京都でアトリエを借りるということ1)アトリエを借りることで、ゆるやかに京都へとアンカリング


女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
前回、「リタイアせずに仕事を続けたい」という京都の価値観、職人や個人事業主が多い土地柄について、お話ししました。でも、いかにノートパソコンと占星天文暦さえあれば、どこででも仕事ができるノマドワーカーのわたしでも、蘭のフラワーエッセンスやセラピューティックエナジーキネシオロジーなどをセッションに取り入れようとすると、場所が必要になってくる。それで、この連載でも以前、触れたようにアトリエを借りたわけなのですが、「京都でアトリエを借りる」ことは、割と聞くんですよね。それで、わたし自身、とても世界が広がったので、今日は、そんなお話をしてみたいと思います。

そもそもわたしは20代、婦人誌、新聞系、流通系など3社でエディターをしていましたが、10年目で独立。大手出版社の編集者かつ取材ライターになりました。4年くらいはライフスタイル、健康、インテリア、収納、占い、芸能人の書籍など何でもやりすぎて、ちょっとカオスだったのですが、その後、Sayaとして、星占いを自分で占って書くお話をいただいて、著者になる道がひらけたのでした。
占星天文暦という本とノートパソコンさえあれば、仕事ができるようになって、2008年から5年くらいは、駐在帯同でストックホルムにいる友人宅にひと月置いてもらったり、沖縄の離島のホテルで書いたりなど、今で言うワーケーションに挑戦していたものでした。海外取材、北海道などの取材もあって、2010年などは、1年のうち、4分の1くらいは東京にいなかったほどです。

けれど、まだ30代後半です。今思うと、どこか無理をしていた。「自由で、強くて、何でも思う通りになるフリをしていた」んですよね。そんなふうに負荷をかけて飛び続けていると疲れてくるのも当たり前で、2015年に入籍後、京都に移住してからは、今度は、週末農学校に通って、マンションの隣の貸し農園で、畑をやり始めるなど、真逆の方向にシフト。突然、地に足の着いた暮らし方を始めたのですから、よく考えると、以前からわたしを知る人たちは、理解不能だったかもしれないですね。
ただその間も、星占いの執筆だけは続けていました。楽しみにしてくださる読者さんの声がわたしを支えてくれたわけなのですが、いろいろなチャレンジをしても、星占いの執筆という軸があることがわたしを宇宙の彼方に飛ばすことも、地面にめり込ませることもなく、自分自身とつないでくれていた気がします。「占星術は、天と地の間にかける梯子」という言い方がありますが、東京時代は天に振り切れていたので、どうしようもなく地が必要になって、それで畑を始めたような。京都に来てから7年、畑を借りてから5年経った頃、アトリエを借りることになるのですが、天と地の間にかける梯子の象徴として、アトリエがあったようにも思える。それはさまよい、漂いがちなわたしの、ゆるやかなアンカリングとしても働いてくれたのです。
→【記事の続き】京都でアトリエを借りるということ2)興味があるなら、借りたらいい・ルームマーケット平野代表のお話、はこちらから。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
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