不安な気持ちと上手につきあうには? 乳がんサバイバーのためのヨガ
乳がんになると、乳房切除や抗がん剤の副作用による脱毛といった外見の変化、治療や再発の不安から生じるストレスとのつきあい方が課題に。治療中に衰えた筋力の向上に加え、うつむいた心のケアに役立つ乳がんサバイバーのためのヨガをご紹介。
心身のダメージを整えヨガで生活習慣の改善も
「がんサバイバーの運動療法に関するガイドラインでは、ヨガやエクササイズなどの運動を1日30分以上、週5回行うことを推奨しています。術後に体重の増加を防ぎ、運動を定期的に行っている人は、再発リスクが減少するという研究結果も」。そう教えてくれたのは、乳腺外科医の新倉直樹先生。
欧米ではヨガがもたらす心身への効果について科学的な根拠を示す研究が行われ、病院が治療と並行してヨガや瞑想を積極的に導入しているといいます。
「治療中でも体調が良ければ体を動かすことをおすすめします。ヨガは運動経験がない人も始めやすく、動いて気分がすっきりすると不安で眠れないなどの不定愁訴の改善も期待できます。ヨガを行う際、注意したいのは、がんが転移した脇の下のリンパ節を切除してリンパ浮腫(腕のむくみ)を発症している人。ダウンドッグなど床に手をつくポーズは、腕に負担がかかるため控えましょう。ヨガで健康意識が高まると過度な飲酒や喫煙、高脂肪食を改め、生活習慣を改善するきっかけに。ヨガは治療後の健康的な生活を支える助けにもなるはずです」
Q. 日本人女性の乳がん罹患率が増えていると聞きますが...
A. その数は年々増加。11人に1人が生涯に一度乳がんに
「乳がんの罹患者数は年間9万人を超え※、年代別に見ると罹患の第1ピークは40代、そして60代で再び増加。リスク要因には高脂肪食、肥満、アルコールなどがあり、出産経験のない女性は発症リスクが高くなります」。
※国立がん研究センターがん対策情報センター調べ
Q. 乳がんと診断された場合、ヨガを始めるタイミングは?
A. 診断を受けたときからです
「乳がんの告知で混乱する心を静め前向きに治療に臨むために、また術前に腕や胸まわりの可動域を確認しておく意味でも診断を受けたときから始めるのがベスト。術後は2〜3週間して手術痕が落ち着ついた頃に再開してください」
Q. 乳がんサバイバーのためのヨガはどこで受講できますか?
A. 大学病院でのがん患者向けオンラインヨガがスタート
「アンダーザライトヨガスクールと協働で、がん患者さんを対象に全国の大学病院でオンラインヨガを開始しました。ヨガ資格のある看護師や乳がんサバイバー等を講師に迎え、自宅で安心して受講できます」。詳しくは、下記サイトをチェック!
www.underthelight.jp/cancer-survivorship
お話を伺ったのは...新倉直樹先生
東海大学医学部外科学系乳腺・内分泌外科教授。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターに留学。補完代替医療にも詳しく、医学雑誌などで医師の視点からヨガの効果を発信。『医療におけるヨーガ原理と実践』日本語版監修。
「自立心」を育み、生活の質を上げるのが大切|術後の体力&巡りを促すヨガ
日常の活動量の減少で低下した体力を回復させ、ストレスにも効くヨガを看護師とヨガ講師を兼務する伊藤美奈子先生がレクチャー。
自立心を目覚めさせヨガで心の健康を取り戻す
「生活の質の向上のため、乳がん患者さんにヨガを提供している」と話すのは、乳がんリハビリヨガを指導する伊藤美奈子先生。クラスでは、治療中に低下した筋力の回復を目指し、関節を動かしてリンパや血液の流れを促進。そして、不安で緊張状態にある心身をポーズと呼吸でほぐし、リラックスさせることを意識しているそう。
ヨガは病気の回復に大切な「自立心」を養う手助けになるとも。「本来治療には患者さん自身の治す意欲が大切。しかし、治療によ る体調不良で社会参加が減少し、自信と存在意義を失い、自己肯定感が低くなりがち。そんなときこそヨガで体と向き合い、自分に何ができて、何ができないのかを理解し、自らの意思でポーズを選び行っていく。その小さな選択を積み重ねることで自信がつき、自立心を育む一歩になると思います」
術後に胸をかばって固まりがちな肩まわりを動かそう
術後の乳房や手術痕をかばって猫背になり、肩まわりの筋肉が硬くなりがち。段階的に肩まわりの柔軟性を高めましょう。
肩回し1
術後のツレ感が気になる段階は肩回し
術後、胸まわりに違和感がある人は腕を下げたまま肩を回す小さな動きからスタート。肩関節が動く感覚をたしかめながら呼吸に合わせてゆっくり行って。
椅子に浅く座り骨盤を立てて背筋を伸ばす。腕を体から少し離して手のひらを内側に向ける。
肩を外施する。このとき手を肩より後ろへ引くのがポイント。肩甲骨を寄せて胸を開く意識も忘れずに。
肩を内旋する。今度は手を肩より前に持っていく。このときは肩甲骨を左右に開くことを意識する。(各10回)
肩回し2
徐々に腕の上げ回しをし肩甲骨からほぐして
腕を上げても違和感がなくなったら腕の上げ回しにトライ!肩関節だけでなく肩甲骨を一緒に動かし、脇の下の伸びも感じながら可動域を広げていきます。
椅子に浅く座り骨盤を立てて背筋を伸ばす。足裏全体で床を踏んで姿勢を安定させ、手を肩に添える。
体の前で左右の肘を近づけ下から上ろへ肘で円を描くように腕を回す。肩甲骨を一緒に動かすのがポイント。
同じ要領で今度は後ろから前へ肘を回す。上から下へ肘を回しながら下す。肩甲骨を寄せるように下す。(前後回し10回)
タンクトップ¥8,900、レギンス¥8,900/ともに[sn]super.natural(SN JAPAN http://sn-supernatural.jp)
お話を伺ったのは...伊藤美奈子先生
看護師、乳がんリハビリヨガインストラクター。新倉直樹先生が主宰する大学病院でのオンラインヨガ「乳がんサバイバーのリハビリヨガ」(第3週土曜10:00〜11:30)を指導。
※今回紹介したヨガの一部を動画で確認できます。下記サイトをチェック!
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGpkggyKq8mp4Faf_SkQIFbwbNDECo--g
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
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