〈東京⇔八ヶ岳〉忙しくてもゆっくり過ごす工夫ができるのは、スウェーデン人の考え方に影響を受けたから #暮らしの選択肢

〈東京⇔八ヶ岳〉忙しくてもゆっくり過ごす工夫ができるのは、スウェーデン人の考え方に影響を受けたから #暮らしの選択肢
Photo: N

近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。

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今回お話を伺ったのは、東京と長野県八ヶ岳で二拠点生活を送るNさん。小さい頃からよく通っていた八ヶ岳は「いつか住みたい!」と思っていたほど大好きな場所だったそう。そんな幼い頃からの夢を二拠点生活という形で実現して約3年。以前家族で住んでいたスウェーデンで、現地の方々から影響を受けた考え方、暮らし方も今の生活に活かしていると言います。どういった二拠点生活を送っているのでしょうか。Nさんの二拠点生活に迫ります。

〈プロフィール〉Nさん

東京近郊育ち。幼い頃から父の実家のある八ヶ岳に足繁く通い、「いつか八ヶ岳に住みたい」というのが夢だった。2020年コロナ禍をきっかけに、土地を購入しセカンドハウスを建てる。2015年から2018年まで暮らしたスウェーデンの暮らし方、考え方を活かしながら、二拠点生活を送る。

スウェーデン人の暮らし方に影響を受けた二拠点生活

– 二拠点生活をはじめたのが約3年前ということですが、今はどれくらいの頻度で、東京と八ヶ岳を行き来されているのでしょうか?

Nさん: 平日は東京で仕事をしていて、月に2回、週末を利用して、八ヶ岳へ行きます。2人の子供が東京の学校に通っていて、さらに1人は受験生なので、今は回数を減らしているんです。

– そもそも、なぜ二拠点生活をはじめることになったのでしょうか?

Nさん: 一番大きなきっかけは、コロナ禍でした。実は、セカンドハウスのある八ヶ岳の近くには父の実家があり、小さい頃からよく通っていた場所。結婚した後も、子供が生まれた後も、頻繁に遊びに行っていました。ただ、コロナ前に親戚の不幸があったり、コロナ禍に入ったことで大好きな八ヶ岳に気軽に行けなくなってしまったため、セカンドハウスを建てようというアイディアが思い浮かんだんです。

– 子供の頃から頻繁に帰る場所だった八ヶ岳に気兼ねなく帰れなくなってしまったということですね。では、八ヶ岳以外の場所は特に検討しなかったということでしょうか。

Nさん: そうですね。「二拠点生活をするなら、八ヶ岳がいい」と思い、準備をはじめました。私自身は、東京で育ちましたが、実家のような感じでふらっと、しょっちゅう訪れていて、思い出もたくさんある。息抜きしたい時や、温泉に浸かりたいなと思うと、祖母に「今から行くから」と連絡をとって行っていました。子供の頃から本当に八ヶ岳が好きで、中学生の頃から「いつかここに住みたい」と思っていたくらいなんです

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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– 中学生の頃からの夢が二拠点生活という形で叶ったわけですね!八ヶ岳のどんな所に惹かれていたのでしょうか?

Nさん: 山が好きで、スキーも好きなので、そういったアクティビティが楽しめるのも八ヶ岳に惹かれているポイントです。また、夏は空気がカラッとしていて、過ごしやすいです。以前に3年ほどスウェーデンに住んでいたことがあったのですが、八ヶ岳の気候はスウェーデンに似ているんです。スウェーデンでの生活も大好きだったので、八ヶ岳に行くとその頃の思い出が蘇るようで、懐かしい気持ちになります。実は、子供の頃は長野で就職をして、長野の人と結婚したいと思っていたくらいなんですよ(笑)それは叶いませんでしたが、今はこうして八ヶ岳にセカンドハウスを持つことができて、故郷に帰ったという感じがします。

– 良かったですね。3年間スウェーデンでの生活が何か、二拠点生活をはじめることに影響を及ぼしたということはありませんでしたか?

Nさん: 二拠点生活をはじめたのは、スウェーデンの方々からの影響が大きいと思います。スウェーデンには、自宅とは別に、森の中や自然に近い場所に小さなセカンドハウスを持っている人が多く、平日は集中して仕事をして、週末はセカンドハウスで過ごすというのが日常の風景としてあります。また、夏休みも一ヶ月と長めにとる方が多く、旅行に行く方もいますが、セカンドハウスでのんびり過ごされる方々も多くいます。家族と自然の中でゆっくり過ごすという習慣をとても大切にしている印象です。だから、そういう生活をしたいというのは、スウェーデンにいた頃からずっと思っていました。

– 北欧の方々は、暮らしや生きることをシンプルに楽しむことを知っているというイメージがあります。

Nさん: はい、とても楽しんでいると思います。だから仕事の仕方も全然違うんです。仕事を始めるのは朝早くからで、そのぶん夕方の早い時間には仕事を終えて帰宅してしまいます。残業はあまりしないですし、効率の良い働き方をしているという印象でした。定時で家に帰って、家族とのんびり過ごす。家族との時間を本当に大切しているというところにはとても刺激を受けました。

知っている場所でも土地を買うまでに半年悩み… 決断できたのはどうして?

–八ヶ岳のセカンドハウスは、土地を購入されて家を建てたということですが、色々な土地を見学されましたか?

Nさん: 数カ所見ましたが、「ここが良い」と思ったのは、実際に購入した土地だけでした。ただ、なかなか決心がつかず、半年近く迷っていたんです。たまたま売れずに残っていてくれて、考える時間が与えられたのはラッキーでしたね。その半年間は、月2-3回通って、本当にここでいいのかというのを何度も考えました。

– 大きな買い物ですもんね。

Nさん: もちろん東京都内に比べればだいぶ値段は抑えられます。けれど、そこから家を建てると言うと、数千万円かかってしまうので、果たしてここでいいのかな?というのは、よく知っている場所ではあるけど、不安がありましたね。

– 決断ができたのはどうしてでしょうか?

Nさん: その土地の購入を検討されている方が他に出てきたと不動産の方に言われて、決断できました。それがなかったら、決められなかったと思います。ただ、実は土地を購入した後に、「本当に建てていいか」ということも、とても悩んだんです。田舎なので土地も安く、固定資産税がさほどかかるわけでもないので、しばらくそのままにしていこうかとも思いました。けれど、結局、半年くらい悩んだ末、家を建てることを決心しました。そもそも土地を購入した目的は大好きな八ヶ岳に気軽に足を運ぶためだったので、家を建てないと何もはじまらないと思いました。土地を見てから家が建つまでは2年くらいかかったと思います。ただ、家を建てると決めてからは、かなり早かったですね。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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– 土地のどんな所に惹かれたのでしょうか?

Nさん: 家から出て、道路の方に行くと八ヶ岳が一望できるというのは大きいですね。本当は、家の中から八ヶ岳から見える立地が理想ではあったのですが、それは位置的に叶わず。

– 道路に出るということは、比較的人通りが多い場所ということでしょうか?

Nさん: 夜になれば辺りは静かなのですが、日中はある程度人通りのある場所にあります。首都圏在住の方で、八ヶ岳に移住する人や別荘を建てる方は、人の気配のない森の中を求める方が多いと思います。ただ、うちは夫が、ある程度人っ気のあるところの方を希望していたんです。一方で、周辺には比較的まだ森が残っているところなので、森の中をお散歩できる環境でもあります。開放感があって明るい場所なので、八ヶ岳が見えなくても充分雰囲気を味わうことができます。

– お子さんたちはどんなところを気に入っていますか?

Nさん: 大きな公園が近所にあるのですが、そこがすごく気に入っているようです。きれいな芝生があって走り回れるし、他に遊んでいる子供たちもほとんどいないんです。東京の方では遊具の順番待ちをしなくてはいけないですが、のびのびと遊べる公園が近所にあるのは良かったですね。

– ご自宅を建てるのに、苦労されたことなどはありましたか?

Nさん: 大変だと思うことはありません。「また家を建てたい」と思うくらい楽しめました。もともと建築が好きで、小さい頃から「いつか自分の家を建てたい」と思っていたんです。強いて言えば、ショールーム巡りですかね。コロナ禍の頃だったので、すべて予約制で、さらに予約がとれなかったりということがあったので。

家族でのんびり過ごすために◯◯は置かない

– 八ヶ岳では、どのように過ごされることが多いのでしょうか?

Nさん: 夏場は庭いじりで追われています。月に数回しか行かないので、特別何かを育てているわけではないのですが、行くたびに芝生の管理をしています。あとは、森の中を散歩したり、近所の公園に遊びに行ったり。時々、その公園でイベントがあるので、それに参加するということもあります。冬場は、スキーとスケートですね。

– アクティブに過ごされているんですね。

Nさん: そうなんです。本当は、山登りもしたいんですが、それは子供たちから反対されていて。いつか挑戦したいと思っています。また、私は八ヶ岳の方でヨガレッスンも受けています。たまたま、近所に東京から移住されてきた先生がいらっしゃるんです。ヨガスタジオを併設されたご自宅を建てられていて、そこに通っています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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– 田舎でのんびり過ごすというよりかは、かなりお忙しいようですね。

Nさん: はい。スウェーデンの方々のセカンドハウスで家族とのんびりという暮らしをイメージしていたので、それは予想していなかったことです。何かと体を動かして過ごすことが多く、いつも忙しいですね。ただ、夜は、家族でのんびりして過ごすために、テレビは置かないようにしています。その代わりに、ボードゲームやトランプをしたり、各々で本読んだり。上の子供は受験生なので、今は受験勉強をしていますが。本当は、もう少し長めに行けたら良いな、と思っています。まとまって行けるのは、どうしても夏休みや年末年始だけ。また、週末だけで行く時は、中央道の渋滞を避けているので、24時間いられない時もあるんです。土曜日の夜中に着いて、日曜日の夜帰るというスケジュールになってしまったり。疲れが取れないまま帰ってくることもあります。それでも気持ち的には、リフレッシュできている感覚があります。

– リフレッシュできるのはどうしてでしょうか?

Nさん: 東京ですと、一歩外に出ると、人の数がすごいじゃないですか。どこに行っても、混んでいるし、私の場合は、そういった環境に週末いるのがストレスなんですよね。だから、ちょっとでも時間があれば、なるべく向こうに行きたいです。車で二時間半かけてでも、行きたいですね。

>>>後編へ続く

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