老いを突きつけられてツラい…美容室の鏡の前で過ごす時間に凹まないためには【連載 #発酵適齢期】

 老いを突きつけられてツラい…美容室の鏡の前で過ごす時間に凹まないためには【連載 #発酵適齢期】
canva
高木沙織
高木沙織
2024-02-25

24回目の『発酵適齢期』。テーマは、「“あるもの”を数えたくないとき」です。

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こんにちは。ライターの高木沙織です。

「ないものを数えるより、あるものを数えよう」――。自分が持っていないものにフォーカスしていると、焦りや不安で気が滅入ってしまいがち。だけど、どんな些細なことでも、アレもあるしコレもあったんだ……そうやって今あるものに目を向けていくと、すでに満たされている自分がいたりして。

現状に満足できず、ヤキモキすることが多い私は、何度この教えに救われてきたことか。ところが先日、あるものを何1つとして数えたくない場面に遭遇してしまったんです。

24回目の『発酵適齢期』は「美容室っていつから修行部屋になったの?」です。

笑っているはずなのに、顔が……

数週間前、美容室に行きました。カットとカラー、そしてトリートメントの予約・指名をしたのは、いつもお世話になっている美容師さん。

伸びてあちこち散らかっている顔まわりのレイヤーに寝ぐせを添えて、全体的な退色と根元のプリン、さらには乾燥とダメージからくるパサつきを引っさげての来店です。それでいて、メイクだけはバッチリというアンバランスさを醸し出しているのは、餅は餅屋ならぬ、髪は美容師さんに任せるという信頼の証! 決してズボラの言い訳ではありませ…ん。

しかし、こんな姿を見ても顔色ひとつ変えずに平静を装える美容師さんってすごくないですか。きっと、素晴らしく心が整っているんでしょう。思わず、「いつも何分くらい瞑想しているんですか?(勝手にしていることになっている)」って聞きたくなっちゃうよね。それはさておき……。

「じゃあ、カラーから始めていきますね」

「はーい」

施術は、サクサクと進んでいきます。

「今日はちょっとお疲れ気味ですか?」

「うーん、そうかもしれないです。今朝は、3時に起きてるから」

「えっ? 3時!?」

「そうそう、朝のうちに原稿を書きたくて。でも、寝るのも早いんですよ」

こんな当たり障りのない会話をしていると、あることに気がつきます。ところどころ全力で笑っているつもりなのに、頬の筋肉が持ち上がりきらず中途半端。笑顔が引きつっていて、不気味……。鏡の中の自分の姿に「どうしたの?」と問いかけたけれど、「いや、こっちが聞きたいよ」と逆切れされてしまいます。

美容室の鏡の前では「精神と時の部屋」さながら時間が濃密

笑顔が不自然なだけではありません。

カラー剤を塗られ、オールバックになり遮るものが何もなくなった自分の顔は、生え際が後退しているし、目から下の中顔面の長さも目立つ。目の下のたるみやシワ、ほうれい線、頬の毛穴……、目を背けたくなる現状のオンパレード。ヘアバンドをして、顔を全開にすることは自宅でもよくあるけれど、美容室のピッカピカに磨きあげられた大きな鏡に映るそれとは別物です。

ないものより、あるものを数える精神で生きていきたいけれど、これは何か違うっ! カラー剤を流すまでの15分間、鏡の前でジッと耐えていると時間の流れが狂ってくるのを感じます。例えるなら、精神と時の部屋(『ドラゴンボールより』)にいるかのような時間の濃さ。ここでの数十分は、美容室を出てからの数秒相当に違いないと、ひとり勝手に修行をしている気分。

それにまだ、ここからシャンプーとトリートメントをして、髪を乾かしたあとにカットとセットが控えています。1時間半はかかることを予想すると、いかに自分の顔を直視せずに過ごすを考えなくてはなりません。

雑誌やスマホに視線を落とすのがいいのかもしれないけれど、どんなふうにカットされているかを見たい私には微妙な戦略。かといって、美容師さんの手もとをジッと見るのもプレッシャーを与えているようで気が進みません。目を細め、視界を狭めるチベットスナギツネ作戦を試みるも、余計に変な顔。

発酵適齢期_vol.24
チベットスナギツネ作戦!

自分の胸もとあたりをぼんやりと眺めながら思ったのは、「気づきにいかないことの重要性」です。

多分、私たちは情報をキャッチすることに慣れ過ぎているんですよね。その背景には、スマホさえあれば、いつ・どんな情報も容易く収集できてしまうことも関係があるのかもしれません。結果として、情報収集の達人となり、シーンを問わず色々なことに無意識のうちに反応しやすくなっているように思うんです。キャッチした情報をうまい具合にリリースできればいいけれど、そうもいかず澱(おり)のようにたまってしまい心が重くなるのは避けたい。

探さない・気づかない・数えないほうが、心が穏やかなこともある。こと、自分にとって心がザワつきそうな問題からはスッと一歩身を引く――。そんな力が今、必要とされているように感じられてなりません。

目を細める私に、心配そうに「仕上がり、どうでしょう?」と聞く美容師さんにごめんなさい。ヘアスタイルの仕上がりは、とっても素敵でした! 

ではまた、25回目で。

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高木沙織

高木沙織

ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。



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