たった200時間のトレーニングでヨガ指導者になれるのか?YTTの実態と問題に迫る


「ヨガティーチングプログラムに関わる人は善意の人が多いけれど、だからといって彼らが最高の仕事をするとは限らないわ」とクラインは言う。彼女はYA基準とは名ばかりで、認定指導者たちは生徒たちを安全に練習させるだけの力を備えていないと論じている。だがタナーの指摘によると、YAはライセンス供与、認定、証明、規制のための機関であるとは一度も言っていないという(しかし多くのスクールは、顧客獲得のためにYAの認定や証明を受けていると主張している)。あくまでもYAの使命は当初から「ヨガを指導する上での完全性と多様性を促進しサポートすることに一貫している」とタナーは言う。「ヨガではすべてが結びつきなんだ。私たちは指導者と生徒たちの間に割って入る気はない。それに本当にいろいろなスタイルがある。どうやってクンダリーニとヴィンヤサを比べるんだ? どのヨガが『いい』なんて、決められるわけがないよ」。
YAはコミュニティ自身による管理を尊重しており、近年では政府によるティーチャートレーニングの管理を阻止すべく多額を投じて戦っている、とマッコードは語る。事実、YAはアラスカ、アリゾナ、アーカンサス、コロラド、イリノイ、ミシガン、ミズーリの7つの州でヨガを規制から保護する法律を通過させている。たとえばコロラド州議会では、2015年の春にヨガティーチャートレーニングを実施するスクールをDPOSの管理から外すための投票を行った。DPOSによると、ヨガインストラクターがその給料だけで生計を立てられるのは稀なため、ヨガ指導が職業として認められないというのが争点だった(YAの調べでは、ヨガが主要な収入源となっているヨガティーチャーは30%にも満たないという)。
最初にシステムの欠陥を認めたのはYAだった。「実際のところ、YA認定200時間トレーニングのすべてが同じようにつくられているわけではない」とタナーは言う。彼はよく言われる批判のすべてをすらすらと述べた。たとえば、現在の登録システムでは、下手な指導者でもトレーニングを率いることができる、とか、全くヨガ経験のない生徒がたった一カ月で指導者になれてしまう、という点だ。確かに200時間で、クラスの作り方や、さまざまな生徒の肉体的、精神的ニーズへの理解や、ヨガの古代伝統への尊敬を学ぶには無理がある。それにほとんどの200時間YTTでは、生徒の安全を図るための解剖学に十分な時間を費やしていない。また、YAには各スクールの基準を監査する権利もない。これらの理由により、ヨガコミュニティの中にはYAへの認定登録は金の無駄遣いだと言う人も増えてきている。
「人々がヨガの精神ではなく、認定証を追うようになるのは目に見えていた」
ヨガの完全性をサポートするという使命を果たすため、ヨガアライアンス(YA)は、2005年に認定ヨガ指導者の上位資格でE-RYT(Experienced Registered Yoga Teachers)を導入することによって、無資格のティーチャートレーニング指導者の問題に取り組むための一歩を踏み出した。「人々がヨガの精神ではなく、認定証を追うようになるのは目に見えていたよ」とマッコードは言う。彼は200時間の認定を受けたばかりの新米ティーチャーたちが自分のヨガスクールをオープンしたり、さまざまなワークショップを寄せ集めてティーチャートレーニングと称するのを見てきた。そこで、ヨガの指導テクニックや技法をYA認定校でシェアするにはE-RYTを取得する必要がある、と取り決めた。取得には、200時間RYTの修了後2年以内に1,000時間の指導経験を書面で提出しなければならない(RYTにならなくてもヨガ哲学と解剖学は教えることができる)。
2014年、YAはヨガコミュニティから監視を強化してほしいとの要望を受け、資格認定システムを導入した。ティーチャートレーニングの修了生がRYTの認定が欲しい場合は、受講したティーチャートレーニングプログラムを、YELPの認定校版のように記名評価をすることを義務づけたのだ。今日までに集まったフィードバックは5万を超えるという。「我々一人一人の回答がコミュニティ内に透明性をもたらすんだ」とタナーは言う。「もしもトレーニングに欠陥があれば……たとえば、カリキュラムがお粗末だとか、解剖学や哲学の講義が削除されていたら……我々は資格認定システムを通じてそれを知ることができる」。もしもある認定校が常に低い評価を得ていたら、YAが調査をして手助けをする。それが無理な場合はYAはそのスクールの登録を抹消する。タナーによると、すでに数校が登録を取り消されているという。「資格認定システムは、YTT基準の完全性を維持するための頼みの綱なんだ」と彼は話す。
だが、外部の監査人を置かずにシステムの有効性が保てるか、と疑問を投げる指導者たちもいる。「生徒たちの多くは、自分の好きなスタジオで好きな指導者のトレーニングを受けるので、単に自分たちが教える準備ができるかどうかという偏った視点で評価するでしょう」と言うのはジーナ・カプートだ。コロラド・スクール・オブ・ヨガの創設者でディレクターで、DPOSの制度に反対するコロラドのヨギグループの主催者でもある。彼女は、問題解決はそれほど容易ではないと見ている。「もっといいチェック法が絶対にあるはずよ。でも私たちはかなり広義にヨガを解釈しているから、本当の意味での規制はとても難しいと思うわ」とカプートは言う。
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