茶人にはなれないけれど、きものにハマった話(1)お茶の先生のきもの姿に憧れて、きものの道に
女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
以前、裏千家の先生に、テーブルで茶道を習いはじめたお話をしました。正座もできませんし、4年も5年もかかって、ようやく盆略点前ができるように。茶人にはなれそうもないと早々に悟ったわけですが、代わりにやってきたのがきもの熱でした。
思えば、東京時代から、身のまわりにきものはあったのです。祖母は、公民館に行くのもきものという人でしたし、母が独身時代にあつらえた京風のきものが詰まった大きな桐箪笥も実家にありました。でも、成人式のきものに何十万も出してもらうよりは、海外旅行に行きたかったのが当時のわたし。さらりときものを着られる祖母の姿に憧れはあったものの、そのまま何十年ときものと縁のないままに過ごしてきてしまいました。
そう、きものに縁の人も親しい輪にはたくさんいて、呉服屋さんはもちろん、『美しいキモノ』の編集者だった友人、お父さんが帯のデザイナーや友禅の職人だったという担当編集者たちもいました。あまりにも玄人はだしの人ばかり周りにいたためか、逆に踏み出せずにいたのかもしれません。
それが京都でお茶を習い始めてみると、毎回、先生が素敵なきもの姿でいらっしゃる。高いものばかりではなくて、お下がりのときもあるのですが、自分のものにされていて、本当に素敵なのです。普段の生活のなかで着こなしている先生への憧れが募っていきました。
でも、いざ着付けを習おうと教室を調べてみると、最初の壁だったのがきものをもっていないことでした。「きものをもってきてください」と書いてあるところがほとんどなのです。通販などで買おうにもサイズがわからないので、しばらく二の足を踏んでいたのですが、京都・茶山の骨董屋さん、正尚堂さんと知り合ったことがきっかけで、まずは古い紬のきものと博多の名古屋帯、帯締め、帯揚げなどをひと揃い、手に入れることになりました。
古いものを大事にする京都では、「新品のきものをあつらえる」という意識はさほど高くないような気がします。シーズンごとに、とっかえひっかえ華やかにしているよりも、〝おばあさんのきもの〟を素敵に着ているなんていうほうが粋とされる町なんですね。憧れだった「暮らしのなかのきもの生活」へのハードルは、京都に来て、ぐんと下がることになったのでした。
→【記事の続き】茶人にはなれないけれど、きものにハマった話(2) きもの熱に浮かされているうちに閉経を乗り切った、はこちらから。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
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写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
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AUTHOR
Saya
アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。
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