京都でアトリエを借りるということ2)興味があるなら、借りたらいい・ルームマーケット平野代表のお話

 京都でアトリエを借りるということ2)興味があるなら、借りたらいい・ルームマーケット平野代表のお話
Saya
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2025-01-14

女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。

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実は、アトリエは、京都に来てからずっと借りてみたいとは思っていました。東京を離れる前は渋谷・南平台の自宅マンションで、個人セッションもしていたんですが、自宅に読者の方を迎えるのは、水まわりや玄関のお掃除など本当に気が抜けない。沖縄や京都に移住してからは、ナハテラスやホテルオークラ京都などのラウンジを使っていましたが、パンデミックで、オークラのラウンジが日中クローズしてしまい、その思いは加速していきました。また畑を優先させて借りた今のマンションは手狭で、一気に増えたウェブミーティングにも対応しきれていなかったのです。

アトリエを借りてみたいというきっかけになったのは、ずっと拝見していた「ルームマーケット」という不動産屋さんのサイトです。なかでも、2〜3万という格安の洋館が気になって仕方なく、ずっとチェックしていたのですが、なかなか募集が出ない。それが、新型コロナウイルスが5類に移行した2022年春、募集が出ていたのですね。百年前の学生寮で、設備は最低限。トイレや水場が共同なのも、アトリエとして借りるには逆に理想でした。1度目のトライでは逃したものの、2度目は追加募集の連絡が入った1時間後には駆けつけ、無事、洋館の住人になることができました。

「ルームマーケット」のサイトには「アトリエ可」という言葉が並んでいるのですが、そもそもなぜ「アトリエ可能物件」をこんなに扱うようになったのか、「ルームマーケット」代表の平野さんに聞きました。

野口さとこ

「京都には、ニーズがあると思うんです。20年前に始めた頃、京都のテント屋さんのスタッフが部屋を借りてくれたことがあったんですけど、家に帰ってもミシンを使いたいからと土間のある家を借りてくれました。何台あるんですかって聞いたら、何と4台っておっしゃるんです。こういう方がおられるんだなと思ったら、他のテント屋さんのスタッフらも来られました。僕らも土間のある家を借りたいって。京都には6個くらい美大があるから、版画機を置きたい、陶芸釜を置きたいなんて、土間のある家には隠れた需要があるんだと当時思いました。それが現在につながっています。

京都にはもと機織り屋さんとか、たくさんあります。弊社が仲介した方で、現代アートの作家さんが売れっ子になっていかれることもありました。美術館に作品を買ってもらったとか、あとで知ることが多いのですが、あの家や空間が生んだ、広がったと思うととても嬉しいです。また僕らは古い町屋をリノベして、売却したりもします。土間アトリエ物件は、未知なものが生まれる可能性を秘めています。そんな空間を作っているつもりです。買主さまは、京都の文化に理解のある投資家さんが多いですね」

野口さとこ

不動産屋を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

「あんまり深く考えてはいなくて、ほんまに思いつきでした。20代の初めにイタリアに住んだ経験があるんですが、500年前の家とかでもイタリアではみんな生活していました、普通に住んでいる。漆喰の壁に電球色のライトなど。僕がイタリアで見た空間の豊かさを伝えたい気持ちは今でもあります。でも、僕らのリノベーションの意図は、そういうのを〝必要最低限、整える〟です。業務用シンクのキッチン、理科室の洗面器、無垢板フローリングなどを提案しています。うちのお客さんが喜びそうなことがあるんで、そういうのを必要最低限、整える。完成度は7割くらいでしょうか。仕上げたら、あとの余白部分は、借主さんのセンスにおまかせしています。

難しく考えないで、みなさん興味があるんでしたら、アパートひと部屋とか、土間ある家とか借りてもらったらよいと思います。Sayaさんだって、そうでしょ。別に美大生に関わらず、人って、人生のどっかで自分を表現したくなることってあるんだと思うんです。それが普通だと僕は思います。家を借りるって自己表現の一環になりますが、2万円台のアパート1室を借りるなら、お財布的にもハードルは低い。それが暮らしや人生の豊かさになると思います」

扱う物件は、現在250軒ほど。それを500軒にしたいという平野代表。アトリエに入る人たちを応援したいからとわたしの本まで買ってくださって、爽やかに去っていかれました。

ルームマーケット https://roommarket.jp/

→【記事の続き】京都でアトリエを借りるということ3)直観でやってみて、自分の輪郭がはっきりした気が・友成響子さん、はこちらから。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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