動けることは"当たり前"じゃない|世界ループスデーに寄せて【連載・宮井典子の"生きる"を綴る】

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動けることは"当たり前"じゃない|世界ループスデーに寄せて【連載・宮井典子の"生きる"を綴る】

宮井典子
宮井典子
2022-05-10

ピラティスインストラクターであり、ヘアターバンデザイナーの宮井典子さん。全身性エリテマトーデス(SLE)患者としてメディアで啓蒙発信しながら、心地よい暮らしと働き方を模索しています。そんな宮井さんによるエッセイ連載『"生きる"を綴る』がスタート!

はじめまして。

この度、ヨガジャーナルオンラインでエッセイを書かせていただきます、宮井典子です。

自己紹介については、昨年インタビューしていただいた【人と違う、わたしを生きる】をご覧ください。

つたない文ではありますが、自分の言葉で想いを込めてお届けしたいと思いますのでどうぞ宜しくお願いします。

* * *

さて、わたしとヨガジャーナルオンラインさんとの出会いは昨年の秋。

ふっと背中を押されて、想いのままメッセージを送った直後、思いもよらないメッセージをいただいたのがことの始まり。

全身に電気が走る感覚。

こんな感覚はホントに久しぶり。

そんな衝撃的な出会いは、昨年始まった新しい連載【人と違う、わたしを生きる】に繋がり、そして今回のコラムに繋がり、改めて人との出会いと縁の素晴らしさに心ときめいてる今日この頃です。

* * *

今回は、連載の初回。

記念すべき第一回目。

テーマはどうしよう?

せっかくだからカッコいい方がいいのかな。素敵な方がいいのかな。なんて、色々考えてはみたものの、どれもしっくりこなかった。

等身大のありのままを表現するにはと自分自身に問いかけたときにパッと浮かんだのは、カッコいいでもない、素敵でもない、ちょっと泥くさい、でも人生でもっとも大切な『生きる』という言葉でした。

というのも、昨年ヨガジャーナルオンラインのインタビューを受けた2日後の11月6日土曜日の朝、いつも通り目が覚めて起き上がろうとした瞬間、自分の身体に異変を感じました。

「ん?????」

頭の中では数え切れないハテナマーク。

「起き上がれない……」

どうしたって起き上がれない。

体勢を変えることすら出来ない。

寝る直前まではいつもと変わらなかったのに、朝起きたら突然に。

訳がわからないまま、家族を呼び、手を借りてなんとか起き上がったものの全身に力がはいらない。

歩けない。

ここからわたしの記憶は途切れ途切れとなり、生活の大半はベッドの上。

徐々に体力と気力共に落ちていき、年末にはご飯どころかこれまで食べられていたヨーグルトやプリンも食べられないところまで衰弱していったのです。そして年はじめに緊急入院、1カ月の入院生活を経て現在に至るというわけです。

この体験が、これまで以上に『生きる』ことについて考えるきっかけになったのは言うまでもありません。

そうなんです。

わたしは初めて、ほんの少しあちらの世界を覗いたというか、片足を突っ込んだというか、自分の「死」というものに触れたのです。

それからしばらく経って退院後、改めてあちらの世界を覗いた感覚を思い出したとき、人生に必要なものはそんなに多くないんだなと思ったのです。

時間は限りあるもの。

人生もそう。

そう思ったとき、何を残して何を手放すのか。

わたしの人生に必要なモノはなんなのか。

ふわっと浮かんだのは家族、友達、好きなものに囲まれた生活。

肩書きや学歴、友人やいいねの数ではなく、ただただシンプルに、いかに楽しく生きられるか。

当たり前に呼吸をして、当たり前にご飯を食べて、当たり前のように家族と過ごして好きな仕事をして、病気を発症してからも度々立ち止まって考えることはあったけど、これまでと『死』に触れた今では全く違う。

どれもこれも当たり前じゃないのです。

わたしは今、薬の副作用の影響で髪と眉とまつ毛の抜け毛や脱毛、ムーンフェイス、バッファロー肩、中心性肥満、皮膚のくすみやシミといった見た目の変化と向き合っています。

これまでピラティス講師という、ある意味で「表に出る仕事」をしていたこともあって、変わっていく姿に『見苦しい、醜い』という自分自身に抱く嫌悪感があったことも事実です。ですが、「命」と「副作用による見た目の変化」を天秤にかけたとき、わたしは考えるまでもなく命を取るでしょう。

恐らくこの体験前のわたしならば、命も大事だけど見た目も大事と思っていたはずです。

でも、今のわたしはそうじゃない。

見た目の変化は悲しくてツライけれど、生きる上で必要なものは揃っていて、あとは自分次第。

ありのままを受け入れることは出来なくてもいい、頑張ってポジティブにならなくてもいいけれど、せっかく毎日過ごすならば悲しいより楽しいと思える選択をしていきたい。

そのために何を選ぶのか。

何をするのか。

わたしは、それまで頑なに拒んでいたパンツのサイズをひとつ上げてみました。

そこから再びおしゃれをする楽しみが増え、生活にハリが出来たのです。

人生は限りあるものです。そして、人生に必要なものはそんなに多くない。

それならば、楽しいと思える選択をしながら、これからも『生きる』について、もっと考えていきたいと思ってます。

* * *

さて、最後は少しだけ、私が罹患している全身性エリテマトーデス(SLE)についてお話しさせてください。

5月10日は全身性エリテマトーデス(SLE)を啓発する世界ループスデー。

SLEの認知向上や患者の医療サービスの向上、疾患の原因と治療法の研究ならびに早期診断と治療を目的としています。

SLEの患者数は特定疾患受給者6万人、未受診や確定診断に至らない数を加えると10万人を超えるとも言われています。

全身性というだけあって症状は全身に渡り、一人一人症状が異なり、併発するその他の病気も様々であることもあまり知られていません。

またSLEの症状に加えて、様々な副作用に悩み苦しむ患者達の中には誤解と偏見に心を痛めている人も少なくありません。

数値だけでは表しきれない体の痛みや辛さ、人によっては心の痛みや辛さを抱えています。

この機会に一人でも多くの方にSLEのこと、副作用のこと、患者の取り巻く環境や社会的背景などを知ってもらえたら。

そして、近い将来、原因が解明され治療方法が確立され、完治する日がくることを心から願ってメッセージを発信します。

#女性に笑顔を

#子ども達に夢を

#未来に希望を

* * *

『生きる』についてわたしの視点で綴るエッセイ、これからもどうぞお付き合いください!

AUTHOR

宮井典子

宮井典子

ヘアターバンデザイナー、ピラティスインストラクター。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。45歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、病気や薬の副作用による髪の悩みに特化したヘアターバンをデザイン、販売している。

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