「インドは想像の斜め上からグーンと来る強烈な場所」ミュージシャン小山田壮平が語る、インドの魅力
著名人や音楽ファンから熱く支持され惜しまれつつ2014年に解散したバンドandymori元ボーカル、小山田壮平インタビュー。 解散後は、ALのギター&ヴォーカルとして始動。自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行ない、2021年1月にはテレビ東京ドラマ25『直ちゃんは小学三年生』のエンディングテーマである「恋はマーブルの海へ」をリリース。9月には秩父で行われる音楽フェス「風CAMP」を主催するなど、小山田壮平が吹き込む新たな風と伝説が始まろうとしている。古くからの友人である臨床心理士・石上が、旅や楽曲制作について、また今秋に自主企画のフェス「風CAMP」を開催する理由を聞いた。
旅は、特別なもの。インドは想像の斜め上からグーンと来る強烈な場所
ーーー去年、旅をテーマにしたアルバム『THE TRAVELING LIFE』を出されていますが、、小山田さんにとって旅はどんなものでしょうか?
「海外旅行は定期的に行っていたので、コロナの影響で旅に行けないことが一番苦しいかもしれません。海外に行って自分のルーティーンから離れて、自分の暮らしを振り返ったりだとか、新しい面白いものを見たりとか、食べ物もそうだし、匂いだったり、言語・文化だったり、非日常に触れる体験がこの2年間はほどんどなくて、海外に出られないのはしんどいです。」
ーーー旅に出ると感覚が広がったり、いろいろな刺激がありますよね。
「日本にいても自分の心持ち次第で面白くはなるんだけど、異文化のなかで想像の斜め上からグーンと来るあの強烈な感じは、旅じゃないと味わえない。他にもたくさん面白い国はあると思うけど、特にインドはすごい強烈ですね。」
ーーーでは、最も印象的な国はインド?
「印象的な国って言われるとやっぱインド。異文化を感じるのもインド。普通に歩いていて日本語で「フレンド!フレンド!」ってガンガン絡んでくる体験は他の国ではないから。こっちにやる気がなくても勝手に物語が進んでいくというか、強引に巻き込まれていくとか。」
ーーー海外でも弾き語りするんでしたよね?
「基本的にギターは持って行ってて、歌ったり、曲も作ったりしています。」
ーーーインドのどの街が特に強烈でしたか?
「やっぱりバラナシ。3回も行っているのはバラナシだけ。バラナシは街の作りも面白いし、住んでいる人も面白いし、ヒンドゥーのシバ神の町。シバの世界観というか、ビジュアルも含めて空気だったり。カフェを経営しているインド人の友人もいて、今もフェイスブックで交流しています。」
ーーーでは、コロナが明けたら行きたい国と聞かれると……?
「……インド」
ーーー今、誘導尋問っぽかったですね(笑)。 違う国でもいいですよ。
「(笑)最近はメキシコかな。旅先で会った100カ国以上行っている友達がメキシコに行こうと言っていて、メキシコに呼ばれているなあと気になっています。アメリカの文化もあるし、カリブ海の雰囲気もある。向こうのテキーラは、ヨーロッパのワインや日本の日本酒みたいな扱いで、とても美味しいらしいんですよ。ショットではなく、ゆっくりペースで飲むもので、テキーラ好きのおっちゃんが、日本のガーッといく飲み方を嘆いていました。テキーラは罰ゲームではなく、勝者の飲み物だって。」
ーーー以前、タイのパンガン島やラオスもいいって言ってませんでした?
「パンガン島もいいですけどね。ビーチパーティーの島で、海が綺麗で。ラオスは平和で穏やかな国でした。ネパールも穏やかですけど。」
ーーーインドは良い人もいるけれど、騙してくる人もいますよね。あわよくば、お金が欲しい、あわよくば女性に触りたい感じかなと思っています。あわよくばの心で。
「オープンマインドなんだよね。単にエロいやつらってわけではなくて、とにかく本音を包み隠さないだけ。心のなかは澄ました顔で歩いている東京の人と一緒なのかも。」
ーーー素直ですよね(笑)。
「欲望に忠実。危ない人も中にはいるけれど、思ったほど怖くないよ。ちょっとぼってきたりとか、知り合いの店に連れていく人もいる。ニューデリーは、混沌としていて、暗がりに連れて行かれたこともあります。リキシャで反対方向に連れて行かれたり。でも、今はGoogle mapがあるから反対に進んでいることに気づける。インドに行こうと思っている人は、常に疑いの心は持って声かけてくる人は全員騙してきているという気持ちでいた方がいいかも。だけど、寂しくもあるよね。」
ーーーわかります。疑いながら人と関わるのは嫌だなって。正直、インドにいる時は疑い疲れみたいなのがありました。
「うまいバランスで、8割疑いながら関わった方がいいかな。騙してくる人も、それがその人の仕事なんだろうなと相手を理解して、そうゆう気持ちでいた方が楽なんですよね。インドに行く方は、疑いの心を持ちつつ、よきバランスで楽しんでください。あと、多少ぼられるのは気にしない方がいいです。ぼられても安いからね(笑)。」
言葉に自分の心を絡め取られるというか、束縛されるというか、そんな風に苦しむ必要はないんじゃないかと感じ始めた
ーーー次は曲作りについて教えてほしいのですが、ソロになって曲作りでテーマにしてることやandymoriの頃と変わったことはありますか?
「言葉にこだわっていた時期というか、こだわりは今もあるんですけど、言葉から言葉を紡ごうと言葉にすごく意識が向いていた時期が長かったんです。でも、今はメロディーを意識していて、そのメロディーが呼んでくる言葉。順番が逆になってきているのが最近の傾向としてあります。言葉に囚われてこんがらがっていて、苦しむ自分を何回か経験しているうちに、言葉に自分の心を絡め取られるというか、束縛されるというか、そんな風に苦しむ必要はないんじゃないかと感じ始めたんだと思います。10年前のインタビューでは、僕はあんまり喋らなくて、ものすごく言葉を選んでいたんですよ。間違えないように正確な言葉を一生懸命伝えようとしてたんですけど、それよりも何かグルーヴというか、バイブスとか。そういうものを意識するようになった方が気分も楽になりました。」
ーーー言葉に囚われすぎてしまうより、メロディーにのって出てきた言葉を感覚的にチョイスしている感じなのでしょうか?
「気持ちが先立つというか、言葉を大事にして慎重になりすぎるよりも、感覚を大事にした方が近道なんじゃないかと思って。思考ばっかり重視していた時より、感覚に頼った方がしっくりくるし、今の時代と今の自分に合っている。言葉を重視していた時期に苦しみながら作った曲は、間違いないことを言っているし、正しくてツッコミどころがないこと言ってるんだけど、ちょっと面白くないなと。もちろん今も好きなんだけど、いろいろ考えていて硬い気がするし、突き詰めた言葉は似通って同じような言葉になってしまう。最終的には「愛しているってことだよ」みたいな。最終って言ったら、「ただ僕は君を愛している。ありがとう。」って。たまに大事なところでそういう言葉を使うのはいいんだけど、言葉に囚われ過ぎると面白くない。言葉に対して適当にはなりたくはないけれど、もうちょっと面白くやりたい。ワクワクしたいというか。」
安心できる空間、楽しい幸せな空間を作りたいんです
ーーー9月にフェスを企画されているそうですね。コロナ禍だからこそ、企画されたのでしょうか?
「特にコロナということは意識せずに、安心できる空間、楽しい幸せな空間を作りたい、というのは以前からずっと思っていて『もうフェスしかない!』と。本当はキャンプをしたかったから、風CAMPという名前なんです。どんな時も好きな音楽に触れられることは喜びだし、コロナによって苦しい状況になっている人がいるのなら、音楽好きにとっては、音楽はすごく重要なものになるのではないかな。」
ーーーなぜ「風」なのですか? 風の時代だから?
「『風の時代』は伏せようと思ってたんだけど「風の時代ってなんのこっちゃ?」って思う人たちを作りたくないというか。フェスをやるんだったら、なるべくどんな人も分け隔てなく入ってこれるような祭りっぽい空間がいいなって思った時に「風」というワードだったらいいんじゃないかなって。本当はキャンプにしたかったけれど、今年はコロナの影響もあってキャンプは現実的じゃないなと。また来年以降続けていきたいと考えた時に、いずれはキャンプイベントにしたいと思っています。キャンプファイヤーをやったり、夜通し歌ったりしたいな。」
ーーーちなみにどんなアーティストが参加するのですか?
「折坂悠太、工藤祐次郎、オオヤユウスケ、インナージャーニー、TIMESLIP-RENDEZVOUS、と僕。単純に僕が好きな人たちです。好きな人たちだし、この空間なら安心できる感じ。」
ーーー安心も一つのテーマですか?
「安心が土台で、そこから新しい何かが生まれると素晴らしいと思って。」
ーーー新しい何かって安心の土台がないと生まれないですもんね。開催はいつ頃ですか?
「9月18日に開催するんですが、気候は結構考えて熱すぎず寒すぎない時期にしました。台風が来るのは心配だけどね。場所は秩父の公園で、大自然があるのが良くて。」
ーーー秩父だと都心からはアクセスしやすくていいですね。どんな人達に来て欲しいですか?
「『風CAMP』と聞いて、何か引っかかるなと思った人はみんな来て欲しいです(笑)。フェスの空気だったり世界っていうのは来てくれた人たちが全員で作り上げるものだと思っているから。そこでなにか生まれるか、最終的にどうなるのかは僕自身分からないですけど。だからこういうことをやる祭りなんだって宣言するようなものはないんです。」
ーーーまさに風っぽいですね。その場で何かできるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。風とともに流れていくようなイメージ。気になった人は、衝動的に風に任せて来てほしいですね。
「はい、ぜひ衝動的に来てください(笑)。秩父まで西武池袋線の特急レッドアローゴーという電車で1時間半です。」
▶インタビュー続き「何もできなくてもいいんだ、ってことをみんなに言いたい」ミュージシャン小山田壮平が思う“自己肯定“
小山田壮平(おやまだ・そうへい)
1984年6月17日生まれ、福岡県飯塚市出身のミュージシャン。早稲田大学卒。2007年にロック・バンド、andymoriを結成。高い人気を獲得するも、2014年10月の日本武道館公演をもって解散。翌11月にレーベル〈Sparkling Records〉を設立。2015年にこれまでの長澤知之とのプライヴェート・プロジェクトを発展させたバンド、ALのギター&ヴォーカルとして始動。翌2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアーなども精力的に行なう。2020年に小山田壮平名義の初ソロ映像作品を経て、8月に初ソロ・アルバム『THE TRAVELING LIFE』をリリース。また、オーガナイザーとして初の野外イベント「風CAMP」が2021年9月18日に開催決定(販売中止、オンライン配信に変更)! チケット先行受付開始中。詳しくは、特設サイトにて。
イベント概要
会場:秩父ミューズパーク 野外音楽ステージ ※販売中止、オンライン配信に変更
チケット:オンライン配信チケット前売り ¥ 3,000/当日¥3,500
一般発売 2021/9/1(水) 18:00 ~、アーカイブ 2021/9/19(日)18:00~2021/9/24(金)23:59
出演者:
小山田壮平(弾き語り、band set)
インナージャーニー
オオヤユウスケ(band set)
折坂悠太
工藤祐次郎
TIMESLIP-RENDEZVOUS
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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