〈長野移住〉理想と現実のギャップに悩んだ移住生活1年目。乗り越えた秘訣とは? #暮らしの選択肢
二拠点生活者のリアルな日常を深堀りする連載企画「#暮らしの選択肢」。今回は、番外編として、地方へ完全移住を選択された移住者へお話を伺います。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」移住者たちが考える、魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回の「#暮らしの選択肢」は、番外編。地方へ完全移住を選択された神奈川県・鎌倉市出身のmiroさんにお話を伺いました。ヴィーガンの料理教室/コミュニティを運営されているmiroさんは、夫の脱サラを機に、2025年7月に長野県軽井沢へ移住。5年越しの夢を叶え自然の中での暮らしをはじめたmiroさんですが、最初の2ヶ月間は慣れないことの連続に戸惑ったと言います。現在は、自然の中での暮らしにもだいぶ慣れ、日々を楽しむことができるように。苦労を乗り越えた方法、またこれからの夢についても語っていただきました。miroさんの「#暮らしの選択肢」に迫ります。
〈プロフィール〉miroさん
パンデミックを機に、地球・人・生き物に優しい循環した未来を目指すように。自身のInstagramやYouTubeで、野菜や大豆ミート、有機的な調味料で作る菜食料理を発信しながら、オンライン料理教室兼コミュニティ〈miro's kitchen online〉を運営。(2026年3月に終了予定)2025年に、念願だった自然と寄り添った暮らしを実現するために、長野県軽井沢市に完全移住。
Instagram: @miroskitchine_16
YouTube: @Miroskitchen
畑仕事で虫には慣れているはずだったけれど…?
– 軽井沢で実際に暮らしはじめてから、イメージと違ったことなどはありましたか?
miroさん: 一番イメージと違ったのは、虫ですね(笑)今でもハッキリと覚えているのが、引っ越した次の日の朝のことです。前の晩、玄関の電気をつけっぱなしで寝ちゃったんですよ。それで、朝起きて「よし最初の朝だ」と意気揚々と玄関を空けたら、標本で見るようなすごい大きな蛾が50匹ほど玄関の周りにくっついていたんです。そこで、人間の世界じゃない世界に私たちがお邪魔させてもらったんだという現実を知った感じはありましたね。結構浮かれていた部分もあったのですが、自然に敬意を持って過ごさないといけないなと引き締まる思いがしました。
実は、移住した最初の2ヶ月は夏で一番虫の大きい季節が重なったということもあり、私も夫もちょっと鬱っぽくなってしまったんです。家の中に蟻の行列ができていたり。時々、都心から田舎に移住したけれど、結局数年で帰ってしまうという話があると思うんです。もしかしたら、こういったイメージのギャップから、そうなってしまうのかな、と思ったりしました。
– 「確かにそういうこともあるよね」とも思うのですが、もしかしたら一般の人が考える長野暮らしや森暮らしのイメージからは、あまり想像できないかもしれませんね。
miroさん: そうかもしれませんね。特にInstagramなどでは、あまりリアルなことを載せることも少ないかもしれないので。だから、自然を身近に感じられる場所へ移住をするなら、リアルなことを知った上で、決断するのがおすすめです。もちろん、同じ軽井沢内でも街の方に行けばもっと整備もされていますので、すべての場所がそういう場所でないと思いますが。
– 理想と現実をしっかりと分かった上で、決断するのがおすすめということですね。miroさんは、関東にいた時から、畑仕事をされて虫にも耐性があったと思うのですが、それでも軽井沢の虫は強烈でしたか?
miroさん: はい。正直、虫にはかなり慣れている方だと思っていたのですが、数や大きさも私がこれまで見てきたり、触れ合ってきた虫とは規格外でした。また、今まで見たこともない虫も本当に多くて。やはり自分の安心安全なスペースの中にいるのは、最初はかなり驚きました。カメムシが10匹ぐらい部屋にいたこともありました。ただ、誤解しないでいただきたいのが、虫自体が悪いものではないということです。それぞれに自然環境に与える役割というものがありますし。虫だけでなく、野生動物も多い地域なので、「共存」という言葉の意味とも改めて向き合わせてもらうきっかけになりました。
– 虫対策は何かされましたか?
miroさん: 正直、最初は本当にどこから手を付けて良いのか分からなかったのですが、まずは庭を整備することからはじめるのが良いのかなと思いました。引っ越してきた当初は、庭というよりかは、森だったので(笑)ただ、整備すると言っても、私が触れていた畑とは規模が違いすぎたので、関東でお世話になった農家さんに遥々来ていただいたんです。実は、その農家さんももともと森を切り開いて畑を作った方なので、何かアドバイスをもらえるかと思って。それに、最初は木を伐採するということにも抵抗があったんです。木は、私たちより何十年も生きてるじゃないですか。なので、その命を自分たちのエゴで終わらせるというのも簡単には選択できませんでした。だから、専門家の方に、最初やってもらえたのはすごいありがたかったです。そこから、精神的な負担が本当に軽くなりました。
– 良かったですね。ちなみに、業者に依頼することは考えられなかったのでしょうか?
miroさん: もちろん業者に依頼した方が早いですし簡単なのですが、私たちは自分たちの手でやりたいというこだわりがあったんです。家のセルフリノベーションも同じ理由なのですが、以前千葉県にある白子の家という古民家の改修を手伝わせてもらったんです。みんなで何かを作っていくということは、大人になるとなかなかできない経験じゃないですか。もちろん素人なので下手な部分とかもあるけど、「あの木は、◯◯が切った木だ」というような思い出とか、みんなの顔が浮かぶストーリー性のある家や庭って、とても素敵だなと思ったんですよね。
– 文化祭のようで、素敵ですね。では、ご友人の方々も呼んで一緒にセルフリノベも進めているんですね。
miroさん: そうなんです。ありがたいことに、大工さんだったり、モノづくりが得意な友人もいるので、教えてもらいながら、やっています。大人になって友達に会うとなると、やっぱり飲食店だったり、都心だと特に集まる場所って限られちゃうと思うんですけど。だから、こういった新しい遊び方ができるのは、本当にラッキーだと思います。なのであんまり早く終わらせたくないんです。
– 大変なことも、周りの人の協力を得ながら楽しんで乗り越えていっているということですね。庭や家を整えていく過程で、虫の反応はどうでしたか?
miroさん: 実は、庭の木を整えるのには、2ヶ月ほどかかって、終わった時には虫の多い夏は去ってしまったんです。ただ、木の伐採に協力してくれた農家さんによると、家の中に虫が大量発生するのは、家の下の落ち葉が腐葉土になっているのではないかということでした。冬の間も、落ち葉の中は温く、虫はそこに卵を産んで、それが家に入ってしまっているのではないかと。だから、今年の木の伐採や、秋の落ち葉かきの成果が、来年の春から夏に良い影響があれば良いのですが。
季節の移り変わりを間近で目撃できることが幸せ
– 毎日どのように過ごされることが多いですか?
miroさん:夏の間は、朝起きて白湯を沸かして1日をはじめていたのですが、最近バリに住んでいる友人がはじめたブランド「Rah ayu」のセレモニアルカカオを使ってカカオセレモニー(※)することが日課の一つです。朝は氷点下になることも多いのですが、カカオドリンクで心身ともに温めて、呼吸を整える時間がとても至福の時間です。
※カカオセレモニー: 特別な「セレモニアル・カカオ」を飲みながら瞑想や呼吸法、音楽などを通して自分と深く繋がるプラクティス
– 寒いからこそ体験できる、心温まる時間かもしれませんね。
miroさん: そうかもしれません。その後は、午前中は仕事をして、午後暖かくなったら落ち葉かきをします。「落ち葉かきは毎日のルーティンにした方が良い」ということをご近所の方にアドバイスいただいたんです。落ち葉をためてしまうと、もう掃除しきれないので。だから、2時間ほど集中して落ち葉かきをしています。
– 2時間の落ち葉かきはすごいですね。いい運動にもなりそうですし、ある種の瞑想的な時間にもなりそうですね。
miroさん: そうですね。無理に運動を取り入れなくても、暮らしの中で自然と触れ合いながら体を動かせるのは有り難いことです。今は、落ち葉かきですが、これから本格的な冬がはじまったら、雪かきになるのかなと思います。
– 季節ごとにルーティンも変わってくるわけですね。
miroさん: はい。夏から秋にかけては、朝散歩をしていたのですが、本格的な冬を迎える今は、朝の散歩は寒すぎてできないですし。自然の巡りに応じて、ルーティンの変化も楽しんでいます。
– 今の生活で、一番楽しいことはどんなことでしょうか?
miroさん: 季節の移り変わりを味わうことがとても楽しいです。特に夏から秋にかけて、紅葉の色が緑から、オレンジになって赤になって落ちるという過程を間近で目撃できるのはすごく豊かだと思います。これまで、海外も大好きで頻繁に旅行に行っていたのですが、今は日々の変化を見逃したくない気持ちがすごく強いです。
– いいですね。関東と長野の生活で一番違うところはどういったところでしょうか。
miroさん: 私にとって一番大きな変化は車社会になったことですね。実は、移住が決まってから今年免許をとったんです。まさか、自分が山道を毎日運転するなんてこと思ってもみなかったので、それは一番違うところな気がしますね。あとは、温泉があることも大きいですね。暮らしの一部に温泉があることは本当に幸せです。また、お野菜や果物が水々しくてさらにお手頃で、自然に旬をいただけて、地産地消ができて有り難いです。あとは水と空気が美味しいとか、星が綺麗とか、たくさんあります(笑)
– 軽井沢に移住してから、お料理の方法などは変わりましたか?
miroさん: 素材が美味しいので、あまり手をかけなくなったかもしれないです。もちろん仕事でレシピを作る時は色々考えるんですけど、普段家で自分たちのために料理をする時はシンプル調理が増えましたね。夫が作ってくれることも増えました。
– 移住されてから、お仕事的には、何か影響はありましたか?
miroさん: はい。これまでは、食の部分を生業にしてきたのですが、今は食に加えて衣・住、つまり「衣食住」が、私たちが生活していく上で不可欠な要素だということを感じているんです。もちろん、食べたもので心身ができているのですが、目で見てるものや、身を置く環境、肌で触れるものなどもすごく大切だと、軽井沢に移住してからより強く感じるようになりました。実は、来年3月に料理教室を一旦おしまいにする予定なのです。その代わり、衣の分野を深めるため、来年2月にインドの縫製工場を見学して、パジャマを作りたいと思っています。地球にも優しくて、さらに女性の雇用支援という循環が生まれる一着を作りたくて。染めは日本で行い、日本の草木染め文化も取り入れる予定です。
– これまでとは、180度異なる仕事になりますね。
miroさん: そうなんですよ。仕事内容もですが働き方も、コロナ以降はInstagramやオンライン発信に力をいれてきましたが、オフラインでのつながりも充実させたいと思っているところなんです。まずは、地域との繋がりを深めたいと思っていて、そこからまた新しい輪が広げられたら嬉しいです。同年代の方がやっている飲食店を見つけたり、ワークショップや畑の体験会なんかもあるようなので、そういったところにも積極的に顔を出して、まずは地域のことを学ばせてもらいたいです。
– 少しずつ暮らしが整っていく感じですね。これからが楽しみですね!
miroさん: はい。最初はどうなることかと思ったのですが(笑)やっと少しずつ心が平穏になってきて、今は純粋に暮らしを楽しめています。これから初めての冬なので、もちろんいろいろあるとは思いますが、大変なこともひっくるめて今を楽しみたいと思います。
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