何もできなくてもいいんだ、ってことをみんなに言いたい|ミュージシャン小山田壮平が思う“自己肯定“

 何もできなくてもいいんだ、ってことをみんなに言いたい|ミュージシャン小山田壮平が思う“自己肯定“
撮影/松橋晶子

著名人や音楽ファンから熱く支持され惜しまれつつ2014年に解散したバンドandymori元ボーカル、小山田壮平インタビュー。 解散後は、ALのギター&ヴォーカルとして始動。自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行ない、2021年1月にはテレビ東京ドラマ25『直ちゃんは小学三年生』のエンディングテーマ「恋はマーブルの海へ」をリリース。9月には秩父で行われる音楽フェス「風CAMP」を主催するなど、小山田壮平が吹き込む新たな風と伝説が始まろうとしている。古くからの友人である臨床心理士・石上が、「自己肯定」や思い描く未来などの心境をインタビュー。心のうちに秘める哲学に触れた。

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何もできなくてもいいんだ、ってことをみんなに言いたい

ーーーヨガジャーナルオンラインでは、心の問題を扱う記事も多いのですが、自己肯定感が低いというキーワードへの反響が大きいんです。自分のことを好きになれないとか、認められない、とか。特にSNSによって他者と比較して自分が劣っていると感じやすい時代なのかなと思います。小山田さんは自己肯定感について、どのように感じていますか?

「自分の音楽でいうと、自分よりギターがうまい人も、歌がうまい人もたくさんいて、人間が意識するのは一部分だから、自分が劣っているところばかり見ると、どんどん自分が惨めになっていく。だから、難しいけれど、比較している自分に気づいたらやめた方がいいと思います。それは自分に対しても言い聞かせることです。」

ーーー自分の自己肯定感は低いと思いますか? それとも高いと思いますか?

「アップダウンはあるけれど、高いんじゃないかな。でも、否定するときはとことん否定してしまう。自己肯定感が高いからライブに人を呼んでいるのかなと思います。」

ーーー(臨床心理士の立場から言うと)そこは関係ないかもしれないです。自己肯定感はありのままの自分を認めることで、存在そのものを認めること。だから自己肯定感が低くても、例えば、自分のなかの音楽の部分だけを認めていたらライブに人を呼べるだろうし、認めてもらいたい心の反動でライブをガンガンやる人もいるだろうし。

「低いからこそ、ガンガン。承認欲求か。なるほどね、そう言われたらそっちな気もする。低いからこそ、認めてもらおうとして。」

マネージャーさん「普通の人よりめちゃくちゃ高いと思う。よく話している中で、ポジティブだなと思う瞬間がたくさんあります。自己肯定感が強いかはわからないけど、こうありたいと言うマインドがあるなと。自発的にポジティブに行動を起こそうとしているのはすごい。」

「マネージャーが言うなら高いのかな?(笑)。まわりをみていると自己肯定感が低いなと思う人が多いです。もっと、自分を認めてあげた方がいいし、自分を好きになってほしいし、卑下する人が目につきますね。色々な経験をしたからとか、音楽活動があるから自分を認められる、という考え方よりも『何もできなくてもいいんだ』ってことをみんなに言いたい。何かをやったから自分を認めるんじゃなくて。すごく良い音楽を作って残すとか、いろんな人に褒められるとか、ちょっと考え方を変えたら、無意味なことでもあるんです。だから、何もしていなくても、とにかくこの状態を認める。自分自身そうしたいし、みんなにもしてほしい。」

小山田壮平
撮影/松橋晶子

自分で、自分は幸せになってはいけないって思い込んでいる人に、そんなことないんだよって言いたい。

ーーー小山田さん自身は、生きづらさを感じることはありますか?

「生きづらいというよりも、いろんなことが起こりますよね。時代というよりは、人間が生きていたら必ず訪れる、病気だったり悲しいこと、苦しいこと。そこに囚われると何もできなくなっちゃう。自分はこんな状況だから幸せを感じちゃいけないんだとブレーキがかかる時があって、でも、自分でブレーキをかけなくていいと思います。楽しいときは思い切り楽しんで、笑いたいときは笑って、泣きたいときは泣いて。そんな風に生きていきたいと思います。自分で、自分は幸せになってはいけないって思い込んでいる人に対しては、そんなことないんだよって言いたい。」

ーーー幸せって何でしょうね。

「幸せっていうとあれだけど、苦しんでなきゃいけないって思っている人もいる。苦しくなくていいし。幸せって何だろう。幸せって全てを総括するような言葉だから難しい。何ですか?」

ーーー聞かれたら困りますね。私は幸せってただそこにあることのような感じはする。何か特別なことをしているわけじゃなくて、ただの生活をただ続けている。フラットな状態に近いのかな。

「それって安心している?」

ーーー安心も伴っている感じがする。安心もありつつ、平坦な感じ。「doing」じゃなくて、ただある「being」のような何でもないこと。ただ家で猫を愛でた。そんな日常の中にある感じがします。

「苦しいわけじゃなくて、悲しいわけでもなくて?」

ーーー悲しいも否定していない感じもあるかな。悲しいがあってもいいじゃないみたいな。ポジティブ疲れという言葉がありますがSNS等で他人のポジティブな部分ばかり切り取られているのを見たり、自分の良いところだけ発信しようとしていると、いつも前向きでいなきゃとか悲しんじゃいけないという気持ちになる人もいるのかなと思います。andymoriの「Sunrise&Sunset」に“悲しみは消えない”という歌詞がありますよね。悲しみは乗り越えたり手放すものではなくて、嬉しいとか楽しいとかと一緒に、ネガティブな感情もそこにいてもいいんだよ、と言われているような気持ちになって。

瞑想でも、安心と同時に不安に気づくという対極を感じる方法があって、不安に蓋をしたりとらわれると、そっちの方に意識がぎゅーっと行っちゃうけど、自分の中にいることを許して安心と同じくらい気づきを向けると、辛かったものも抱えやすくなるように思います。

「強引に蓋をしない…難しい……。でも、すごく納得します。悲しんじゃいけないとかが自己否定につながる。話を聞いていると音楽とヨガは近いと感じます。近いものをやっている人たちだなあって。」

常にゴール。ゴールの連続なんです。

ーーー今後の音楽活動でやってきたいことはありますか?また、目指しているアーティスト像はありますか?

「まずは、9月に開催する『風CAMP』ですね。あとはコロナが明けたら、また旅に出たいです。本当はコロナじゃなければ、中国に行っている予定だったんですよ。アーティスト像は、モデルケースみたいのは設定してないです。」

ーーー風ですね。流れていくままに。

「常にゴール。ゴールの連続なんです。」

ーーー今の見出しにしますよ(笑)。

「ははは(笑)」

小山田壮平(おやまだ・そうへい)
1984年6月17日生まれ、福岡県飯塚市出身のミュージシャン。早稲田大学卒。2007年にロック・バンド、andymoriを結成。高い人気を獲得するも、2014年10月の日本武道館公演をもって解散。翌11月にレーベル〈Sparkling Records〉を設立。2015年にこれまでの長澤知之とのプライヴェート・プロジェクトを発展させたバンド、ALのギター&ヴォーカルとして始動。翌2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行なう。2020年に小山田壮平名義の初ソロ映像作品を経て、8月に初ソロ・アルバム『THE TRAVELING LIFE』をリリース。また、オーガナイザーとして初の野外イベント「風CAMP」が2021年9月18日に開催決定(販売中止、オンライン配信に変更)! チケット先行受付開始中。詳しくは、特設サイトにて。

風キャンプ
風CAMP2021

イベント概要

会場:秩父ミューズパーク 野外音楽ステージ ※販売中止、オンライン配信に変更
チケット:オンライン配信チケット前売り ¥ 3,000/当日¥3,500
一般発売 2021/9/1(水) 18:00 ~、アーカイブ 2021/9/19(日)18:00~2021/9/24(金)23:59
出演者:
小山田壮平(弾き語り、band set)
インナージャーニー
オオヤユウスケ(band set)
折坂悠太
工藤祐次郎
TIMESLIP-RENDEZVOUS

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取材・文/石上友梨、撮影/松橋晶子、構成/萩田若葉

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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