年齢は「生きてきた証」。私は、老いることをポジティブに捉えたい|#"生きる"を綴る

 年齢は「生きてきた証」。私は、老いることをポジティブに捉えたい|#"生きる"を綴る
Naoki Kanuka(2iD)
宮井典子
宮井典子
2023-05-31

ピラティスインストラクターの宮井典子さんは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者としてメディアで啓蒙発信しながら、心地よい暮らしと働き方を模索しています。そんな宮井さんによるエッセイ連載『"生きる"を綴る』、今回は、老いについて今思うこと。

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40代後半ともなると、持病がなくても否応なしに体の変化には敏感になるもの。いつだったかママ友とお茶しながら「なんか最近、何かしら不調を感じるようになったし、無理が効かなくなったよね」。これにはお互い完全同意。

それは「ある日突然」と見せかけて、実際にはじわじわと押し寄せていたのだろうけれど、年齢を意識せざるを得ないことが幾つも重なるって、「ああ、やっぱり」を実感する……。

「これが老いるってことだよね」なんて笑いあったのだけど、一般的に老いは決して肯定的ではなく、どちらかと言えばネガティブな印象の言葉です。だからこそ、心許し構築された人間関係の中でしか使わないワードでもあるわけですが、なぜ、私たちは、年を重ねることを肯定的に捉えられないのでしょうか?

まもなく50代に突入する年齢で自ら年齢を口にしたものなら自虐ネタとして扱われ、大概「そんなことないですよ……。まだまだお若いですよ……」と妙な空気を呼び込み、その場に居合わせた人に、これまた妙な気を遣わせて会話が終わるという結末。

「まだまだお若いですよ……」を期待したわけではなく、事実として話したまでのことなのに、なぜかそこには人それぞれの感情が見え隠れしているように思います。

年齢は「生きてきた証」

わたしにとって年齢は、自虐ネタでも何でもなくて『生きてきた証』に過ぎないわけで、よくナンバリングともレベルとも言われているように【人生を歩んできた年数】であり、【時を刻んできた数字】というだけのこと。そう思うと、年を重ねることは必ずしもマイナスな要素ばかりでもないのかなと思っています。

話を戻しましょう。何かしら不調を感じたならば不調を改善するために体を動かすとか、歩くとか始めてみればいいわけで、年齢に応じた対策が必要なのは当然のことです。ただ無理が効かなくなったことについては、無理が効かなくなったからといってダメなことはひとつもないよねって思うんです。

ここで言う「無理が効かない」というのは、おそらく自分の中ですこぶる体調が良かったときやバリバリ動けていたとき、つまりは今よりは若いときと比べていると思うのですが、そもそも若いときと比べる必要があるのかどうか。今の体力で出来ることを全うすれば、それで十分ではないでしょうか。

友人が『体力も時間も限られてるからこそ、付き合う人も時間の使い方も考えるようになったよ』と言っていたことがあり、まさにこれこそ年を重ねたからこそ気づけた自分らしい生き方だと思います。

若いときの全力疾走は振り返っても楽しかったけれど、あの頃の眩しさは今のわたしには重すぎる。

人生100年時代に必要なのは、年齢に合わせた生き方や自分自身が心地よいと思える場所や時間や人付き合いで、その中で自分の役割が必然と見えてくるように思います。

最近、そんなことを考えたり、人と話してたら、とても素敵な記事に出会いました。

老いることが怖いのはなぜ?格闘技ドクターが考える、「高齢」から「好例」を楽しむための意識改革

二重作先生の『若さに価値があるならば、年を重ねることにも価値があるんじゃないか。』という問いかけは、若いときにしか味わえない経験も、年を重ねたからこそ味わえる経験も宝であり糧となるはずで、この言葉はある一定の年齢に達した人の励みになり、勇気をもたらす言葉。間違いなくわたしには突き刺さる言葉です。

とはいえ、実社会では年齢で区切られることも事実であり、年を重ねることをポジティブに捉えない考え方も存在してはいるけれど、命ある限り全ての人に価値があると思いたいものです。

季節は移ろい、この連載「"生きる"を綴る」を書き始めてから1年を迎えました。

エッセイを読んだ感想を送ってくださる言葉ひとつひとつに、わたし自身が励まされ、勇気づけられ、今ここにいます。

「#"生きる"を綴る」を通して出会ってくださったみなさま、本当にありがとうございました。

2年目のこれからも日常のつぶやきを綴っていきますのでどうぞよろしくお願いします。

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AUTHOR

宮井典子

宮井典子

SLE Activistとして活動。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。46歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、誰もが生きやすい社会を目指してSNSを中心に当事者の声を発信。



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