ふとした瞬間の顔問題…「表情管理」で大切なのは、わざとらしくならないこと【連載 #発酵適齢期】
32回目の『発酵適齢期』、テーマは「表情管理」です。
こんにちは。ライターの高木沙織です。
4時起き生活も4年目に突入すると、アラームが鳴る前に勝手に目が覚めます。早起きが習慣として根づいたのか、はたまた体内時計の加齢変化によるものなのかはさておき、眠気覚ましの歯磨きをし、メールチェックのためにPCデスクの前に移動するのがいつもの流れです。ある日、ひと通りの作業を終えてSNSを開くと、たどり着いたのは某ガールズグループのリール投稿でした。
彼女たちが繰り広げる激しいダンスが格好いいのはもちろんのこと、どの瞬間を切り取ってもお顔が素晴らしく美しい。それを見た私は10年ぶりくらいに「惚れてまうやろー!(わからない人はWエンジン・チャンカワイさんで検索を)」と叫ぶと同時にすっかり覚醒すると、次の瞬間には(この子、誰?)と情報収集を開始。投稿のコメント欄に目を通すと、「〇〇ちゃんの表情管理、完璧すぎ!」なんて言葉がつらつらと並んでいるんですよね。表情…管理…? そんな日本語あったっけ?
32回目の『発酵適齢期』、今回は「表情管理」について。
「管理」だらけの世の中、ついに表情まで…
体調管理や体型管理、衛生管理、安全管理、日程管理—。パッと思い浮かべただけでも、「〇〇管理」という四文字の言葉はたくさん出てきます。
そこで管理の意味を改めて調べてみると、「ある規準などから外れないよう、全体を統制すること」だそう。「そのものの働きが十分に保てるように、全体にわたって気を配ること」とも書かれていました。これを表情管理に当てはめると、「魅力的な表情が崩れないようにキープする」とか「そのシーンに相応しい表情を作る」とか、そんなところでしょうか。
そもそもこの「表情管理」というのは、KPOPファンのあいだでよく使われる言葉なんだって。ステージ映えを意識したパフォーマンス中の表情づくりのことを指すというので、納得です。
じゃあ、それの何がすごいのか―。
写真を撮られるときはピタッと静止して決め顔をつくりやすい一方で、動いている…それも激しくダンスしている最中にそこだけ切り取られてもベストな表情をつくるというのは、めちゃくちゃ高度な技だと思うんですよ。本来なら高確率で半目とか、鼻の穴が全開とか、人に見られたくない顔になりますからね。
対する昭和生まれの私ができる唯一の表情管理といったら、せいぜい人前で不機嫌そうに見せないことくらい。何だったら「表情管理不行き届き」という言葉のほうがしっくりきます。ちなみにここ最近、自分の表情管理の至らなさに愕然としたのはこんなシーンです。
「表情管理不行き届き」もそんなに悪くない
1日のほとんどの時間、自宅で書き物をして過ごす私の場合—。表情を意識する時間と意識しない時間、どちらが長いかといったら圧倒的に後者です。表情というのは意識しないとどんどん乏しくなるばかりか、頭のなかで思い描く自分の表情とはかけ離れたものになるから困ったもの。
ではどんなときに自分の表情管理の至らなさを痛感したのかというと、趣味のボルダリングの最中です。
壁を登っているところを動画におさめてもらうことがよくあるのだけれど、顔をズームしてみると眉尻・目尻が垂れ下がって泣きそう。ポカンと口が半開き、奥歯をグッと噛みしめて苦悶している…この3パターンの表情をしていました。こんな表情をしているとはつゆ知らず…。まあパフォーマンスを披露しているわけではないし、基本的には壁を向いているから誰かにまじまじと顔を見られるわけでもないし、別にいいんです…けどね。
あとは、ヨガのレッスンをしているときもなかなかのものです。インストラクターはだいたい鏡に背を向けてクラスを進行していくと思うのだけれど、ふとした瞬間に鏡の中の自分と目が合うことがあります。顔を上に向けているときは引きつっていたり、下に向けているときはほほの脂肪が垂れ下がっていたりしてギョッとする。
そんなだから、「表情管理のやり方」なるネット記事に指先が滑りかけもするわけです。けれど、ボルダリングやヨガの最中に決め顔をするのもどうでしょう。ヨガに関していえば、1つ1つポーズを取るごとにキリッと顔をつくる自分を想像しただけで、横っ面を引っ叩きたくなって即断念。大喜利「こんなインストラクターは嫌だ」のネタになりそう。
それに表情管理が行き届いていないくらいのほうが、人間味があって愛おしかったりもします。例えば、事あるごとに表情管理が完璧な恋人がとなりにいたら気が休まりません。待ち合わせ場所に走ってくるときやご飯を食べるとき、映画を観るときなど、いっつも表情が完璧だったら…ちょっと嫌だなあ。完璧な表情からは相手の本心も量れません。だからといって気を緩めると、比例するようにいろいろなパーツが緩んでしまうのがアラフォーです。
いうなれば、マシンを使ってがんがんトレーニングをするよりも、ヨガで骨盤底筋をキュッと引き締めるくらいの感覚がちょうどいい。パフォーマーではない私たちに必要な表情管理は、適度に力が抜けたわざとらしくなさが大切なのかも。
しかしながら、体の筋肉だけでなく、顔の筋肉にも鞭を打たなくてはいけないというのは楽なことではありません。それともうひとつ、KPOPといったらKARAや少女時代から更新されていない私にとって耳新しい表情管理という言葉もさることながら、人気のグループ名・メンバーを覚えるのも楽ではないようです。
朝5時―。気になるグループのメンバーについてスマホで検索し終え、ふと顔を上げた瞬間…鏡には表情管理の「ひょ」の字にもかすらない自分が映っていました。
ではまた、33回目で。
AUTHOR
高木沙織
ヨガインストラクター。「美」と「健康」には密接な関係があることから、インナービューティー・アウタービューティーの両方からアプローチ。ヨガインストラクターとしては、骨盤ヨガや産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、体幹トレーニングに特化したクラスなどボディメイクをサポートし、野菜や果物、雑穀に関する資格も複数所有。“スーパーフード”においては難関のスーパーフードエキスパートの資格を持つ。ボディメイクや食に関する記事執筆・イベントをおこない、多角的なサポートを得意とする。2018~2019年にはヨガの2大イベントである『yoga fest』『YOGA JAPAN』でのクラスも担当。
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