「瞑想を続けられている時は、心が良い状態な気がします」ミュージシャン小山田壮平がコロナで思うこと

 「瞑想を続けられている時は、心が良い状態な気がします」ミュージシャン小山田壮平がコロナで思うこと
撮影/松橋晶子

著名人や音楽ファンから熱く支持され惜しまれつつ2014年に解散したバンドandymori元ボーカル、小山田壮平インタビュー。 解散後は、ALのギター&ヴォーカルとして始動。自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行ない、2021年1月にはテレビ東京ドラマ25『直ちゃんは小学三年生』のエンディングテーマである「恋はマーブルの海へ」をリリース。9月には秩父で行われる音楽フェス「風CAMP」を主催するなど、小山田壮平が吹き込む新たな風と伝説が始まろうとしている。古くからの友人である臨床心理士・石上が、コロナ禍で抱える思いや瞑想などのリフレッシュ法について話を聞いた。

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ツアーが飛んで落ち込んだ時があったけど、悪いことばかりじゃないかもしれない。

―――コロナ禍で小山田さん自身が変化を感じていることはありますか?

「音楽業界的には、バンドが活動休止になったり、ギター教室やドラム教室をオンラインで始めたりという話は聞きます。でも、一番影響を受けているのはライブハウスで働いてるバイトの方たち。ライブ自体がコロナで休止になることもあるから、バイトの方たちはシフトに入れなくて大変な思いをしている人が多いです。あと、やっぱりライブができないことはミュージシャンにとっても苦しいし、鬱々としているのはあります。」

―――小山田さんも、ライブをやりたい!という気持ちになりましたか?

「僕は普段はあまりライブをしないので、それほどダメージはなかったのかも。1度ツアーが飛んで落ち込んだ時があったけど、それ以外は、うまいことくぐり抜けるようにライブができています。それに、コロナの影響で、ライブをリアルタイムで配信する新しいやり方が始まって、地方や海外にいる人たちもライブに参加できるようになったりもしていて、悪いことばかりじゃないかもしれない。」

―――考え方によっては、音楽の届く範囲や層が広がったかもしれないですね。コロナ禍では鬱々とした気持ちになる人も多いと思うのですが、小山田さん自身は気持ちが落ち込んだとき、どうやってリフレッシュしていますか?

「ひとつは、やっぱり音楽です。誰に聞いてもらうわけでなくても。ギターを弾いて歌うことは、ミュージシャンという仕事をやっていることもあって『未来に向けていいことをやっているんだ』と気持ちが前を向く感じ。ただ、始めはいつも面白いと感じるわけじゃないんです。ギターを弾いて歌っているうちに『いい感じだなぁ』と乗ってくる感じがあって。やっぱり一人でやっていても、うまく歌えたらうれしい気持ちになるし、良い曲が思い浮かんだら最高ですね。」

―――夜中に時々始まるツイキャスも、リフレッシュのひとつですか(笑)?

「ツイキャスは、酔っ払って、かまってかまってウェーイ!って感じ。歌いたいって気持ちになった時に思い出すんですよ、僕の歌が好きな人たちのことを。それで、『みんな!聞いてくれー』って。楽しい気持ちになれるのはお酒の力もありますけど、音楽の力でつながれるし、リスナーのみんなのおかげで日々楽しく過ごせています。」

瞑想を続けられている時は、心が良い状態な気がします。

―――音楽以外のリフレッシュ法はありますか?

「そういえば、福岡に引っ越してからは、暇を見つけて釣りに行っていましたね。釣れなくても海を眺めるだけでリフレッシュできる。自然とつながる感じが癒されます。それと、瞑想にもトライしていました。でも難しくて……瞑想はできるときは続けられる。例えば、1日目10分ちゃんとできたら次の日は20分できるとか続けられる感じなんだけど、一度その習慣が失われると、もう1分持たないみたいに続かなかったりするんです。」

―――瞑想は、湧き上がる感情をジャッジせずに観察して受け流す、という練習なので「心をからっぽ」にしなくてもいいんです。「雑念が湧いちゃいけない」と思っていると続けづらいかもしれません。でもさらに言うと、セルフ・コンパッション (自分を思いやる)を同時に持たないと成り立ちづらいと思っています。アメリカでは、感情を観察するマインドフルネスとセルフ・コンパッションはコインの裏と表に例えられていたり、切り離せない関係。なぜかというと、瞑想中につらいことが浮かんでしまった時、ある程度自分に思いやりを持っていないと、それを抱えることは難しいから。あれ、何の話してるか分からなくなっちゃった(笑)

「講義が始まった(笑)」

―――何を言いたかったか思い出しました。思いやりが大切だから、瞑想が続かなくてもいいと思うんですよ。自分への思いやりってことで、「続けられないダメだ~」ってなるんじゃなくて。「今日の自分は1分できた」と受け入れて、ジャッジしない。できない日があっても大丈夫。

「なるほど。でも、やろうとすることすら忘れちゃって。だから1日1回は思い出してやってみようっていうふうに思っているんだけど、気づいたらもう1週間ぐらい何もしていないみたいなことがあって。でも、確かに瞑想がうまいこと続けられている時ってすごくいい状態な気がしますね、心が。」

―――うまく続けられているときは、心が安定していると。

「参ってしまうことが続くと、瞑想していても「ああ、そういえばアレをやり忘れていた」「メール返していないじゃん」とか思い出して、それをやってたら「瞑想するんじゃなかったっけ……」となってしまう。仕事とか一旦やめて瞑想しなきゃいけないんだけど、何を生き急いでいるんだろう……という状態になってしまいますね。それすらも、思いやりで?」

―――私は瞑想をゆるくやっているので、瞑想中に雑念が浮かんできて、雑念に乗ることもある。先にメール返しちゃおうかなって。その方が後から瞑想に集中できるなあって。思いやりって何かというと、その時に自分に必要な行動を取ることだと思います。だから、雑念に気を取られる自分を受け入れて思いやることも、長い目で見て瞑想を続けるコツかもしれないです。

小山田壮平
撮影/松橋晶子

昔ネパールでサドゥー(ヒンドゥー教の行者)の夫婦に毎朝ヨガを教えてもらっていて、その時は楽しかったんですよ。

―――瞑想にトライされているということですが、ヨガについてはどんなイメージですか?

「ヨガは興味があって、西荻のヨガスタジオに行ったことはあります。その時はあんまり馴染めなくて。みんなすごく真剣だからストイックな空気になっていて…ちょっと疲れるというか。昔旅行で訪れたネパールのポカラという町のフェア湖のほとりに、アメリカ人のヒンドゥー教のサドゥーの夫婦がいて、その周りにゲストハウスというか安い小屋みたいなのがいくつか立っていて、そこに海外の旅行者とか、ロシア人の絵描きとか旅人たちが集まっている。そこでサドゥーの夫婦に毎朝ヨガを教えてもらっていて、その時は自由な雰囲気で楽しくて続けられたんですよ。」

―――たしかに、日本ではみんな「正しく綺麗なポーズ取らなきゃ」とストイックになっているし、ポーズが正しくないと先生から修正されることがありますよね。

「自分の体が硬いから、それもコンプレックスだし、恥ずかしいなって思ったり…。」

―――私はネパールだと、カトマンズのヨガ教室に1ヶ月いて、ポカラも2箇所行ったんだけど、筋肉質な先生もいれば、ふくよかな先生もいた。ヨガの目的は、痩せるためじゃなくてそのひと本来のあるべき状態になるものなんですが、日本は細くて綺麗なヨガの先生が多いから、美容やダイエットのためにやるというイメージが強いのかもしれないですね。自分を内観して人と比べない心を養うものなのに、外見やポーズの形にとらわれて居心地悪くてやめちゃう、周りの人と比べて辛くなっちゃうっていう人も多いのかもしれないです

「どっちにしろ、僕の場合は続けられたかどうかは分からないな(笑)。でもやる人はずっとやるもんね。何年も。」

―――瞑想の方が自分に合っている感じなのかな? こないだのヨガニードラはどうでした?(石上のヨガニードラクラスに参加した時の話)。ヨガニードラは、「眠りのヨガ」といって、20分で4時間の深い睡眠と同じ効果が得られると言われている瞑想法のひとつなんです。

「そうなんだ。いや、なんか冷やかしというか…でもちゃんと聞いてたよ(笑)。 どんな感じなんだろうと思って。」

―――小山田さんがクラスに途中参加する時、みんな静かに集中してボディスキャンをやっていたんだけど……ミュートにしないで入ってきたから、音がざわざわしていて……急いでミュートにしたのは覚えている(笑)。

「あれ?ミュートになっていなかった? それは、すみませんでした(笑)。」

▶インタビュー続き「インドは想像の斜め上からグーンと来る強烈な場所」ミュージシャン小山田壮平が語る、インドの魅力
 

小山田壮平(おやまだ・そうへい)
1984年6月17日生まれ、福岡県飯塚市出身のミュージシャン。早稲田大学卒。2007年にロック・バンド、andymoriを結成。高い人気を獲得するも、2014年10月の日本武道館公演をもって解散。翌11月にレーベル〈Sparkling Records〉を設立。2015年にこれまでの長澤知之とのプライヴェート・プロジェクトを発展させたバンド、ALのギター&ヴォーカルとして始動。翌2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行なう。2020年に小山田壮平名義の初ソロ映像作品を経て、8月に初ソロ・アルバム『THE TRAVELING LIFE』をリリース。また、オーガナイザーとして初の野外イベント「風CAMP」が2021年9月18日に開催決定(販売中止、オンライン配信に変更)! チケット先行受付開始中。詳しくは、特設サイトにて。

風キャンプ
風CAMP2021

イベント概要

会場:秩父ミューズパーク 野外音楽ステージ ※販売中止、オンライン配信に変更
チケット:オンライン配信チケット前売り ¥ 3,000/当日¥3,500
一般発売 2021/9/1(水) 18:00 ~、アーカイブ 2021/9/19(日)18:00~2021/9/24(金)23:59
出演者:
小山田壮平(弾き語り、band set)
インナージャーニー
オオヤユウスケ(band set)
折坂悠太
工藤祐次郎
TIMESLIP-RENDEZVOUS

 

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取材・文/石上友梨、撮影/松橋晶子、構成/萩田若葉

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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