再発の不安、治療に伴う不調…その時ヨガに何ができるか|がん患者にヨガを指導する中で気づいたこと

鈴木陽子さん提供

再発の不安、治療に伴う不調…その時ヨガに何ができるか|がん患者にヨガを指導する中で気づいたこと

西洋医学にヨガなどの補完代替療法を組み合わせてQOL(生活の質)を向上させる「統合医療」が、日本でも話題になっています。がんになると治療に伴う不調や再発の不安などに悩まされる人は少なくありません。ヨガがそのときできることとは。看護師兼ヨガインストラクターとして医療現場でヨガを教える鈴木陽子さんに、ヨガががん患者にもたらす効果を聞きました。

「ヨガをしたい、けど不安」を解消するために

―鈴木さんは何をきっかけにヨガと出会いましたか。初めてヨガをしたときの感想も聞かせてください。

「私がヨガを始めたのは友人にヨガスタジオに誘われたのがきっかけです。確か15年程前ですね。当時は慢性的に首と肩が凝っていて、それが一度のレッスンですっきりして感動したのを覚えています。一時期、病院での看護師をやめて外資系企業で産業保健師をしていたときがあるのですが、メンタルヘルスに関わる仕事は自分を消耗するので、このときは心の健康を保つための自己管理法としてヨガが役立っていました。私は有酸素運動の要素を含むアクティブなヨガが好きで、血流が良くなると心身ともにすっきりしますよ。自分が恩恵を感じたことでより深くヨガを知りたくなり勉強のために指導者養成コースを受講し、歴史などを一から勉強して4000年の叡智が詰まったヨガの偉大さを再確認し、リスペクトの気持ちが強くなりました」

―今は聖路加国際病院の心血管センターで看護師として働く傍ら、院内で患者さんにヨガを指導していますね。ヨガスタジオではなく医療現場でヨガを教える道を選んだのはなぜですか?

「『ヨガスタジオに行くのはちょっと不安、インストラクターに病気のことを打ち明けるのは気が引ける。でもヨガをしたい』という患者さんのニーズを指導者養成コースに通っていたときから感じていました。ヨガをすればもっと体力やQOL(Quality of life、生活の質)の回復が見込めそうな患者さんも周りで目にしていたんです。一方、医療の専門家ではないヨガインストラクターは、医療的なアドバイスをしてはいけないと教えられ、心身の不調を抱える方に踏み込めないのが現状です。ならば、患者さんのデータが揃う病院の中で、医療者の私がクラスを提供すれば、躊躇していた患者さんに安心してヨガをしてもらえるのではないか。それが私の役割だと思い2013年から院内でのヨガ指導を始めました」

聖路加病院 ヨガ
聖路加病院で患者向けのヨガを指導し始めたのが2013年。コロナ禍にある現在は病院でのクラスは休止、オンラインでクラスを開催している。画像提供:鈴木陽子さん

―院内でのヨガ指導が7年も続いていることに患者さんのニーズを感じます。聖路加国際病院ではどのようなヨガを教えていますか。

「今は2つのクラスを担当していて、ひとつはがん患者さん向けのマインドフルネスヨガです。このクラスでは、伸ばしている筋肉や呼吸に意識を向け、余計なことを考えず今この瞬間に集中するマインドフルネスを目指しています。なぜそのような状態を作るかというと……。患者さんはがんになったことで以前の生活習慣を悔いたり、将来を憂いたりして不安に支配されがちです。命に関わる病気なのでそれは当然ですよね。だからクラス中は、意識的に過去や未来の不安に引っ張られる状態を断ち切るために、体の感覚に集中する時間を作るようにします。ヨガが直接病気を治せるわけではありませんが、内向きな心のケアには気分を変えることの積み重ねが大切。不安、怒り、焦りなどの感情はがん患者さんの生活をより困難なものにしてしまい、QOLを低下させるので、それらを手放し少しでも日々を楽に生きるためにヨガは有効なツールだと思います。

もうひとつは心臓病の患者さんを対象にしたリハビリ目的のクラスです。患者さんは70代のシニア層が中心。開胸手術後はベッドの上で過ごす時間が長くなり筋力が著しく低下するため、筋力を回復させて身体機能を維持し健康寿命を伸ばすことを目指しています。心臓病の患者さんは食生活や運動習慣に問題を抱える方が多く、自己管理の面でもヨガが役に立つと感じています」

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Text by Ai Kitabayashi

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