ヨガ指導者が知っておくべき8つのポイント

 ヨガ指導者が知っておくべき8つのポイント

標準的な「型」があるのはいいことだ。ヨガのクラスで教えるポーズの数はきわめて多い。生徒たちを導くときに型があるとぐっと楽になる。だが残念ながら生徒たちは一人ひとり異なる。ヨガを指導する上で役にたつ8つのポイントとは?

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現代のヨガ講師養成プログラムでは、習う姿勢の一つひとつにたいして「型」となるかけ声を教えてくれる(たとえば「足は腰幅に開いて」「目線は指先を見ます」など)。標準的な「型」があるのはいいことだ。ヨガクラスで教えるポーズの数はきわめて多い。生徒たちを導くときに型があるとぐっと楽になる。だが残念ながら生徒たちは一人ひとり異なる。平均的な生徒など存在しないのである。講師養成プログラムを受講しているときに身に付けたアライメント指示のかけ声は、たいてい同じようなものになる。こうしたインストラクションはあくまでガイドラインだ。習ったものをこれがベストと思い込んで盲目的になってしまってはいけない。生徒はどんな目的でヨガクラスを受講しているだろう。たとえばベストなときの健康状態を取り戻したい、あるいは維持したいと考えているとしよう。そのときヨガのポーズが果たす役割は機能的なものであるべきであって、ポーズの見た目がきれいかどうかは二次的なものに過ぎない。以下に挙げる8つのヒントはヨガ講師になりたての人が、ヨガの機能的な部分とフォームの美しさとの間に存在する重要な違いに気づくために役に立つはずだ。

1. すべてのポーズがすべての生徒に向くわけではない

同じ生態、同じ来歴の人間はいない。遺伝学、解剖学的構造、ライフスタイル、栄養状態、子供のころの活動レベル、傷病や事故――その他もろもろの来歴上、生物学上の要素によって、私たちは皆、真の意味で唯一無二の存在である。これはヨガ講師にも、生徒にも、すべての人について同様に言えることだ。講師がある特定のアーサナを学んで習得できたからといって、すべての生徒が同じ指示、同じやり方に従ってその姿勢を習得することができるわけではない。人間はきわめて多様だ。であるがゆえに、ヨガのすべてのポーズをできる人は存在しない。また、すべてのポーズにはそのポーズをとるのに難しさを覚える人たちが一定数存在する。人間の多様性の現実から、確かにこう言うことができる。

ヨガを教える8つのポイント

2. 目指すはヨガのもたらす効果? それとも見た目のきれいさ?

ヨガプラクティスが目指すところを理解することが重要である。生徒がベストな健康状態を目的としているのなら、機能的なアプローチこそが必要とされている。もし生徒がとにかくポーズが外見上きれいに決まればそれでいいと考えているなら美的なアプローチで十分である。機能という視点から見るならば、ポーズ中の見た目はまったく無関係である。重要なのはそのポーズによってもたらされる種々の感覚。ポーズ中の外見を基礎におくアライメントの指示は、エステティックヨガだ。感覚の生成を基礎におくのは、ファンクショナル(機能的)ヨガである。

3. 目的はストレッチとは限らない

ヨガのポーズは体組織にさまざまな力を生じさせる。こうした力はストレッチ(筋組織の伸展)をもたらすこともあれば、そうでないこともある。引っ張り応力(引っ張られたときに内部に生じる力)はストレッチを生み出すことが多い(しかし常にではない)。たとえば、バックベント(体を後ろにそらせる動き)は腹筋をストレッチすることで胴体の前面に引っ張り応力を作り出すことがある。圧縮応力(収縮したとき、釣り合いを保つために内部に生ずる力)はストレッチ(伸展)を生じさせない。たとえば、同じバックベントでも、ストレッチが起きる前に脊椎の椎骨が互いにぶつかるのを感じる場合がある。機能的なプラクティスにおいて目指されているのは、ストレッチが生じるか否かにかかわらず、こうした「引っ張り応力」または「圧縮応力」を生み出すことである。こうした力は体内、筋膜内に細胞レベルで生じる反応や交流を活発化させる。こうした力は成長や治癒を活発化させる信号を大量に生じさせる。身についた感覚はこれらの応力をモニターし、力の程度を測り、そしてそれに反応する。ポーズによって体内に生じる力を感じられれば、自分の体組織に圧力を与えているのがわかる。しばしば暗唱するマントラにある通りだ。すなわち「感じられるなら、すでにできている」。

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4. それぞれのポーズには目的がある

機能的なアプローチをとって、体のなかに応力を生み出そうとすれば、それぞれのポーズは「引っ張り応力」あるいは「圧縮応力」のどちらか適切な応力の生成を助ける道具となる。講師として自分自身にこう問いてみよう。「どういう力を生徒に体験して欲しいのか、場所はどこか、程度はどのぐらいか」。こうして自分に問いかけることで、どのポーズを選択するかを決められる。たとえば、脊椎に力を与えたいと考えたとする。圧縮応力と引っ張り応力との両方の方法がある。脊椎を縮めるには、橋のポーズかコブラのポーズのような姿勢が候補となる。脊椎を引っ張って伸ばしたければ、座位または立位の前屈のような姿勢を選べばいい。「格好がいいから」とセレクトしたポーズのリストではなく、まずは目的を定めるところから始めてみよう。そうすれば、その目的に合わせてポーズを慎重に選び、それらを一連の振り付けの中で関連づけて行うことができる。

5. 「どんな感じがしますか?」

生徒たちにポーズの目的と、狙いの身体部位を教えてあげよう。そうすれば、ポージングがちゃんと効いているかどうかモニターできる。生徒たちに「どんな感じがしますか?」と尋ねることで、生徒たちが内的な気づきを感じ取る力を成長させることができる。これはより効果的で深いプラクティスを目指す瞑想でありガイダンスだ。講師が生徒にあたえられるもの――そのなかで最高の贈り物は、生徒が自分で自分の師となれるようにしてあげることなのだ。「どんな感じがしますか?」。この問いかけに答えることで生徒はそのポーズが望ましい効果をもたらしているかどうか決められるようになる。もし効果が生じていなかった場合、生徒は狙った身体部位にたいして感覚を得るためにポーズのアライメントを調整し直すことができる。このようにして生徒はその姿勢のための自分独自のアライメントを見つけるのである。

6. 痛みはシグナル!無視をしてはいけない

「どんな感じがしますか?」という問いかけへの答えが痛みだった場合、なにかを変える必要がある。痛みは主観的なものであり、だれもが同じ経験をするわけではない。どのくらいの痛みが許容レベルなのかも人によってちがう。別の生徒にとっては単なる不快感だったとしてもある生徒にとっては痛み。痛みはシグナルだ。ダメージを受ける瀬戸際だと体が知らせてきているのである。そのシグナルに耳を傾けよう。内的気づきが深まるにつれて、生徒は自分の感じている感覚が起こるべくして起こっている健全なものなのか、あるいはダメージをもたらす有害なものなのか、おのずと判断がつくようになってくる。もしポーズが痛みに満ちたものになってしまったら、アライメントを変えてみる。あるいは同じ身体部位への刺激を目的にしている別のポーズをやってみよう。そちらで痛みが生じなければ、そのポーズをすればいい。(ポーズ中には感じられなかった痛みが、ポーズを解いた後、あるいは翌日に生じていないだろうか。このことにも同様に気をつけよう。痛みが生じたときは必ず1~2日程度さかのぼって思い当たる原因がないかどうか自分がしていたことを振り返ってみよう。こうした振り返りには大きな価値がある。同じ動作をもう繰り返さないようになれる。)

7. 思い込みは捨て、生徒一人一人に向き合おう

陰ヨガの発展させた功労者とも言うべきポール・グリリーは、あるポーズでふたりの生徒がまったく同一人物であるかのように見えたとしても、そのふたりが体験していることはまったく異なると、気がついたという。ひとりは狙った身体部位に生じた応力を十全に感じ、その感覚に浸っているかもしれない。他方でもうひとりは何も感じていないか、あるいは痛みや不快さでそのポーズを保つのが難しい状態にあるかもしれない。後者の生徒には、なにか別の選択肢が必要だ。適切な部位に応力を見いだせるまで、あちこち動かしてポーズを調整してもらおう。生徒がある特定の見かけになるように求めるのは間違い。それは美学的な思い込みであって、役に立たない。生徒が適切な感覚を得るために自分自身のやり方を見つけられるように導くことが大事だ。

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8. 普遍的なインストラクションなんてない

その重要さに反して、アライメントのかけ声は普遍的ではない。人間が一人ひとりちがうがゆえに、誰もに効果的に作用するアライメントのかけ声というのも存在しないのだ。アライメントの目的は、あるポーズにおいて堅牢で安定性があり、かつ安全なポジションを作り出すところにある。しかしどのポジションがベストなアライメントなのかはその人ごとに大きく異なる。機能的プラクティスが目指すものは、狙った身体部位に痛みを生じさせることなく適切な応力を生み出すことである。それができていれば、そのアライメントは正しいアライメントなのだ。標準的なアライメント指示にしたがったときに見いだされる美的原理にそぐわなかったとしてもかまわない。たとえば、ダウンドッグで脚や手をまっすぐ前に向けるとき、誰もが適切な位置をとれるわけではない。あなたも唯一無二の存在であり、同様にすべての生徒も唯一無二の存在なのである。それぞれの体にとって有効なヨガを見つけよう。

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Text by BERINE CLARK
Translated by Miyuki Hosoya



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