スモールファーマーズカレッジで農的暮らしを学ぶ(1) サボテンを枯らしていたわたしが週末農学校に

 スモールファーマーズカレッジで農的暮らしを学ぶ(1) サボテンを枯らしていたわたしが週末農学校に
Saya
Saya
2024-05-23

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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畑の全景

基盤を大切に、保守的な人生を送る方からは眉をひそめられるかもしれない、どこか行きあたりばったりな、わたしの京都移住の顛末を前回はお話ししました。

そもそも、東京を出たきっかけは、2011年の東日本大震災。昼も夜もなく明るくにぎやかで、毎日がパーティのような当時の東京の暮らしから、少しだけ距離を置きたくなったためです。自由でしがらみのない都会の暮らしも、若いときは楽しい。でも、30代も終わりにさしかかり、蝶ちょのように飛び続けるのにも憂いた頃、原発事故を目の当たりに。24時間、休む間もなく運転し続ける原発の電気がないと、本当に暮らせないのだろうか、もっと自然に回帰したい。あの頃、多くの人が感じたような思いがわたしの胸にも宿りました。食の安全にも関心をもち始め、自分の手で食べものを作れるようになりたいという初めての気持ちも芽生えていました。

母方のルーツはお堅い武家ですが、父方の祖母は農家の出身。江戸時代からの地主で、曽祖父は農協の組合長。囲炉裏でカゴを編んでいたなどと聞いています。そんな環境で育った祖母も自宅前の畑で野菜を育てていて、夏に遊びに行くと、育てたトウモロコシを振るまってくれました。そんなおぼろげな記憶はあったものの、東京の郊外で生まれ育ったわたし自身は、土に触ったこともほとんどありません。沖縄でパーマカルチャー(永続可能な農業を軸とした暮らし方や考え方)の勉強会に参加したりはしてみたのですが、当時は、今ほど都市部で畑をする人が一般的ではなかったので、畑のある暮らしをどう始めていいものやら、わからないままに時が過ぎていました。

そんななかで出会ったのが「有機農法を学べる週末農学校」をうたう「スモールファーマーズ カレッジ」なるウェブサイト。見ると、京都の宇治に圃場があると言います。月に2回の畑での実習と座学。生徒にはそれぞれに専用の区画が与えられるので、無理なく野菜づくりを学ぶことができる。ひとり分の授業料で、家族で参加できる……。「わ、通ってみたい」と思いました。おそらく、2013年か2014年だと思いますが、そのときは那覇に住んでいたので、さすがに月2回、京都に通うのは不可能です。とは言え、どうしても気になるので、頻繁に情報はチェックしていました。

その後、縁あって京都に移り住むことになったので、もちろん、「スモールファーマーズ」にもアプライ。京都移住の4ヶ月後に夫婦揃って、入学することになりました。2016年の8月のことです。

東京のひとり暮らしのマンションではプランター栽培もベランダガーデニングも経験はなく、サボテンすら枯らした過去があるわたし。今思うと、そんなレベルでよく入学したなあと思うのですが、土の耕し方、肥料の配合、種の蒔き方、育苗の仕方、苗の植え方など初歩の初歩から、懇切ていねいに教えてくださるので、こんなわたしでもなんとかなって、初めて蒔いた小松菜の種が芽を出したときには本当に感動したものでした。

何より、出産や子育てを経験していないわたしにとって、生きものを育てる楽しさは、40代半ばにして、ほぼ初めて。小さな、小さな種に命のもとが入っていて、ふかふかの土というベッドで何百倍にも大きくなる。当たり前のようでいて、魔法のようにも思えたものでした。

それまでのわたしは、星を読んで宇宙とつながるという風変わりな仕事のうえ、沖縄や京都という見知らぬ土地に移住し、異邦人として暮らしていましたから、どこかふわふわと、グラウンディングできていなかったかもしれません。それが畑のおかげで、しっかりと大地にもつながることができた。しなやかでありながら揺らがない、自分の軸が生まれていった気がしています。

たまねぎのアップ

→【記事の続き】スモールファーマーズカレッジで農的暮らしを学ぶ(2) 代表の岩崎吉隆さんに話を聞いた、はこちらから。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。

ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。

ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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