茶人にはなれないけれど、きものにハマった話(3) きものを着る喜びで身体性が解放され、新たな扉が
女性の人生の中で心身が大きく変化する”更年期”…何でも、日本女性がもっとも落ち込みやすいのは49歳だという統計もあるとか。でも、わたしは、50歳前後の複雑なはずの時期、自分の年齢をまったく気にせず、元気に過ごしてしまいました。むしろ京都に移住する前の40代半ばのほうがつらかった気がします。うまく切り抜けられたのは、京都に住んだおかげだったのかもしれない…と50代に入って数年経った今、すごく思うのです。この連載では、そんなわたしが40代、京都で見つけた「幸せの秘密」を探っていきたいと思います。
誰に強制されたわけでもないのに、月2回のお茶のお稽古のほか、月に1回くらいは観劇や展覧会といった着る機会を作って、なんとかひとりで着られるようになったわたし。着付けを習いはじめてから3年経った2024年の春分には別媒体ですが、好きが高じて、きものの体験談の連載を始めてしまいました。
「きものが好き」というワクワクが「好きなきものについて話す」という次のワクワクを呼ぶというこのサイクル。何かに似ているなあと思うと、星を好きになったときと同じなのです。「星が好き」で「星について話す」ことを続けているうちに、今のようなお仕事スタイルになってしまったからです。
さらに、2024年の夏至からは、京都きもの市場さんの「きものと」というウェブメディアで、「きもの占い」もスタート。実は、先ほども書いたきもの体験談の連載の校正をお送りしたところ、「うちでも書いてくれませんか」とお声がけをいただいたのですね。実は、ぼんやりとそうなったらいいなあと思い描いていたので、引き寄せに成功してしまったところもありました。
好きになると、対象を徹底的に知り尽くさないと気が済まないオタク体質なので、今回もその集中力が発揮されたわけですが、「きもの占い」のよいところは、誰でも楽しく読んでもらえるところだと思います。と言うのは、占星術の世界は、ともするとアタマの世界にさまよい込んでいき、身体性を忘れてしまうところがあるのですが、きものは真逆。「きものを着る喜び」がここまであるのは、自然素材であるきものを着ることで、身体性が解放されるからではないかと思うのですね。それは、ヨガジャーナルオンラインの読者の方たちが愛してやまない、ヨガの世界とも通じるものがあるかもしれません。
今は、素敵なリユースやヴィンテージのきものが安く流通しているので、ウェブショップなどで見る目を養うと、さほどお金をかけなくても、自分なりのワードローブが手に入ります。裏地付きの袷の色無地(やわらかい、セミフォーマルに着られるきもの)、紬(織りのきもの)が1枚ずつ。裏地のない春や秋に着られる単衣の紬が1枚、夏ものの麻や浴衣が1枚。それぞれ合わせる帯がいくつかあれば、当座は着まわせると思いますから。
星座ごとに魅力も違うわけですし、その魅力が引き立てられるきものを着たら、きっとおもしろい展開が人それぞれあるだろうなあと思うと、「きもの占い」を推し進めたくなっているわたしです。むしろ、それは「きものセラピー」なのかもしれません。
また自分の予算には限りがありますが、仕事でコーディネートが考えられるなんて、なんて素敵なことでしょう。お仕事という感じが少しもないまま、毎月、星座ごとのコーディネートを楽しんでいるところです。何歳からでも、「好き」は原動力になるもの。自分の人生を楽しむことを忘れずに、生き生きと過ごす大切さを実感しているところです。そして、思いがけないところに扉はあるものなのですよね。
文/Saya
東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『占星術ブックガイド〜アストロロジャーとの対話集〜』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram @sayastrology
写真/野口さとこ
北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram @satoko.nog
AUTHOR
Saya
アストロロジー・ライター。東京出身、京都在住。早稲田大学卒業後、ライフスタイルの編集者を経て、アストロロジー・ライターに。「エル・デジタル」、「LEEweb」の星占いも好評。現在は、京都で夫と二人で暮らし、星を読み、畑を耕す傍ら、茶道のお稽古と着物遊びにいそしむ日々。新刊、『占星術ブックガイド〜星の道の歩き方、アストロロジャーとの対話集〜』(5500円/説話社)が好評発売中。
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