大きな花柄を取り入れたはずが「少し強めのロマンティックおばさん」になった話【#連載 発酵適齢期】
36回目の『発酵適齢期』、テーマは「リアリスティックおばさん」です。
こんにちは。ライターの高木沙織です。
36回目の『発酵適齢期』、今回は「リアリスティックおばさん」について語っていきます。
おばさんにはなりたくないけれど、「ロマンティックおばさん」にならなりたい!?
それは今年の2月のことでした。いつものようにスマホを片手にSNSをダラダラと見ていたら、パワーワードが飛び込んできました。Xユーザーの間で話題になり、トレンド入りまでした「ロマンティックおばさん」なる言葉です。これには、(何それ、情緒的なご婦人のこと?)と一旦は言葉の意味をそのまま受け取ったのだけれど、どうやら違うみたい。
「ロマンティックおばさん」の元ネタは、2019年に書かれた女性向け生活情報雑誌のコラム。大人が花柄のトップスを着る場合、下手するとロマンティックおばさんになる―という内容からもポジティブな例えではないとわかります。しかし、興味深いのはここからで、「大きな花柄のトップスって、むしろいいじゃん!」と前向きにとらえる人が続出。
世の中的には「おばさんにはなりたくない」という声が少なくない中、「ロマンティックおばさんになら進んでなりたい!」という投稿や、それに賛同する声が後を絶たず、ロマンティックおばさんはちょっとした時の人状態になっていたわけです。もしかしたらこれって、単なるファッションの話しではないのかも?
ロマンティックおばさんは、自分の機嫌を取る達人
さて件のロマンティックおばさんを画像検索してみた私ですが、元々のネガティヴイメージに反してめちゃくちゃ素敵だったことに失礼ながら感動を覚えました。それも、タブー視されている大きくて鮮やかな花柄のトップスが逆にいいスパイスになって効いているんじゃないかって―。「これくらい余裕で着こなせるわ」という大人だからこその余裕が感じられて、潔くて格好いいんですよ。
お気に入りの洋服を着た日って、ずっとご機嫌でいられるんだよなぁ…という大切な気持ちを諸先輩方から思い出させてもらいました。好きな服を好きなように着て、自分の機嫌を取って、さらに楽しくなって…これって最高のループ!
こうしてロマンティックおばさんへの憧れに共感しつつ、向かった先は自宅のクローゼットです。
ところが扉を開けてみると、ロマンティックのロの字もない洋服がズラリと並びます。トップスもボトムスも、半分以上が黒。残りは白、ベージュ、グレー、奇跡的に赤カーディガンが1枚あったけれど、どれも柄はなくデザインもシンプル。ロマンティックおばさんとは程遠いどころか、対極のリアリスティックおばさんです。
そもそもロマンティックとは現実を離れ、情緒的で甘美なさまという意味。一方でリアリスティックは、現実的という意味を持ちます。自分の性格を分析すると、神経質で頑固、真面目、さらには将来を悲観しがちなものだから、もともとロマンティック要素は少なめだとわかっている。わずかに残っていたロマンティックな部分さえも、大人になるにつれて叶わない夢や希望に心が折れては添え木をして、ガチガチに固めて封をしてきたタイプです。
42歳になった今は、愛猫と自分の生活を成り立たせるために健康と仕事を死守しなくてはならないし、親の将来のことも気になり出してきました。物価は高騰し続けるし、お金のことだってこれまで以上に真剣に考えていかなくてはいけないと思っています。そんな生活の中で気分が高揚することといったら、たまにポテトチップスを食べる時くらいでしょうか。それはそれでいいのだけれど、ロマンティック…やっぱり憧れる。
もし自分にロマンティックな要素があったなら、毎朝の食卓に趣きを加え、外出したら花を買って帰ってくる? いや残念ながら、朝食は雑穀おにぎり2個と決めているし、花は好きだけれど猫がいるから飾りません。それならせめて洋服だけでも花柄にしたいところだけれど、大きな花柄のトップスを着るのにはあとちょっと勇気が必要です。
そこで、手はじめにパジャマのズボンをカラフルな花柄に変えてみました。写真に撮って、意気揚々と友人に送ると―。
私:「ロマンティックおばさん」計画の第一弾! これなら私もイケるかも。
友人:それ、ボタニカル柄だよ。チーターいっぱいいるじゃん、攻めるねー!
改めて見てみると、南国の植物(葉物)を中心にその隙間からピンクと黄色のチーターが顔を覗かせています。久しぶりに顔から火が出たよ。まぁ、気分は上場なので、少し強めのロマンティックおばさんということにしておきます。
ではまた、37回目で。
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