京都で出合い直したクラシカルホメオパシーの世界 7)世界のホメオパシー事情【インド編】


女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
「世界のホメオパシー事情」の3つめはインド編。インド在住で、インドの国家資格であるホメオパス医、ゴーシュ真衣さんにオンラインでお話を伺いました。そもそも、なぜインドでホメオパシーを学ばれることになったのでしょうか。
「わたし自身は仙台出身で、子どもの頃から医師を希望していたんですけど、大学受験で挫折して、一度は沖縄の琉球大学で生物を専攻しました。でも、東日本大震災を機に、人生やりたいことをやろうと思い直し、医学部の再受験を目指しているときに、インド政府がホメオパシーの奨学金を出しているのを知って。もともと父が環境アセスメントの仕事をしているナチュラル派で、お薬とか使わずに育ってきたのもあって、ホメオパシーに興味をもったんです。ホメオパシーの著名な先生が琉球大学にいらしたこともあるし、導かれるようにインドに渡って、勉強を始めたのが2012年になります。
インドでは伝統医学に関するアユッシュ(AYUSH)省というものがあって、Aがアーユルヴェーダ、Yがヨガとナチュロパシー、Uはユナニというイスラム医学、 Sはシッダという古典的なアーユルヴェーダ、Hがホメオパシー。それぞれに伝統医学のコースがあり、卒業すると正式にドクターになれるんです。現代医学も、伝統医学も5.5年で、伝統医学でも、解剖学とか現代医学的な科目も学びます。最後1年は、インターンシップで患者さんも診ます」
インドに渡って、13年という真衣さん。大学は2018年に卒業し、インターンシップで出会った産婦人科医の夫との間に、1歳と4歳のお子さんもいらっしゃいます。
「インドでホメオパシー医としてやっていくには協会への登録が必要ですが、結婚から3年後にOCIという資格を取得し、外国籍の医師としては、おそらく初めて登録できました。ただインド人に対しても、もちろん日本人にも、学生時代から臨床経験はあるのですが、現在はペースを落として、子育てをメインにしています。日本人の方向けにはオンラインで、セルフケア講座をしていますが」

インドも日本も見ている真衣さんにとって、インドのホメオパシーの特徴は何でしょうか。
「大きく分けて、ふたつあります。まず、わたしがいるコルカタが州都の西ベンガルは、インドで一番ホメオパシーが盛んです。イギリスの植民地のメインのエリアでもあり、もともとベンガル人は理屈っぽい、プライドが高い人たちなんですね。イギリスの植民地時代に、イギリスがもってきた現代医学に対するアンチテーゼとして、ドイツ生まれのホメオパシーを好んだとも言われます。
コルカタ式では、お腹が痛くなったら、現代医学に行くか、ホメオパシーに行くか、選ぶことができます。メディカルリテラシーが高く、自分の身は自分で守るものという前提で生きているのがベンガル人。こういう急性病に対してはホメオパシーが強い。一日仕事で症状を抑えたいから、現代医学のお薬を飲んじゃおうと言うように、使い分けている印象です」
もうひとつは、ホメオパシーの世界では有名な、ムンバイ出身のサンカラン医師のやり方です。
「彼はムンバイ出身で、インドのホメオパシー界のスティーブ・ジョブズみたいな存在。サンカランメソッドは学んでいないので、詳しくはわからないんですけど、コルカタ式より、スピリチュアルなイメージです。インドの場合は、地域によって、暮らしも全然違うんですね。コルカタはコミュニストの政権が長い間政権をとっていたし、物質的な発展をそれほど望んでいない。でも、ムンバイは、インドの一番の富裕層とスラムが混在しているような商業都市で、そこに潜在している精神的な問題をサンカランが見出して、解決していったような印象を受けています」
反骨精神があり、伝統医学が盛んなコルカタと、光と闇のギャップが色濃い、より現代的なムンバイ。文化によるホメオパシーの違いを的確にお話しいただき、腑に落ちるものがありました。ただ真衣さんから見ると、インドのホメオパシーをそのまま日本人に当てはめるのは難しいと感じるそう。
「インドの一般の人たちは日本と真逆で、もともと野生的と言いますか、会話も感情表現も多いし、第1、第2チャクラのエネルギーも、自己肯定感も高いんです。だから、ホメオパシーのセッションも、コルカタの場合は、カウンセリング要素がほとんどない。問診はしますが、わかりやすい身体症状が出てくるので、あえてセッションの場で自分のことを話してもらう必要性もないから、急性症状なら10分、20分で終わります。もちろん、癌など例外もあります。わたしの師匠は、癌のスペシャリストと見なされているので、癌の患者さんも多いんですね。感情を抑え、葛藤を抱えながら生きることが癌を引き起こす主要な要因と考えて、葛藤を見ていくので、もう少し長くなりますが、それでも1時間かかることはないんです」
癌はホメオパシーでは治らないとも聞いたことがありますが、インドではどうも違うようです。
「日本でインドと同じことをやって、結果が出るかと言うと、そうではないと思います。もともとの投薬量や添加物の量、置かれている環境も違うだろうし、バイタルフォース(生命力)の高さもまったく違いますから。
インドにいると、日本人がどれだけ自分自身を抑圧して暮らしているか、文化の違いを感じます。インドの人たちは自分で治そうという主体性があるんですね。専門家に力を借りても、治療に対して主体性をもつことが治癒の第一歩。してもらうものだと思っていると治らないですから」

とは言え、日本でもホメオパシーが当たり前の選択肢のひとつとなるように何かしていきたいと模索しているという真衣さん。キャリアや住む場所には自分らしさを求める日本女性が医療となると専門家にまかせがちなのが何とも歯痒いとか。「自分の主体性をもつには選択肢の多さが必要だと思うので、まずは感染症や怪我など急性症状におけるセルフケア講座などを通じ、ホメオパシーという選択肢をお伝えしていきたいですね」と明るく話してくれました。日本とインドの違いなど、とても知的で、大学の先生のようなオーラのある真衣さん。子育てが落ち着いたら、きっと日本にいるわたしたちに対し、さまざまなレクチャーをしてくれることでしょう。
ゴーシュ真衣さんインスタグラム @_maighosh_
→【記事の続き】京都で出合い直したクラシカルホメオパシーの世界 8)日本ではどんなふうに関わるのがいいんだろう、はこちらから。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
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