【東京⇄千葉】「東京の楽しさも諦めたくない」40代デザイナーが二拠点生活にこだわった理由 #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、東京と千葉県・外房で二拠点生活を送っているmioさんです。ご自身の体調を考慮して、自然豊かな場所に居場所を持つことを選択しましたが、一方で、東京との、二拠点生活にも強いこだわりがあるんだそう。「東京の楽しさは諦めたくないんです」と話すmioさん。mioさんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈二拠点生活者 プロフィール〉mio
Sapo+c. / Creative Director
デザイン歴22年
2026年1月より東京と千葉県で二拠点生活
Instagram: @codvoid
二拠点生活ならではの楽しみ方
2026年1月から、2週間ごとに東京と千葉県の外房を行き来する生活を送っているデザイナーのmioさん。犬と猫を連れての移動は、「荷物が多いから大変なんですよ」と笑うが、それでも二拠点生活が自分にとってベストな選択だと感じているという。
その理由の一つが、「やっぱり東京も大好き」だから。
最先端のものやおしゃれなものが集まる東京という街は、今も昔も刺激に溢れ、mioさんにとって多くのインスピレーションを与えてくれる場所。そして、食も大好きだというmioさんは、二拠点生活だからこそ、東京と外房、それぞれの土地で異なる楽しみ方ができることにも魅力を感じている。
「私も夫も、エスニック料理やファインダイニングに行くのが好きなんです。そのため、東京では外食することも多いです。二拠点生活を始めて改めて感じたのは、東京は技術が集結した街だということですね。料理に関して言えば、食材をおいしく調理することに長けている人がたくさんいる。そういうのを知ってしまうと、やっぱり定期的に食べたくなるんです」
一方、外房には東京のような外食文化はない。店は早いところでは19時には閉まってしまい、外房の自宅周辺では好みに合う飲食店の選択肢も東京ほど多くはないそうだ。
しかし、だからこそ楽しめることもある。それは、地元の食材を使った、自炊。
土地柄、新鮮な食材が手に入りやすく、東京とはまた違った食の楽しみ方ができる。「スーパーは20時には閉まってしまうので、早めに買い物に行かないといけないんですけどね」と笑いながらも、外房では新鮮な食材を自ら選び、料理する時間を楽しんでいる。
二拠点生活での体調の変化
mioさんは、二拠点生活を始める前から、東洋医学や薬膳などに関心があり、それらを日々の生活に取り入れてきたという。白湯を飲む、お灸をする、寝る前にストレッチをするなど、体を整える習慣も以前から続けていた。そう考えると、現在の千葉での暮らしは、これまで続けてきた習慣の延長線上にあるものでもある。自然豊かな環境に身を置くことで、自分が心地よいと感じる暮らしを、より深く実践できるようになったともいえる。そこで、現在の体調や心の変化について伺ってみた。
「最近は腰痛が緩和してきました。それ以外にも、元気になってきている感じはあります。特に感じるのは、マインドの変化です。まだ外房に家がなかった頃、体調が悪かった時期があったのですが、弱っているときって、家からあまり出られないじゃないですか。でも、世の中は変わらずに動き続けている。それで、置いてきぼりにされているように感じてしまったことがありました。そのときは、どんどん体調も悪くなってしまって。けれど今は、自分が理想としていた暮らし方を実現できたからなのか、「自分のペースでいいよね」と考えられるようになりました。それが、体にも影響しているのかもしれません」
さらに、二拠点生活によって、東京で感じていた心の圧迫感も変わってきたという。
情報やモノ、人、仕事など、さまざまなものに囲まれた東京での生活では、気づかないうちに、身も心も目の前のタスクをこなすことだけで精いっぱいになってしまうことがある。いろいろなことを消費するだけで、頭の中が大渋滞になってしまうのは、きっとmioさんだけではないはず。しかし、二拠点生活によって、心から安らげる場所ができたmioさんは、定期的に東京を離れ、自分のペースを取り戻す時間を持つことで、自分の中に「余白」を感じられるようになったそうだ。
その余白があるからこそ、再び東京に戻っても、以前のようにすべてを抱え込んでしまうことはない。定期的に心をリセットする時間をつくることで、東京で感じていた「かっ詰まる」ような感覚も、今ではほとんどなくなった、と目元を緩めながら、mioさんは話す。
二拠点生活で、私欲がなくなった
最後に、mioさんのこれからの夢について伺ってみると、返ってきたのは、意外にもこんな答えだった。
「夢はないですね(笑)。二拠点生活を始めてから、私的な欲はなくなってしまったような気がします。家族が元気で、仕事があれば、それで十分です。それは、病気を経験したからというのもあるのかもしれません。今が人生のボーナスタイムみたいな感覚があって。ボーナスタイムの中で生きられていることに、感謝という気持ちが強いんです。しかも、自分がやりたかった暮らしができている状態です」
今後も、mioさんは二拠点生活を続けていく予定だという。
年齢を重ねていくことを考えると、地方だけで暮らすことには不安もあるから。車が欠かせない生活の中で、いつまで運転できるかは分からない。また、医療インフラが整っている東京のほうが、これから先も安心して暮らせると感じているという。
だからこそ、今はまだ自由に動けるうちに、東京と外房、それぞれの場所で暮らす時間を楽しみたい。
「夢はない」と笑うmioさん。でも、その言葉の裏側には、夢を追い続けるのではなく、すでに自分が望んでいた暮らしを手に入れた人だからこその、穏やかな充足感があった。
若いうちに、今の暮らしを楽しめたら、それで十分。さらに、空いた時間に自分のプライベートワークもできたら、尚のこと良い、とmioさんは感じているという。
東京の刺激も、外房の穏やかさも。どちらか一方を選ぶのではなく、その両方を楽しむこと。それが、mioさんにとっての「自分らしく暮らす」ということなのかもしれない。
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