お茶が楽しくなる季節はこれから(3) 自分自身に戻る時間。「お茶のお稽古」がわたしにくれたもの

 お茶が楽しくなる季節はこれから(3) 自分自身に戻る時間。「お茶のお稽古」がわたしにくれたもの
写真/野口さとこ
Saya
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2024-10-03

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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お点前という意味では一向に上達しない、永遠の初心者なのですが、お茶のお稽古がわたしにくれたものは、とても大きかった気がします。

まずひとつは、季節によって室礼をするという感覚は、わたしがずっと仕事をしてきた婦人誌の世界に通じるものであったこと。むしろ、茶道文化の影響が先にあって、日本の婦人誌・生活誌が発展してきたのかもしれないという気づきもありました。またそれはわたしが現在、文筆業をするなかで専門にしている星占いや占星術の世界にも通じるものでした。

「何月になったら、これをする、あれをする」ということがわたしはきっと、心底好きなのでしょう。時を見つめ、それによって生まれる自然や環境の変化に自分をそっとすり合わせながらも、自分軸は揺らがないようにする。ずっと、自分なりにしてきたことがお茶の世界にも通じる気がしたのです。茶道においても、陰陽五行や十干十二支、易や暦などが重んじられますから。

今では東京に行ったり、毎日がせわしなかったりして、自分のエネルギーがぐらついたように感じたときも、きものを着て、お稽古に行き、一服のお茶をいただくことで、余計なものを落として、自分自身に戻れるように感じます。

野口さとこr

またもうひとつ意外なメリットとしては、荷造り・荷解きへの苦手意識がなくなったこと!面倒くさがりでパッキングが適当なために、スーツケースのなかなど乱雑になりがちなのがこれまででした。

普段のバッグのなかも同様でしたが、お茶というのは、「清める」「しまう」ことをとても大切にしますし、着付けについても、手順の連続です。また、襦袢や半衿、足袋などにしても、きちんと片付け、洗濯もしておかないと、次に手早く着ることもできないわけです。「きものを着て、お茶に行きたい」がために、それらのことがリズムよくこなせるようになったのでした。きものの管理に比べたら、旅行の荷物などなんてことはありませんから、昔から、お茶が花嫁修行の一環だったのはこういうことかと、妙に納得したものでした。

野口さとこ

お道具をもっているわけでもなく、茶事を自分で行うようなレベルには到達できそうもありませんが、不思議なことに、お茶の「一期一会」の感覚はとてもよく理解できる。と言うのは、ホロスコープリーディングの個人セッションでわたしがしていたことは、お茶の精神に通じるものがあると感じるからです。お客さまのために心地いい場所を整え、豊かな時間を過ごす。来てくださる方は、読者の方と言えど、初めてお会いする方も多いですし、今後またいらっしゃるとも限らない。それでも、心を込めて、大切な客人としてもてなす。そうしたことを15年以上、まさに「一期一会」と思って、続けてきました。

そう、だから、実はお茶って、特別なものではないんですよね。そう思わせてくださった先生に心から感謝するとともに、京都に来て、生活のなかにある自然なものとしてお茶に出合うことがわたしには必要だったのだ。20代や30代ではなく、やはり40代だったのだと、自分にふさわしい「時」というものも噛みしめているところです。

京都テーブル茶道教室

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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