京都でアトリエを借りるということ3)直観でやってみて、自分の輪郭がはっきりした気が・友成響子さん


女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
アトリエについて、わたしが言いたかったことはすべて、「ルームマーケット」の平野代表が(2)で語ってくださった気はするのですが、生活空間とは別にアトリエを借りて、自分の好みに整えることは、確かに自己表現につながりました。またおいでになる方が本当に喜んでくださるし、東京のみならず、西日本各地から、訪れてくださる読者の方が徐々に増えてきたのです。以前と違い、星占いは読んだことはないけれど、キネシオロジーやホメオパシーについて検索していて、サイトを見つけたという方も。渋谷で自宅サロンをしていたときのように、週末に5人も6人も見るということはありませんが、月に数人でも新しい方との出会いがある。その方にとって必然性があり、癒しが起こるとなると、「やっていてよかった」と心から思える瞬間が増えていきました。
また、これは借りる前に、「洋館の1室を借りたら、京都の個人事業主の方ともいい出会いがあるといいな」とちらりと思っていたのですが、それも直観のとおりになりました。1年目の秋、たまたまトイレの前で会って、「◯号室に入った友成響子です」と話しかけてくださったのですね。聞けば、彼女も編集やライティングをしているとのこと。そのままトイレの前で盛り上がり、部屋に招き入れることになりました。それから現在に至るまでの1年数ヶ月、彼女とはお友達付き合いをさせていただいていて、そこから広がったのがこの連載のパートナー、写真家の野口さとこさんでもあるのです。今回、響子さんにもアトリエを借りた理由を伺ってみることにしました。

「探してはいなかったんですけど、母友のひとりが借りていた部屋を出ることになったからと声をかけてくれたんです。洋館が見たいと気軽な気持ちで来たら、〝借りたい、借りる〟ってその場で決めてしまいました。彼女が使っていた家具やカーテンなどもそのまま使えるということだったので、本当に、気軽に」
「ルームマーケット」の平野代表の言う「難しく考えないで、やってみる」を実践された様子です。
「うちは夫とふたりで編集プロダクションを経営しているので、最初はふたりで借りようと思ったんですが、夫は〝静か過ぎる環境だと逆に集中できない〟というタイプ。当初は考えてもみなかった、“ひとりで借りる” 道を選択することにしました。朝昼晩、仕事しながらごはんも作って、ずっと家族と一緒にいて、というような毎日からアトリエに出勤するスタイルに変わったら、自分の輪郭がはっきりした気がしています。
職住一致の場所は作りたかったんですけど、彼と自分、家族と自分、家と自分。そんな境界線がどんどん曖昧になっていって、やや疲れていたところでもあり……自分がどこまで自分なのかわからなくなっていたのがすごく変わって、集中力、行動力が高まったし、仕事運も上がりましたよ。いつかやろうと思っていたインド刺しゅうや金継ぎも習い始めたんです。子どもがふたりいて、仕事もフルタイムのわたしにとっては、どれもそれなりに大きなアクションでした」
洋館にはメンバーが集まる場はないのですが、水場が同じなので、だんだんと、「何号室にこんな方がいるらしい」という情報はわかってきます。そのなかでも、出席頻度が高い響子さん。窓辺には、〝高熱で倒れたときもよたよたしながら、水やりに来た〟というグリーンたちが楽しげに揺れています。
「ここに来てから、実は、グリーンの本も作りまして」

大きなテーブルには何冊分もの校正紙が積まれ、書籍編集の仕事は以前より順調とか。女性が仕事を続けるなかで、どうしても、家族へとエネルギーが流れていってしまい、自分のやるべきことに集中しづらいという事態は起こるものですが、アトリエのもつ力をとてもうまく使われている好例です。
「毬藻舎」 http://marimosha.com/
→【記事の続き】京都でアトリエを借りるということ4)場を整える力のおかげで人の集まる場になった・ダイモンナオさん、はこちらから。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
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