京都では身体性が解放される。リズムに合う街に住む大切さ【連載|京都で見つけた幸せの秘密】

 京都では身体性が解放される。リズムに合う街に住む大切さ【連載|京都で見つけた幸せの秘密】
Saya
Saya
2024-10-17

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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東京郊外で生まれ育ち、御茶ノ水や青山、銀座などの出版社で編集者として働いていた20代。中央線でひとり暮らしをして、30代の初めにフリーランスになってからは、事務所を兼ねて、中目黒や渋谷のマンションを借りていました。編集や取材ライターの仕事が好きでしたし、「Saya」として自分で占って書くようになってからは、「ホロスコープを見てほしい」という読者の方の声に応えようと自宅サロンをしていた時期もありました。

母方の曾祖母はふたりとも幕臣の娘だったと言いますし、東京との縁は、実は長い。いまだ家族も友人もいて、仕事先もある。東京は今でも自分のホームグラウンドだと思いますし、東京の暮らしが決してイヤだったわけではないのですが、つい先だっても東京と神奈川に10日ほど滞在したら、ぐったりと疲れてしまった自分がいました。京都に戻ってくると、すごくホッとして身体がひらかれ、安心する感じがある。滞在している間はホテル暮らしだったから。京都には賀茂川も自然もあるから。東京に比べると、京都は中心部以外、人が少ないから。高さの規制があって、空も広いから。さまざまな理由が考えられるものの、もしかしたら一番は、「東京の速いスピードについていけないから」なのかな、と最近は思っています。

野口さとこ

と言うのは、首都圏で「1時間半かかる」と言ったら、本当に「1時間半」なのです。電車の本数が多いので、乗り換えで手間取らない。地下鉄もダンジョンかのように何層にもなっている。その「便利さによるスピーディさ」がゆとりのなさにつながっているのかもしれないと。たとえば、京都では電車の本数が少ないために、少し遠出すると、「1時間」で行けるはずのところが「1時間半」とか「2時間」になることが結構ある。京都市内でも、市営地下鉄は2本しかなく、乗降客もそれほど多くないですし、バスにしても、タクシーや自家用車での移動に比べると、当然ながら、速度は非常にゆっくりです。

東京出張から戻ってきた翌日、市バスに揺られ、水や緑が多い車窓からの風景を眺めながら、この川の流れのような、バスのゆったりした速度が、今のわたしの身体性には合っているのかなと改めて思ったことでした。それは仕事や家事などにも言えて、40代半ばくらいまではto do リストをこなしながら、休憩もそこそこにがんばっていたものですが、今はそこまでの馬力がない。だから、あまり詰め込まない。でも、そんなゆっくりペースのほうが自分のタイミングで集中力も発揮され、意外とたくさんのことができる面もあるんです。

野口さとこ

そう、5分歩くと、鴨が泳いでいたり、たまには鹿もいたり。空にはトンビが飛んでいて、賀茂川や植物園でピクニックをしていると、トンビにサンドイッチをさらわれる危険もあったりします。世界に誇る文化はありつつも、そんなのんびりしたところがあって、身体性が解放される。それがわたしにとっての京都の魅力だなあと思うのです。これがスピーディなペースをもち、アドレナリンで走っているような人だったら、逆にストレスが溜まることもあるかもしれませんよね。リズムが合う街に住むことの大切さを改めて感じているところです。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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