京都・伏見の酒造りと子どもより長い夏休み【連載|京都で見つけた幸せの秘密 vol.6】

 京都・伏見の酒造りと子どもより長い夏休み【連載|京都で見つけた幸せの秘密 vol.6】
Saya
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2024-06-22

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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賀茂川のほとりに住んで、農学校に通ったあと、隣に貸し農園のあるマンションに引っ越し。京都移住の初めの数年のお話を前回まではしました。移住にあたり、もうひとつ大切なのは生計を何で立てるかということ。幸い、わたしには星占いの連載執筆という仕事があり、毎月何本も原稿を書いては東京の出版社や広告代理店に送るというスタイルでどこにでも住めました。またホロスコープリーディングのセッションやクラスもオンラインでしていたので、なんとかなるだろうとは思っていました(計画としてはかなり緩いので、あまり人には勧められませんね)。

夫が見つけてきたのはなんと京都・伏見の酒蔵での酒造り。意外な展開に驚いたものの、わたしと違い、彼はお酒の場が好きなので、作ってみるのもいい経験になるだろうと賛成しました。本人も、ゼロから価値を生み出すものづくりに興味があったようです。勤め先は醸造アルコールを添加しない純米蔵で、8月の終わりから機械の掃除をして蔵を立ち上げ、9月の終わりからお米を蒸し始めます。秋冬は、週に1度しか休みがなく、麹は生きものですから、代わる代わる麹番をする必要がある。蔵に泊まる日もある重労働ですが、夏は長期間、休みになるというワーキングスタイルです。東京出身のわたしにはなじみがなかったのですが、日本酒造りとは、古来から農閑期の仕事だったんですね。夏の間は田んぼや畑をやって、秋冬は郷里を離れ、住み込みで働く農村部の蔵人さんたちによって支えられてきたのです。

写真/野口さとこ

現在では蔵人さんの数も減り、大学で醸造を学んだ人たちが正社員となって、お酒を造るスタイルも多いとか。夫の蔵も例外ではなく、すぐに夫も社員になってしまったので、すっかり定住モードに。冬の間は大変な面もありますが、子どもより長いヴァカンスを取れる仕事が日本にどれだけあるかと思うと、いにしえからある仕事のようでいて、実は最先端ではないかという気もします。

写真/野口さとこ

酒造りは頭も使いますが、肉体労働です。1次産業の大変さを傍で見つつも、ものづくりという実感のある仕事はいいな、とも思います。と言うのは、競争が激しく、数字だけを追うような仕事をしている方がうつっぽくなっていくのをセッションで見聞きしているから。仲間と苦労をともにしながら、好きなお酒を作り、品評会に出品して金賞というゴールを目指す。できたもので、お客さんに喜んでもらう。旅に出れば、日本酒好きな人たちがどこにでもいて、交流もできる。そうした場では作り手はスターなんですよね。もちろん重労働なので、何歳までできるのかは未知数ですが、なんだか夢のある仕事でもある。やる気になったら、移住や転職は何歳からでも可能だということも、つくづく感じるところです。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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