「"普通"じゃなくてもいい。そこに自分の意志さえあれば」宮井典子さんインタビュー【後編】

Noriko Miyai

「"普通"じゃなくてもいい。そこに自分の意志さえあれば」宮井典子さんインタビュー【後編】

誰かと同じでいることに安心感を得たり、“自分と違う誰か”に優しさが持てなかったり。誰もがなんとなく生きづらさを感じている現代社会で、自分らしく生きるには? インタビュー連載「人と違う、私を生きる」では、自分自身を信じ認めて自分らしく人生を歩んでいる方々にお話を伺います。今回は、ヘアターバンデザイナー・宮井典子さんへのインタビュー後編です。

――ここで改めて、宮井さんの病気について教えていただけますか。

宮井さん:膠原病のひとつでもある全身性エリテマトーデス、通称SLEというものと、シェーグレン症候群という二つの病気を治療しています。とはいえ、どれがどの症状かと分かりにくくなってきていて、日々の倦怠感、筋肉痛、手指のこわばり、末端が白くなる症状。そういったものがベースにあって、それが大きく出る日と抑えられる日、1年を通しても活動性が高くなる時期というのがあります。

SLEというのは、女性ホルモンが関係していると言われているので私のように更年期が始まっている40~50代の女性はホルモンの減少で症状が強く出るときもあって。苦しんでいる方が多いと聞きます。

また、私はシェーグレン症候群の症状でドライマウス、ドライアイの症状が顕著に出ています。皆さん、嚥下障害と聞くとお年寄りのイメージがあるかもしれませんが、私たちは唾液が出にくいので、そういった嚥下の問題も抱えていて、食べ物によっては飲みこみにくいなど、日常的に困ることもいくつかあります。

そういった病気の症状以外にも、投薬治療の副作用として脱毛やムーンフェイス、バッファロー肩、中心性肥満、体幹の部分に脂肪が付きやすいなどがありますね。

――日々、そういった症状と向き合っていくというのは非常に大変……と、そういった言葉ひとつで片付けていいのかと思ったりもします。

宮井さん:病歴や病気の種類もありますし、患者さんそれぞれの価値観もあると思うんですけど、例えばもっと手厚くサポートしてほしい、助けてほしいという方もいますし。でも、私の場合はあまり過剰にならなくてもいいよ、という感じですね。必要があれば言います、というスタンスです。

優しさや相手を想うあまり手を貸したくなるかもしれませんが、本人が出来ることすら奪うというのは生きる意欲を奪うこと。そういった意味では、幸いなことに私の家族は夫含め主体性を大事にしてくれています。

理解してもらっているという仰々しい言葉は当てはまらないくらい、全然特別扱いしないというか。家族的にも「支えてやってるぜ」という感覚ではないと思います。私の気質を大事にしてくれているので、たまたま病気になった、という感じで対応してくれています。

宮井典子さん
宮井典子さん

あえて言うなら「普通じゃなくてもいい」

――今、生きづらさを感じている人が多いと言われています。特に「誰かと同じ。普通じゃないと生きづらい」と思う人も少なくありません。そういった方に宮井さんが声をかけるとしたら、どんな言葉を届けたいと思いますか。

宮井さん:難しいですよね。普通って何でしょうね。私が10代、20代のころって女性は女性らしく、かわいらしくという時代だったし、美しさの定義が細ければ細いほどいいという時代で、無茶なダイエットも流行っていたし。今よりも情報が偏ってきた時代を生きてきたので、今、多様性と言われていろいろなことが許されて、受け入れられている時代のなかで何が普通なんだろうと思い始めてきています。

普通じゃなくてもいい。あえて言うなら、そういうことなのかな。そもそも普通っていう言葉がこの時代に当てはまらないのかなと思うんです。個の時代。そこに自分の意志があればいいのかなと。

――他の人と比べるからこそ、普通を望んでしまうのかなという気もしますね。

宮井さん:そうですね。今の自分がいいと思ったものを信じて進むしかないんですよね。普通に対してもそうですけど、何か答えを見つけるようとすると誰かとの比較になっちゃったりする。勉強に答えはあっても人生に答えなんてないのに。私も答えを知っていたら、こんなに波乱万丈の人生になっていなかったな(笑)。

私自身、生きづらさを抱えて幼少期を過ごしてきましたけど、今、病気で困ることはあっても生きづらさはないんです。それは、これまでの経験から今がいいと思えるからだと思うんですけどね。これがいいと思って進むだけじゃダメなのかな。

――ジェンダーロールといった“らしさ”にとらわれて、生きづらさを感じる方も少なくないですよね。特に30代以降には、その呪縛が強いかもしれません。

宮井さん:“らしさ”の押し付けがすごく強かったですよね。今の若い方は、そういうところじゃない自己表現をうまく発信している方が多いから、「自由でいいな」と思います。それでいいんじゃないかなって。他人と比べるといいことないですし。

コロナ禍以降、多様性という言葉も広く聞くようになりましたけど、多様性ってなんだろうと知れば知るほど、言葉の本質的な意味が分からなくなってきたなと思うことがあります。言葉だけが独り歩きしていたり、自分だけの解釈で発信してしまったり。

個の時代といっても、ワガママに生きることではないと思いますし、自分と相手は違う人間である。そういったことを前提にして、人と調和すること。自分も相手も、存在自体を認めることが出来たらいいのかなと思います。

自分が今正しいと思うことを発信したい

――宮井さん自身、発信することに怖さや不安を感じることはありませんか。

宮井さん:人の目を気にしていると発信することすら怖くなってしまうので、今の私が伝えたいことや正しいと思うことを発信する。そこだけはブレないようにしています。といっても、数年後にあのときはこう考えていたけど、時代の変化もあって考えが変わりましたということもあると思うので、そういったときはちゃんとそれを発信します。多様性ってそういう意味もあるのかなと思うんです。自分の変化も、相手の変化も受け入れる。

病気を発信するようになってからは、やっぱり賛否両論あるんですよね。でも、そういう考え方もあるんだなって。私、意外とエゴサーチするタイプなんですよ。自分が正しいと思って発信しているけど、正しいの方向性や、ほかにどんな価値観があるのか。自再確認ですよね。でも、それを見てネガティブな気持ちになったり、落ち込んだりはないですね。そういう考え方もあるんだなぁって思います。あまりおすすめはしないですけど(笑)。

でも、根底にあるのは、誰かの役に立ちたいという気持ち。自分の考えや経験を発信することで、同じような思いをする人が少なくなればいいなと思っています。

――ヘアターバンの企画・開発もそういった思いから始めたことでしょうか。

宮井さん:ヘアターバンはまたちょっと違っていて、そもそも私自身が投薬治療の副作用で髪が薄くなってしまって。本当に必要で、困っていたんですよね。自分のために購入したり、アイテムを探していたりしたときに、お友だちが「ヘアターバンなら作れるよ、教えてあげる」と声をかけてくれて、まずは自分のために作り始めました。

コロナ禍前だったので、会って教えてもらっていたんですけど「商品にしないの?」と彼女に言われたんですよね。「お裁縫が苦手なら典子さんが作らなくても、他の人に作ってもらえばいいんじゃない?」という彼女の一言で扉がバーンと開いて動きだしたという感じです。

同じように悩んでる人が喜んでくれるかなと思ったのはもちろんですけど、コロナ禍前だったのでマルシェで売る際に同じ病気の人にお手伝いしてもらいたいという構想があって。外に出ること、働くきっかけになれればいいなと。それに加えて、地域の子育て中のお母さんにも協力してもらおうと思いました。なかなか外に働きに出られないというお母さんに縫ってもらうことで、自分の技術が社会の役に立っているんだというのが実感してもらえたらいいなと思ったんですね。

ヘアターバンを通して、闘病中の人や子育て中のお母さん方が繋がって、社会貢献や女性支援になったらいいなというのがイメージできたので、商品化に踏み切りました。スタートする動機はこれまでとはちょっと違いましたけど、人の役に立ちたいというところは同じですね。

今の自分ができる自分らしい仕事を見つけたい

――今回、お話をお伺いしていて宮井さんは、周りの方のいい言葉をスッと受け入れる素直さがある方だなと思いました。「やってみれば?」と言われても「無理だよ」「どうせできないよ」という人も少なくないですよね。

宮井さん:素直なんです、私(笑)。何事もやる前から「無理に決まってる」というのが子どものときの自分だったので、そうならないように無意識で選択しているのかなと思いますね。いい言葉を受け取るときって、ビビッとくるんですよね。衝撃が走ります。そういう感覚が少しでも受け取れたら、ひとまずやってみる。ダメならそこでやめればいいだけなので、感覚を大事に行動を起こすようにしています。

――宮井さんの「これから」を教えてください。

宮井さん:ヘアターバンについては、もう少しオシャレに特化したいなと思っていて、今リニューアル中です。当事者のひとりとしての声を反映させた日用品やウエア等の商品開発もしてみたいですし、発信する活動にも力を入れたいと思っています。正直なところ働きたい気力があっても体力的にはこれ以上無理だなと思う部分もあり、日々葛藤しながら模索しています。無理をしない新しい働き方を見つけられたらいいですね。

今、すごく収入が欲しいというわけじゃないんです。現実的に発症前のように収入を得ることは難しい。私は、自分で自分を認めてあげられる軸として、ある程度の収入が自分の自己肯定感を保ってくれているのかなと。今の体力、今の私で収入を得られる方法。私らしい仕事を生み出していきたいです。

自分の体力だとここまでかなと現実にぶつかることもあります。そういうときはやっぱり落ち込みますけど「ならば!違う方法を!」って。他の人がしていないことで自分なりのやり方を見つけたいです。「病気だからできない」って誰が決めるの?…それって、決めているのは自分だったりしますよね。だから私は、できることをひとつずつ実現していきたいです。

Profile:宮井典子さん

宮井典子さん
宮井典子さん

ヘアターバンデザイナー、ピラティスインストラクター。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。45歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、病気や薬の副作用による髪の悩みに特化したヘアターバンをデザイン、販売している。
Twitter:@Noriko_Miyai

取材・文/吉田光枝

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。

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