趣味が高じて仕事になると、趣味はどこに行ってしまうのか?を考えてみた【連載 #発酵適齢期】

 趣味が高じて仕事になると、趣味はどこに行ってしまうのか?を考えてみた【連載 #発酵適齢期】
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高木沙織
高木沙織
2023-11-10

第18回、『発酵適齢期』。趣味が高じて仕事になると、「それ」はきれいサッパリ趣味ではなくなってしまうのか?問題。

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こんにちは。ライターの高木沙織です。

趣味―。それは、日常生活におけるさまざまな“やらなくては”とは違い、自ら“やりたい!”と選択した事柄…だと思うんです。そこには、自発性、すなわち意志があり、情熱をどっぷり注げる事だったりもして。

例えば、「趣味のために、毎日のあれこれを頑張れる」と励みになることもあれば、ストレス・不安の解消、脳の活性化、日々の充実感を高めるなど、世知辛い世の中を生きていくうえで、趣味が支えになってくれるシーンは少なくないですよね。

そこで、改めて趣味の意味を調べてみると、「仕事・職業としてでなく、個人が楽しみにしている事柄」と出てくるように、趣味と仕事は別物として考えるのが一般的なようです。では、趣味で習っていたヨガが、インストラクターとして仕事になったら? それはもう、趣味ではなくなってしまうのか? これは、私個人の意見ですが…答えはYes!

第18回『発酵適齢期』、今回のテーマは“趣味と仕事”です。

趣味と仕事は別物? それとも?

「趣味が高じて仕事になった」―と聞くと、好きなことが仕事になるなんて最高じゃない?と思うかもしれません。仮に1日8時間働くとして、1ヶ月20日で計算すると、毎月160時間も好きなことに費やせるうえに、報酬も得られちゃう。

もちろん最初のうちは、「好きなことだから、バリバリ頑張れる!」でしょう。ところが、私の場合。しばらくすると、「好きなんだから、限界を突破しても頑張ることが当たり前。もっともっと追求しなくては…」に変わっていきます。これまでは、フワフワ・ほわほわしていた純粋な「好き」「楽しい事」が、人様に提供する事に変われば、当然ながら責任、義務、努力、そこから苦しみが生まれることだってある。

発酵適齢期_18
Photo by Saori Takagi

そもそも、趣味の条件が仕事以外の事に限られるのなら、趣味が仕事になった時点でそれはもう趣味ではなく、また、楽しみにしている事柄という定義からも次第に離れていくということはすなわち―。自分のためのヨガをしているときや、ほかのインストラクターさんのレッスンを受けているときでさえ、頭の中は(次のレッスンでは、これをやろう)と仕事脳に切り替わっています。

だからといって、スパッと割り切れるのかといったら(ああ、これが趣味との決別であって、れっきとした仕事として昇華されたんだな)と気づくのには、ハッキリした境界線があるわけではなく、ある日、薄ぼんやりとなんだなと思うんです。

そんなこんなで、ヨガが趣味でなくなってからもうすぐ7年。これといって新しい趣味が見つからないまま過ごしてきて思うのは、「趣味がなくて困った、どうしよう」なんてシーンはそうそうなくて、それなりに楽しみを見つけてここまできたということ。趣味に没頭する高揚感も、趣味がなくても穏やかに過ごす日々も、どちらも同じくらいに尊い。でも、もし次に趣味を見つけるのなら、仕事にならない事・物がいい。そう考えると、趣味のハードルがグンと上がってしまいます。

それが、今年の8月ついに―。

7年越しに見つけた、仕事にならない趣味とは?

長いあいだ、趣味という趣味が見つからないままだった私が今ハマりにハマっているのは、ボルダリングです。

発酵適齢期_18
Photo by Saori Takagi

ボルダリングといったら、3~5メートルの壁を専用のシューズと滑り止めのチョークだけを使って登るロッククライミングの一種で、これがまあハード。聞くと、有酸素運動+無酸素運動が組み合わさった運動なんだそう。点在するホールド(手でつかんだり、足を乗せたりする石)を頼りに壁を登るには、腕や肩まわり、お腹、背中、さらには脚と広い範囲の筋肉・バランス力・思考力も使います。

それなのに、なぜ挑戦しようと思ったのか。理由は、バランスよく全身の筋肉を鍛えることができそうなうえに、体を動かすといっても、ヨガとはまったくの別物。仕事とは切り離された世界で、集中して取り組めそう!だから。

こうして週に1回、30~40分ほど登ってみることに。はじめは初級コースのスタート~ゴールを目指して登っていき、完登(落下せずに登りきること)すると、どんどんレベルアップ。ボルダリングには級があって、これをクリアしたら次はこれ!といった具合に、さながらロールプレイングゲームのレベルアップを自分の身をもって体感しているようなハイな気分になれちゃう。

日常生活ではなかなか得難い、達成感と充実感で満たされるとでも言うのでしょうか。…と、それらしいことを綴りましたが、この原稿を書いている10月末は、まだボルダリングを始めて2ヶ月半といったところ。しかし、成長記録として録画してもらっている動画を見ると、自分の体にある変化が起こっていることに気がつきます。

登っている最中の肩と背中が、ゴリラモード! 自己分析の結果、脚の力をうまく使えていない代わりに、腕や背中を中心に上半身の力だけで登っているようです。だって、落下するのが怖いんだもん…。だけど、ウエストにかけてはシュッとしてきたし、そんなに悪くない。三角筋モリモリな自分の姿に、見事な逆三角形ボディを誇るゴリラたちの凛々しい姿を重ねます。

そういえば、ゴリラって植物食を中心とした雑食なんだとか。それなのに筋骨隆々なのは、アミノ酸生成がうまく、筋肉がつきやすいからだそう。目の前にそびえる壁、壁、壁…をヒーヒー言いながら、ときには手の皮がずる剥けになって登り、ようやくこの体である私は、ゴリラたちに少しばかり嫉妬の気持ちを覚えました。

ですが、羨むばかりではありません。世のゴリラの9割近くを占めるある種においては、血液型がB型しかないというじゃないですか。ちなみに両親がB型の私は、いわずもがなB型のサラブレッド(兄もB型)。途端に親近感が湧いてきます。

スポーツクライミングがオリンピック正式種目となったのは、2020年。ボルダリング界もさぞかし湧いたことでしょう。将来のオリンピック選手を目指して、ボルダリングを始めたお子さんたちもいると耳にします。そんな中、私の憧れは、ゴリラ界のスーパースター・イケメンゴリラのシャバーニ氏(愛知県名古屋市の動植物園で暮らしている)。あの麗しい流し目と、素敵なボディにトキメキながら、仕事にならない趣味に勤しむのでした。

バチッとハマる趣味が見つかること自体が稀なのだから、そこにレールを敷くなんてナンセンス! 何に・誰に憧れたっていいし、思い切り楽しんでなんぼでしょう。だって、趣味ってそういうものだから。

ではまた、19回目で。

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高木沙織

高木沙織

ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。産前産後ヨガインストラクター資格、Core Power Yoga CPY®、筋膜リリースヨガインストラクター資格を保有。



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