「病気の原因は思い込み」?SNSでのバズり投稿に、「それは絶対に違う」と私は何度でも伝えたい

「病気の原因は思い込み」?SNSでのバズり投稿に、「それは絶対に違う」と私は何度でも伝えたい
Naoki Kanuka(2iD)
宮井典子
宮井典子
2025-07-16

ピラティスインストラクターの宮井典子さんは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者としてメディアで啓蒙発信しながら、心地よい暮らしと働き方を模索しています。そんな宮井さんによるエッセイ連載『"生きる"を綴る』です。

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「病気になる人のほとんどが『病気でいたい』という思い込みを潜在的に持っている」とか、「思い込みを手放すと病気がなくなる」とか、こんな言葉が、SNSで大量の「いいね」を集めていることに強い違和感を覚えます。

一見、優しそうに聞こえるこの類いの発言は、たしかに、前向きな言葉に聞こえるかもしれない。

でもその根底には、「病気は自分の心の弱さのせい」という、あまりにも乱暴で危険なメッセージが潜んでいるように思えてなりません。

病気になったのはあなたの責任、つまりは“自己責任”という言葉が、無意識のうちに刷り込まれてしまうようで怖いのです。

そしてもっと深刻なのは、それを読んだ当事者の中には、自分の環境と症状に照らし合わせてしまう現実があって、「やっぱりそうかな?」「私もそうだったのかも」なんて納得する人さえいます。

でも、私ははっきり言いたい。

違う。絶対に違う。

確かに、メンタルと身体のつながりは無視できません。感情が身体に影響を与えることは事実です。でもそれは、決して「思い込みだけで病気になる」とか「気持ちを変えれば治る」といった極端な話ではありません。

そもそも問題なのは、それらの言葉を発信している人たちの多くが、医師でもなく、医療従事者ではないということ。

医学的な根拠もなければ、科学的な根拠もない、自分の“体験談”をあたかも治癒可能のように表現してしまうことや万人に当てはまる真実のように語ってしまうことがこわいことなのです。

それでも人は、「治りたい」と切実に願うときほど、根拠のない言葉にもすがってしまう。これは、私自身も経験したことです。

ときには、魔法のように見える言葉のほうが、どんなに正しい医療よりも、心を強く惹きつけてくることがあるでしょう。

医療者でも研究者でもないのに、発信力のある人の言葉に惹かれてしまうのは、フォロワーの数や“バズっている”という事実が、まるで信頼の証のように錯覚されてしまうからかもしれません。

でも、人気があることや影響力があることと、正しいことはまったく別ものです。

数字に惑わされず、自分で選ぶ目を育てていくことが、健康を守る第一歩になると私は思います。

この手のメッセージの裏には、発信者のビジネス的な目的があることも少なくありません。

あらかじめ準備された“答え”に導くために、不安をあえて煽る。

そんな手法が使われることもあります。不安や不調に寄り添っているように見せかけながら、実は、自分の商品やサービスの宣伝になっている。そんなケースもあるのです。

もちろん、すべてがそうだとは言いません。

でも、だからこそ、わたしたちには、情報を見抜き、選び取る力が必要なのです。

病気になるのは、決して思考がネガティブだからではありません。

「病気は思い込み」なんて信じないでほしい。

SNSの中には、"真実のように見える言葉"がたくさん溢れています。でも、その多くは“その人の世界”の話に過ぎず、あなたにとっての正解とは限りません。  

根拠のない言葉に、なぜ惹かれてしまうのか

「薬に頼らず、自然治癒力で治しましょう」
「病気になるのは、波動が下がっているから」

こうした言葉に、なぜ私たちは惹かれてしまうのでしょうか。

理由は簡単。そこに“希望”のようなものを感じ取れるからです。

そうした投稿は、不安や迷いにつけこむように、日常にすっと入り込んできます。

心が弱っているときほど、人はその言葉にすがりたくなる。

「治したい」「治りたい」そう強く願っているからこそです。

だからこそ伝えたい。

その言葉の奥にある根拠は、本当に確かなものなのか?

その選択は、将来の自分や家族を守れるのか?

自分の思考を変えれば病気が治るなら、それほど楽なことはありません。

でも現実は、そんなに単純ではないのです。

根拠のない言葉を信じてしまうことで、適切な医療にたどりつけなかったり、必要な治療のタイミングを逃したりする。そんなケースが、実際にあるということをどうか忘れないでください。

だからこそ、わたしたちには「情報を見極める力」、つまりヘルスリテラシーが必要です。

誰の言葉を信じるのか。

その情報は、自分や家族の健康を守る助けになるのか。何をもって大切な情報とするのか。

からだに関わる選択だからこそ、「いいね」や「共感」だけで決めるのではなく、「それって本当?」と立ち止まる視点を持ち続けたい。

無駄なお金や時間を奪われないために。そして、自分や家族、大切な人の命を守るために。

ヘルスリテラシーは、自分自身を守る力。大切な人を守る力。

わたしたちにとって最大の防御力。

何を信じ、どう選ぶかが、これからの私たちの未来をつくっていきます。

#ヘルスリテラシーを高めよう

SNSが当たり前の今だからこそ、わたしたちには"選ぶ力"が必要なのです。

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