京都人に学ぶ、新しもの好きで学び続ける姿勢【連載|京都で見つけた幸せの秘密 vol.2】
女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
いくつになっても学ぼうとする姿勢に幸せの秘密がある!
「東京出身だけれど、今は京都に住んでいる」と説明すると、「自分も住んでみたい」という返答が返ってくることも多いものですが、決まって続くのは、「京都の人って、イケズって本当? 」という言葉です。京都本がこれだけ出ているものの、「実は、楽しくて住みやすい京都」は案外、知られていないのかもしれません。イケズでうるさい人も、もちろんいるところにはいるでしょうし、伝統を守るためにはそうした人も必要です。
でも、わたしはのびのびと楽しくやっていますし、「京都の人は、こんなに暑くて寒いところで暮らしているのだから、イケズというより、むしろ我慢強いのではないか」と思うところ。オーバーツーリズムで世界中から観光客が押し寄せるなか、我慢強く接しているんだけれど、これだけ美しく、また歴史のある街です。美意識もプライドも高くなるのも当たり前で、たまに我慢できなくなって、鋭いひと言を漏らしてしまうとしても、気分はわかるような気がします。
また、わたしが住んでいるのは左京区です。古い人から見ると、「京都ではない」と言われそうな洛外エリア。洛中と言われる中心部とは違い、外から入ってきた人間も多いので、京都に惹かれてやってきた「周辺の人たち」もたくさんいるのです。彼ら、彼女たちは、たいてい好奇心や自立心が強くて遊び心もある。自由でやんちゃ、付き合っていて楽しい人たちです。
それは、このあたりのもともとの人にも言えて、伝統を守っているようで、実は、「新しもの好きで、学び続ける姿勢」をもつ人にもよく出会います。神ごとやお祭りを初め、伝統を継承することに命懸けだけれども、海外の文化への関心も高く、水平的な思考も案外、強いんですね。
明治維新以降、公家や皇族が東京に行ってしまったために空洞化した京都。その穴を埋めるべく、京都の有力者たちが大学を招聘したとも聞いたことがありますが、大学や学生の多さからも、町全体に「学ぼう」とする空気がある。需要に応じて、「教える」人も増えるのが自然の摂理で、リーズナブルな学びのチャンスがそこここにあります。東京時代は仕事ばかりだったわたしも、京都に来てからはひたすら学び続けています。40代半ばから50代にかけて元気に過ごせたのも、好奇心や成長への意欲が満たされているからという気がするのです。
また、年老いても楽しくやっている人生の先輩たちとの出会いも増え、エイジングへの不安もなくなってきました。住まいの隣で借りている畑には元気なおじいさん、おばあさんがたくさんいて、野菜やお惣菜、漬物などを分けてくれますし、お茶のお稽古の帰り、92歳のおばあさんに書店で、「あなたのきもの姿、とっても素敵ね! 」と話しかけられ、お宅まで遊びに行ったこともあります。バス停で、アフリカのガボンからの留学生の女の子に日本語で懸命に話しかけるおばあさんに遭遇したこともあります。
永住しようとすると、移住のハードルは上がるもの。それはわたしだって同じで、いつまで住むかは決めていません。前回書いたように、自分にとっての大切な場所、つまり自分だけのパワースポットは、人それぞれ。京都である必要もないのですが、ただ京都には日本人が当たり前に思っている文化のルーツが詰まっています。テレワークも一般的になりつつあるなか、京都に数年でも暮らしたり、1年のうち数ヶ月でも滞在したりすると、思いがけない、生き方のヒントが見つかるかもしれません。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
AUTHOR
Saya
アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。
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