とどまることなく、周囲に恵みをもたらす「川」のお話【連載|京都で見つけた幸せの秘密】


女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
前回、前々回の更新では、京都で出合い直した「クラシカルホメオパシーの世界」についてお話ししました。ホメオパシーでは波動を伝える「水」がポイントなのですが、今日は、京都の「川」のお話です。
住んでみると、本当に京都は川が多い。たとえば、今住んでいる左京区では北西から流れる賀茂川と北東からの高野川が出町柳の三角州(デルタ)で出合います。この合流地点を過ぎると鴨川と書かれるのですが、三文字の賀茂川を含めて、川の周辺は公園として整備され、市民の憩いの場となっています。
高野川は鴨たちの憩いの場でもあり、時には10羽くらいが川面にぷかぷかと。少し上流に行くと住宅街でも、散歩している鹿の親子に出合うことも。タクシーの運転手さんによれば、高野川沿いの営業所で、熊と遭遇したことまであるそうで、自然は身近なものです。飼い慣らしてはいるけれど、脅威に感じられるほどの酷暑や底冷えする寒さは、他の街ではなかなか味わえないものかもしれません。

わたしのお気に入りは、松ヶ崎疏水。春には満開の桜が何とも風情があるのですが、誰も歩いていないこともしばしば。観光客もここまでは来ない、とても静かな京都があるんですね。借りている貸し農園のすぐ脇にも、宝ヶ池から引いた農業用水の小川がちょろちょろと流れていて、静かな夏の夜などは水音と虫の音が合奏のように聞こえてきたりします。
昔、ちょっと見えるという人に「細胞のなかが水で満たされていて、水のきれいなところにしか住めない人」と言われたことがあるのですが、まさに京都の左京区は、〝水のきれいなところ〟。またわたしの生まれた東京の小さな町も、多摩川の上流でしたから、水はきれいでした。そのせいか、沖縄では海の近くにも住んでいましたが、どうもわたしが住んでいて落ち着くのは、海ではなく、「川」なんですよね。もちろん、ビーチも大好きなのですが、台風などで海が豹変する、あの激しさにはひるむところがある。一方、「川」は静かだけれど、「流れ」がある。常にとどまらずに流れ、周辺に恵みをもたらす。そんな「川」という存在がないと、エネルギーが停滞するようで、つらくなってしまうのです。また、わたし自身も、「川」のような人でありたいと思っているのかもしれません。さらさらと流れ、こだわらず、変化するのを怖がらないでいたいのです。

大都市に住んで、忙しく働いていると、周囲の地形にまではなかなか思いが及ばないものですが、実は、影響を受けていることを京都に住んでいると実感します。新生活に突入することも多い春も、すぐそこまで来ています。「駅近」「オートロック」とかだけでなく、自分が心地よい「地形」も視野に入れて探してみると、幸せに出会えるかもしれません。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
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