「生活をするのが好き」二拠点生活を始めてからそう思うようになった｜山口祐加さんの#暮らしの選択肢

今回お話を伺った二拠点生活者は、自炊する人を増やすために「自炊料理家®️」という肩書きで活動している、山口祐加さん。2025年5月より、夫と一緒に東京と岡山での二拠点生活をスタート。生まれも育ちも東京の山口さんは、「生活がすごく好きだということを、岡山で生活するようになって感じることができるようになりました」と満面の笑みを浮かべて語ります。その理由は？山口さんの二拠点生活に迫ります。

二拠点生活を始めて感じた、足るを知る

– 二拠点生活を始めて良かったことについて教えて下さい。

山口さん: 毎日が平和だと感じることですかね。ご飯を作って、洗濯をして、掃除をして…というような、ただ生活してる感じがすごく心地よいです。私にとって仕事はあくまでも人生のサブであると考えていて、生活がすごく好きだということを、岡山で生活するようになって感じることができるようになりました。

– それは、きっと東京の空気も定期的に吸っているからこそ、感じられることなのかもしれませんね。今日、お話をするまで、山口さんは仕事をバリバリやられてる方なんだろうなっていうイメージを抱いていたので、良い意味で意外でした。

山口さん: 仕事は好きですけど、優先順位は常に生活が一番で、仕事が二の次です。あまり悩まないですし、自分のやりたいことのバランスを見ながら仕事も調整してやっています。あとは、特に難しい料理は作らないですし、家事も毎日ちょこちょこ掃除してればそんなに汚れないので、そこまでやることに追われることもないんですよね。家にいることが多いので、物も増えないですし。過不足がなく生活できていて、ちょうどいい暮らしですかね。

– 足るを知るじゃないですが、あるものだけで充分ということですね。例えば、東京に行ったら、反動で買い物をしてしまうなんてことはありませんか？

山口さん: ないですね。おそらく、去年1年間海外に行った経験がすごく影響しているのだと思います。2ヶ月間ごとに日本に戻ってきて衣替えをして、取材に行くというのを1年間を通して続けていたのですが、2ヶ月間スーツケース一個で暮らせるんだってことが分かったのは、とても大きかったです。物はそんなに必要ないんだなと思いました。洋服なども欲しい気持ちはありますが、今は一着買ったら一着処分することが多いので、物は増えません。そもそも、洋服は一日一着しか着ないですし、靴も1日1足しか履かないといということが海外を巡ってよく分かったので、削ぎ落とされた後に、二拠点生活をはじめてよかったかなと思います。

– 確かに、一年間の海外での経験が今の生活にとても生かされているのでしょうね。逆に今、二拠点生活で大変だと感じられていることはどんなことでしょうか？

山口さん: 私は、所有物が少ない方ですが、それでもそれぞれの拠点に生活のために必要なモノを揃えないといけないので、ある程度はお金がかかることですかね。洋服だったり、靴だったりも、基礎化粧品なんかも、それぞれの場所に分散しておいているので。その都度移動するのも面倒ですし。

– 確かに、行き来の度に物も一緒に移動となると、それだけで大荷物になってしまいますもんね。

山口さん: また、移動にもお金かかりますね。今は新幹線で移動していて便利ではあるのですが、やはりお金がかかります。また、私は実家を拠点にしているので、家賃を払わなくていいですけど、そうじゃなかったら家賃も二倍になるので…。

– 確かにそうですね。ただ、片方の家がご実家ですと、メンテナンスなどは、そこまで苦労はされていないのでしょうか。

山口さん: そうですね。家族が住んでいますので、メンテナンスの心配はありません。荷物の受け取りなども頼めます。また、食材が残ってしまった場合も、食べておいてもらえるので助かりますね。

東京だけに住んでいたら味わえなかったこと

– 山口さんは料理家なので、やはり食材というところにもこだわりがあるのではないかと思うのですが、岡山の食材は豊富ですか？

山口さん: そうですね。岡山は、野菜も美味しいですし、果物も有名ですし、海も山もあるので、一通り県内で揃うんじゃないかと思います。

– 岡山で自炊される時は、地元の食材を使うことがほとんどですか？

山口さん: はい。産直にはよく行っています。食材がいいので、何か特別な調理をしなくても美味しいんですよ。それは東京との違いだと思いますね。朝採れたての食材で、持ってくるのに時間がかかっていないので、鮮度が抜群です。東京にいた頃よりも、料理がよりシンプルになっていってる気がします。

– 東京では食材も何でもありますが、輸送時間っていうのでだいぶ変わるんですね。

山口さん: そうだと思います。やはり畑から引っこ抜かれた瞬間から水は抜けていってるので、食材の鮮度や元気さはもう明らかに違う感じがします。

– 東京だけに住んでいたら、そういった食材の豊富さもディープに味わうことができなかったかもしれませんね。最後に、今後の2拠点生活での展望について教えて下さい。

山口さん: せっかくこっちに来たので何も岡山に関係ない仕事を続けるのはもったいないと思っています。そのため、例えば、岡山県をいろいろ巡って生産者さんに会いに行ったり、暮らしに関連するモノを作っている人との縁ができたらいいなと思っています。

〈プロフィール〉

山口祐加（やまぐち・ゆか）

自炊料理家。1992年生まれ。東京都出身。出版社、食のPR会社を経て独立。7歳から料理に親しみ、料理の楽しさを広げるために料理初心者に向けた料理教室「自炊レッスン」や小学生向けの「オンライン子ども自炊レッスン」、レシピ・エッセイの執筆、ポッドキャスト番組「聞くだけでごはんができるラジオ」などは多岐にわたって活動中。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』（晶文社／紀伊國屋じんぶん大賞2024入賞）、『自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法 』（ダイヤモンド社）など多数。

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