隣に貸し農園のあるマンションに引っ越して(3)学校のような貸し農園で、楽しみながら畑を続けられた

 隣に貸し農園のあるマンションに引っ越して(3)学校のような貸し農園で、楽しみながら畑を続けられた
Saya
Saya
2024-06-07

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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(1)(2)で、貸し農園での手抜き農業についてお話ししてきましたが、ここに越してよかったのは、ゆるやかにコミュニティに参加できたことです。

と言うのも、農学校では西日本全域から生徒がやってきていたので、京都でのコミュニティは、あまり広がらなかったのです。でも、この貸し農園には駐車場がないため、メンバーは自転車で通える近所に住む人ばかり。このあたりでは有名な進学校、洛北高校の生物部の顧問だったというおじいさんもいらして、東京の父と同い年。管理人のおばあさんも同年輩で、東京の母と1歳違い。おふたりを中心に畑にコミュニティが形成されていたので、「京都の父と母」という感じで、わからないことは何でも聞けたのがとてもラッキーでした。

そう、この貸し農園は学校でも何でもないのですが、わからない人が入ってきても、まわりがどんどん教えてくれる。本当にできない、知識がない人だと代わりに耕してくれたりもするサービスぶりなのです。わたしも、ネギの植え付け法、雑草の取り方、藁の使い方など、細かいことをいろいろ教えてもらいました。

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「ダイコンのなかに蜘蛛の巣みたいに糸を張って、卵を産み付ける虫がいたわよ」とピンセットで取ってもらったこともあるし、夏に1週間ほど留守にしている間にミニトマトの脇芽が伸びすぎてしまい、帰ってきたら、棚が組んであったこともありました。

管理人のおばあさんに至っては、いろいろと野菜のレシピも教えてくれますし、「ちらし寿司を作ったから、取りにおいで」「漬物を漬けたから」と電話をいただくのもしょっちゅう。畑で採れたレモンやミカンなどをいただくこともあります。

子どももいないうえ、仕事先は東京ですから、地元のコミュニティには入りづらい面もあるのですが、畑を通じて、ゆるやかにお付き合いが生まれていったのは本当に僥倖でした。ここ数年は、茶道の先生が子どもたちと遊びに来てくださるように。先生が畑でお茶を点ててくださったりして、野点の楽しみまで付いてくるようになりました。

京都のこのあたりで暮らしてみると、東京ではお金がないとできないと思い込んでいたことが多かったなあと思います。植物園や賀茂川でのピクニックも、畑での野点も、お金がそんなにかかることではない。でも、最高に楽しくて、贅沢に感じられるんですよね。

東京では消費者としてお金を遣う一方で、「楽しませてもらうのが当たり前」という依存的な態度で、ずっと生きていたような気がしています。いえ、東京でも、わたしがそうだっただけで、もっと創造的に暮らしていた人はきっといくらもいたのでしょう。わたしがそういう人に出会えなかっただけなのです。でも、京都のこのあたりではそんなにがんばらなくても、自然のリズムに即したライフスタイルが手に入るのですね。「左京区大好き」とつくづく思ってしまうところです。

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文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。

ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。

ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。



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