも。特に印象的だったのがアクセサリーで、西井さんが「ゴールド似合いますよ」と言ってくれたんですよね。

西井:そうでしたね!普段はシルバーだったんでしたっけ。

前川:そう、昔から色黒だからシルバーのほうがコントラストで見えやすいと思ってゴールドを避けていたんです。でも、あのときに勧めてもらって「あ、ゴールドいけるじゃん」って思って、そこからアクセサリーの幅が広がりました。

西井:それは嬉しい!組み合わせ方を知らないから考えが固定されてしまうことも多いと思うので、ひとつ知識が増えるだけで選択肢が増えるんじゃないかなと思います。私は、人が「どんな選択をするのか」を見ているのが本当に好きなんです。そこに人間性が出る気がして。だから、お客様の選ぶものを大切にしたいし、寄り添いたいなと思います。

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洋服選びは「安心するもの」でいい

——最近はルッキズムという言葉の登場も相まって「体型を気にせずに好きなものを着よう」という風潮が強まっている気がします。そんな中でもコンプレックスを抱えて訪れるお客さんに、どのように寄り添っていますか?

西井:前提として、私はやっぱりファッションはどんな人でも楽しむものだと思っています。だから、流行や周りの言葉にとらわれずに「自分の着たいもの・気分が上がるものを着る」というのには大賛成です。ただ、その「気分が上がる」のは必ずしも個性的で尖ったものにする必要はなくて。自分がちゃんと「安心できる」なら、保守的なファッションをすることもいいんじゃないかなと。

前川:安心できるファッションって良いですね。

西井:そもそも洋服って身を守るためのものですし、自分らしさは必ずしも全員がファッションで出さなきゃいけないわけでもないと思うんですよね。「ファッションでは自己表現をしない」選択も、ひとつの表現のかたちだと思いますし、そういう様々な自己表現が許されるのが本来のファッションなんじゃないかって。

前川:この連載でルッキズムの話をしているときも、いつも「自分軸」の話になります。ファッションにおいても、自分が何を大切にしたいと思っているのかを見極めていく、ということですよね。

西井:そうですね。極端なことを言えば、「周りから浮かないように」「誰かにこう見られたい」という理由で洋服を選ぶこと自体も、自分が安心するファッションなのであれば私はそれもひとつの選び方として、いいと思っています。

前川:なるほど。ルッキズムやファッションと「安心感」というキーワードはつながったことがなかったので新鮮です。

西井:ブランド物で固めたり、無難なものを選ぶのも、結局は自分の安心感につながる方もいるのかなと思っていて。ファッションに限らずですが、やっぱりわからないものはみんな不安だと思います。私たちファッション業界の人は、洋服の特徴や着こなしなどを一つずつ提案していけると、安心感を持ちながら、新しい挑戦もできるようになるんじゃないかと思っています。

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それでも新しい扉を開けたい人たちに向けて

前川:西井さんも言っていたとおり、どんな洋服を選んでいるかが自分の表現となって人に伝わるから、やっぱり慎重にはなりますよね。「こうあらねばならない」みたいなルッキズムにとらわれている人に対しては、そこを紐解いてあげたいと思ったりしますか?

西井:私の場合は、ルッキズムにとらわれている方だけでなく、どんなお客様とも一緒に新しい選択肢を見つけていけたらいいなと思っています。せっかくお店に来ていただいたので、私が接客するときはできるだけたくさん試着していただいて……。私自身もたくさんの服を試着する中で気づいたことがあるので、、お客様にも気軽に試してほしいんです。

前川:着てみないとわからないこと、本当にありますもんね。

西井:店頭に立つ機会もある中で感じるのは、これまでの接客経験から「こういう体型の方には、この服が似合いそう」といった感覚が自然と身についているということです。例えば「普段はデニムは履かないけど挑戦してみたい」というお客様に、デニム風の別の綺麗め素材のものを持って行ったりすると意外と「これなら履けるね」と言っていただけることもあります。

前川:たしかに。私はkelluna.が私服ではなくフィットネス用途だということを武器にして、迷っている方には私服だったら着ないような色や柄を提案するんです。いつもとは少し違う、新しい世界に進む付き添えるのは、販売員の楽しさでもありますよね。

西井:私はあの「あ、意外と私こういう服も着られるんだ」と扉が開いたような瞬間のお客様の顔を見るのがすごく好きです。その場でご購入に至らなかったとしても、後にお客様がファッションを楽しむきっかけになったら、幸せだなと思います。

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*次回、自分はよくても勝手にジャッジしてくる社会で、どう服装を選ぶ? 3本目「「おばさんはノースリーブ着るな」がまだ出回る世の中で、自分らしさを表現するために」は、こちらから。

Profile

西井寛子さん

関西出身。新卒でアパレルブランドに入社し、店頭での販売を経験後、東京本社へ。現在は接客経験を通して培った視点をもとに、WEBマーケティング領域でブランドの販売促進に携わり、チームリーダーを務める。プライベートではInstagramやPodcastで、30代のリアルなファッションや日常、価値観について発信中。

Instagram:@hirokonishii

Podcast:TOKYO OTONA DIARY(Spotify / Youtube / Apple Podcast

前川裕奈さん

慶應義塾大学法学部卒。民間企業に勤務後、早稲田大学大学院にて国際関係学の修士号を取得。独立行政法人JICAでの仕事を通してスリランカに出会う。後に外務省の専門調査員としてスリランカに駐在。2019年8月にセルフラブをテーマとした、フィットネスウェアブランド「kelluna.」を起業し代表に就任。ブランドを通して、日本のルッキズム問題を発信。現在は、日本とスリランカを行き来しながらkelluna.を運営するほか、「ジェンダー」「ルッキズム」などについて企業や学校などで講演を行う。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。yoga jouranal onlineコラム「ルッキズムひとり語り」。

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