いつからでも、何歳からでも、体も人生も変われることを伝えたい|連載"生きる"を綴る

 いつからでも、何歳からでも、体も人生も変われることを伝えたい|連載"生きる"を綴る
Naoki Kanuka(2iD)
宮井典子
宮井典子
2023-12-16

ピラティスインストラクターの宮井典子さんは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者としてメディアで啓蒙発信しながら、心地よい暮らしと働き方を模索しています。そんな宮井さんによるエッセイ連載『"生きる"を綴る』です。

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諦めようと思ったり、やっぱり復帰しようと思ったり…体を資本とする仕事だけに、揺れに揺れて揺れ動いた2023年。

時折、難病を罹患した健康産業に携わる方からいただくメッセージを読んで励まされ、また「微力でも誰かの勇気に少しでもなれたら」と目標を掲げ、鼓舞することで、私自身頑張れたことは確かです。

ピラティスインストラクターの仕事復帰を目指すにあたって、不安がないわけじゃありません。

楽しみな気持ちが膨らむほど、不安が募るのも正直なところです。

ですが、不安を感じる原因や理由を挙げてもキリがありません。 

ただ、ただここまでの回復に自信を持って、再び前を向いて歩きはじめるだけのことです。

1年前はわからなかったこと。

1年前は気づかなかったこと。

1年前は感じなかったこと。

もしかしたら、1年前に遡らなくても、数カ月前にはわからなかったことや気づかなかったこと、感じなかったことが今だからわかるのかもしれません。

そうやって少しずつ年齢を重ねているということ。それを老いと嘆くのは勿体無い。

加齢や衰えにあらがって嘆くより、年齢や体調や気分に合わせて出来ることをひとつずつ増やしていく人生の方がもっともっと楽しいはず。

そんな想いをより強くしたのは、11月28日木曜日のこと。

事前に撮ったMRIの検査結果を聞くために主治医のもとを訪れました。

他愛ない話をし終わった後、主治医が静かな口調で「最近の痛みの原因がわかりました。」

"突発性大腿骨頭壊死症"

「え?!なんて?!」

主治医から現状と今後について聞いた後、整形外科の予約を取りにいき、会計を済ませて、足早に病院の外に出た瞬間、我慢していた涙が溢れ出しました。

翌日の金曜日、その翌日の土曜日は不安で押しつぶされそうで涙が次から次へと流れ落ちました。

「なんでこうも私ばっかりこんなことに…」

運がない、ツイテないというには重すぎる。シャレにもならない。

目の前が再び暗闇に閉ざされ、すべての光が遮断されたかのようでたまらなく不安でした。

だって、ここに至るまでの2年間も決してラクではなかったのです。

肉体的にも精神的にも本当にツラくて、どうしようもなくて、それでも未来を信じて希望を持ってなんとか乗り切り、ようやく乗り越えられたかなと思っていた矢先のこと。それなのにまたここで試練に出くわすなんて…誰が想像出来るでしょうか。

心底、「世の中はなんて不平等なんだろう」と泣いて、泣いて、泣いて、大泣きしました。

 

珍しく落ち込んだ数日を過ごし、意気消沈で整形外科の主治医のもとへ。

現状と今後についての話を聞き、ひとまず経過観察となったわけですが、日常生活上で気をつけること、禁忌事項を確認してきました。

こればかりは個人差があるとのことで、今後は痛みがひとつの指針となり、進行次第では手術もあり得ると主治医から告げられ、「そのときはそのとき、覚悟して受け入れよう」と決めました。

そこで、先にも書いた通り「加齢や衰えにあらがって嘆くより、年齢や体調や気分に合わせて出来ることをひとつずつ増やしていく人生の方がもっともっと楽しいはず」と、今後、どんな結果になろうとも、今出来ることをひとつずつ増やしていく人生を体現しようと決めたのです。

いつだったか、夫から「あのときはもうこのまま死んじゃうかと思った」と言われたことがあり、その言葉がずっと忘れられません。

今も全く痛みがない訳ではありません。残念ながら出来ないことも避けるべきこともいくつかあります。この先、手術をする可能性も大いにありますが、ただひとつ命がなくなるわけではないということ。

「私は生きている」という事実を胸に、これからも「生き続けたい」意志を貫き、ただただ前を向いて歩いていくだけです。

 

来春、2年5カ月振りにインストラクターとして活動再開することにいたしました。

全身性エリテマトーデスに加え、突発性大腿骨頭壊死症の診断が下りた中での復帰は、正直不安がないわけじゃありません。

当然ながらこれまでと同じレッスンを提供出来るはずもないので、ゆらぎ世代を生きる身の丈に合わせた内容で再スタートします。

入院期間を含めて、ほぼベッドで過ごした3カ月間。あの日からしたら、少々の痛みがあっても少々の不都合さがあっても、「生きてるって楽しいな」と思えるって、最高です。

いつからでも、何歳からでも、体も人生も変われることを伝えたい。

いつからだってやり直せる。

生きている限り、いつからでも。

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AUTHOR

宮井典子

宮井典子

SLE Activistとして活動。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。46歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、誰もが生きやすい社会を目指してSNSを中心に当事者の声を発信。



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