猫を飼うことと独身女性の関係を考えた、40歳・猫飼い歴6年のライターの今|連載 #発酵適齢期
40歳、猫飼い歴6年目のライターが「独身女性と猫」について世間で言われてきた"あの説"を考えていきます。
「独身女性が猫を飼ったら、婚期が遅れる」―。世の独身・猫が好きな女性を絶望の淵に沈ませかねない古い言い伝えがあります。1人暮らしで猫を迎え入れようものなら、婚期が遅れるってやつですね。
こんな言説は、結婚ハラスメント(マリッジハラスメント)以外のなにものでもないうえに、特に昨今は厳しく糾弾される風潮にありますから、口にする人は減ってきているように思います。ですが、独身猫飼い女性(主に私のこと)は心の機微に聡い…、こと結婚云々に関しては。「あ~猫、飼い始めちゃったんだ? てことは、ねぇ?」って、その心の声しっかり聞こえてますからね。
第13回目の『発酵適齢期』、今回のテーマは「独身女性と猫」です。
34歳で猫を飼い始めたときのまわりの反応
私が初めて猫を飼ったのは、10歳のとき。その猫がこの世を去ったのは、まだ航空会社で働いていた20代の頃です。多感な時期にそっと寄り添ってくれた愛猫との別れに、重度のペットロスを発症したのは言うまでもありません。愛おしくて仕方のない、かけがえのない存在との別れがとにかくツラかった。
寝ても覚めても涙が止まらず、喪失感が埋まりません。どこに手を伸ばしても、あたたかくてモフモフなあの子には触れられない。こんな思いはもう二度としたくないと、今後の人生で猫は飼わないことを心に誓います。ところが、それから10年弱―。
34歳のとき。家の近くで、3匹の子猫を見つけます。ちょうどその1年前、親しくしていたご近所さんが猫を飼い始め、私はよく遊びに行かせてもらっていました。猫が好きという気持ちがふつふつと再燃し、子猫たちを引き寄せたのかもしれません。
ご存じの人も多いと思いますが、子猫のかわいさといったらそれはもう神が創った最高傑作なわけで、一度会ったら最後。動物病院に連れていくだけのたった30分ですっかり虜、全面降伏。高らかに私、猫を飼う!宣言をしたのでした。
それが今、我が家で暮らす愛猫・小虎(ことら)との出会い。
※ ほかの2匹は同じ里親さんにもらわれていきました。
当時の住居は猫と暮らしてもOKだったので、いそいそと猫グッズを揃えて2~3時間おきのミルクタイムや、排泄の手伝いを嬉々としてこなす日々です。ライターの仕事が中心で、自宅で過ごす時間が長かったから成せたのでしょう。取材や撮影、ヨガのレッスンで外出しなくてはならないときは、もちろん直行直帰。
私:「お疲れさまでした! 失礼しますっ」
仕事関係者:「あれ? 高木さん、帰るの早いね」
私:「家に猫の赤ちゃんがいるんです。ミルクをあげなくちゃいけなくて」
仕事関係者:「え、猫の赤ちゃん? ミルク…あぁ、そう。じゃあ気をつけて」
猫飼いのあいだでも、乳飲み子時代から接する機会はそう多くありません。猫に興味がない人からすればなおさら、ミルクがトイレが…と額に汗する私は理解の範疇を超えた存在です。ただならぬ何かを感じ取り、微妙な反応をせざるを得なかったのでしょう。
また、いつもは言いにくいこともズケズケと口にする女友達でさえ、このときばかりはどこか控えめ。
友人:「猫飼い始めちゃって、大丈夫? 独身の友達で、猫を飼い始めた子がさぁ…(どうやら婚期を逃がしているらしい)」
こんなふうに、私の行く末を案じる始末。一方で、当の本人は猫のかわいさにメロメロですから、彼氏やその先のことなんて頭にないのでした。
猫を飼うことと、婚期の関係
本題の猫を飼うと婚期が遅れる問題ですが、猫飼い歴6年・40歳になった私はまっさらな独身です。それってやっぱり、猫を飼い始めたから?―。
結論から言うと、違うと思います。そもそも、34歳で小虎と出会うまでにも結婚していないわけだから、猫を飼ったら婚期が遅れるというのは私には端から当てはまっていないのかもしれません。もともと独身だった女性が縁あって猫を飼い始めて、独身猫飼い女性になっただけのこと。
思うに、猫を飼う理由って本当にさまざま。猫を飼っている独身女性のなかには私と同じような経緯だったり、はたまた潔く猫と結婚するからという人もいる。最近では、ザッと思い浮かべるだけで3人の独身猫飼い男性が身近なところで誕生しています。みんな、愛すべき猫好き仲間です。
さて、よく猫を飼うと恋愛に興味が薄れるというけど…これは? 猫が彼氏・彼女に代わって寂しさを埋めてくれたり、安心感・癒しをもたらしてくれたりするんですよね。一緒にいて幸せな気持ちになるし、楽しい。互いに必要とし、必要とされる…猫さえいてくれれば心が満たされるというのは、すごくよくわかります。コロナ禍には、この子がいてくれてよかったとどれほど強く思ったことか。
けれど、猫との暮らしがどこまでリアルな恋愛に影響してくるのかは、その人の性質や過去の体験にもよるのではないでしょうか。ひどい失恋をしたときは、(もう猫しか愛せない)という気持ちにもなるものです。その点、私の場合は猫は好きだけど恋愛はまったくの別物。小虎と暮らし始めてから色恋沙汰がなかったかといえば、そうではありません。ちゃんと好きになって、ちゃんと失恋しています。
ただ、こんなケースもあります。好意を抱いた相手が、猫が苦手というパターンです。しかし、私からじゃあナシでとはなりません。残念ながら、相手が「猫がいるなら無理」という場合は仕方がないですが。アレルギーとか猫との過去の思い出とか、色々あるでしょう。恋愛の幅が狭まるというのは、ない話ではない。
あと、家で猫が待っているから飲み会や旅行に行けなくなるというのも確か。でもこれって、週・月ペースで数えてもそんなによくあることじゃない。猫も大人になればさほど手がかかりませんから、多少のお留守番ならできちゃいます。
つまり、猫を飼っていようが飼っていまいが、私の結婚には大きく影響していないんですね(ここ、猫の名誉のためにも声を大にして言いたい!)。
ここでもう一度、自分の結婚観に立ち返ります。結婚願望はあるのかと聞かれたら、有り余るほどはない。反対に結婚したくないのかと問われると、いつかできたら…。強がりもあるけど、幸いにも仕事は楽しいし、もともと1人でいるのは苦じゃない。それゆえに薄ぼんやりとした考えを続けてきた結果が、私が結婚の“けの字”にもかすっていない理由なんじゃないかと思うんです。
この年齢にもなると、30代半ばで感じた結婚の可能性にヤキモキするような気持ちも、周囲からの期待も薄れてくる一方。ますます結婚からは遠のいていくのだろうなと、ある種の覚悟をしていかなくてはならないでしょう。そのとき、猫に依存しすぎないようにしないとな…と心の準備はしていくつもりです。
少し前に発表された総務省統計局の調査結果によると、40代女性の未婚者は6人に1人ほどだそう。これを受けて「6人に1人も」と思った私は、まだしばらく独身を貫くであろう未来が易々と想像できます。なんて言っておきながら、胸の奥のほうでは“この人!”という人と出会ったら交際ゼロ日婚するのもいいな…と妄想をする自分もいたり。
最後に…。2023年で6歳になった我が家の愛猫。猫の6歳は人間でいう40歳に相当するそうで、今の私たちは同い年の壮年仲間。
私:「小虎、私と結婚する?」と、冗談で言ってみたところ、明らかに嫌な顔をされました。ではまた、第14回目で。
AUTHOR
高木沙織
ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。
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