夢は75歳まで二拠点生活!そのために必要なプランニングとは? #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回、お話を伺った二拠点生活者は、神戸と北海道で二拠点生活を送る山内 洋子さんです。2023年、50歳の時に二拠点生活をスタートした山内さんは、75歳まで神戸と北海道を行き来する生活を計画されているんだとか。25年間の二拠点生活を実現するために、山内さんが行ったこととは?山内さんの二拠点生活に迫ります。
北海道暮らしで、盲点だったこととは?
– 二拠点生活をはじめる前と、はじめた後で、想像と違っていたことはありますか?
山内さん: 一番衝撃だったのが、湿度ですね。北海道は湿度が低いイメージしかなかったのですが、北海道の家は木々に囲まれた森の中にある、森林住宅なんです。そのため、森の中だと夏は湿度が高くて、カビ対策が必須だったんですよ。これは全く想像もしてなかったことなので驚きました。1年目の秋に入りかけた頃に、2ヶ月近く北海道に行けなかった時期があったんです。それで、久々に北海道の家に戻ったら、頭痛がして。そういうことは初めてだったのでどうしてだろうと家の中を見てまわったら、いたるところにカビを発見しました。夏の時期に、締め切って換気ができていなかったんですよね。それで、翌年からはエアコンをいれました。
– それまでエアコンなしだったんですか?
山内さん: 北海道は、一般的にエアコンがいらないと言われてました。ただ、ここ近年は温暖化の影響もあり、エアコンを入れる家も急増しているようです。私たちも入居時にはエアコンの取付けは想定していなかったのですが、夏のカビ問題に直面し、エアコンを入れて除湿機能を使えば乗り切れるのかも、と。ただ、初年度はエアコン取り付け工事は2ヶ月待ちと言われまして、待っているうちに冬になるので(笑)冬になればエアコンの必要がなくなるので、二年目の夏に取付を依頼して実施しました。見事に、夏のカビ問題は機械が解決してくれました。今のエアコンは遠隔操作できるので、スマホで確認して、湿度が高くなってきたら、除湿機能を使うようにしています。そうしたら、本当にすごく快適になりましたね。
– 便利な時代ですね!北海道は冬は雪が何十センチも積もる印象があり冬場のトラブルは多く、夏場にトラブルはないのでは、と想像していました。
山内さん: そうですね。夏のトラブルはあまり予想していませんでした。森林住宅ならではのトラブルだとは思いますが。一方で、冬場はそこまでのトラブルは今のところ起きていないんですよ。確かに雪は降りますが、雪が降れば雪かき以外何にもできないので(笑)あとは家の中にこもっています。ただ、冬に留守が続く際には、水道管の破裂を防ぐため水道管を閉めないといけないんですが、自分でやるとやり方が甘くて、破裂したことがあって修理代が高くついたよ、と前の持ち主さんに聞いて。水道管を閉める作業は毎回プロに頼んでます。これは当初思っていなかった必要経費でしたね!
お金はかかるけど、デメリットではない
– 二拠点生活は体力的にしんどいことがあるのではないかと想像するのですが、いかがでしょうか?
山内さん:体力的にしんどいことは今のところないですね。よく「移動が大変そう」と言われることもありますが、私はそこまで苦痛に感じません。実は、私は10年ピラティスをやっているんですが、そのおかげなのか、疲れることはほとんどないです。
– 先程、神戸では人との時間を共有して、北海道では孤独を楽しむとおっしゃっていましたが、環境の違いで精神的に疲れることがありませんか?
山内さん: 拠点の違いという面では、オンとオフを楽しんでいる感じですね。そのため、精神的に疲れることもありません。神戸では人とたくさん会うので、それはやっぱり楽しいです。それが刺激になる反面、たくさんの人に会うと疲れることもあるじゃないですか。けれど、北海道では誰ともほとんど会わないので、内側にグッと入っていける感覚があります。それは単純に窓から見える景色が森なので、それだけでリフレッシュできているんだと思うんですよね。あと雪が大好きなので、冬の雪景色には本当に癒されます。これは神戸では見れないので。ただ、意外にも北海道にいる時は運動不足になりがちです。家の中にいるだけで満足しちゃうので。だから、意識的に散歩に出かけるようにしています。ただし、春から夏にかけては、くまが怖いので散歩の距離はすごく減ってしまいます。
– くまは本当に出るんですね。
山内さん:もともとヒグマは大きな川があるところに生息するようなことを聞いていました。ニュースでもご存じかと思いますが、ここ数年では色々な場所に出没するようになりました。うちの拠点のあるエリアに大きな川はないのですが、二年前から、ごくたまに町内での目撃情報が出てきています。町のニュースをメールでキャッチしたり、出没などの情報は『ひぐまっぷ』などで確認して注意しています。
– 神戸と北海道の間で移動したら、すぐにモードは切り替えられますか?
山内さん: 神戸に帰ると、わりとすぐに切り替えられます。それは、神戸の生活が長いからなのか、やるべきことがはっきりしているからなのか、あわただしくしているうちに気づけば日常に入っています。神戸では仕事をする時間も多いので、数字関係の仕事は比較的ゴールがはっきりしていますし、納期もあるということも影響してか、そうこうするうちに、すんなりと。一方で、北海道に帰ったときは、自由に予定を組めるということもあってか、なかなかすぐには切り替えらず、まず初日はモゾモゾしています(笑)北海道でもリモート会議や、デスクワークも必要に応じてするのですが、環境的にもできれば絵を描くことを中心に時間を使いたいと思っていまして。絵の制作は普段から気分に左右されるというのもあるので、そこにモードをもっていくように数日かけている気がします。
– 数字の仕事と絵の仕事では、使っている脳の部位とかも違いそうですもんね。
山内さん: そうですね。だから、北海道に戻ったら荷解きをしたり、森をながめたり、庭仕事をしたり、家事をしたり、得意の妄想タイムに入ったり…そんな風にして、自然と切り替わっていくのを待っています。あとは、北海道の家は風呂場の蛇口をひねると、温泉がでるんですよ。神戸のマンションは湯船をなくしてシャワーだけにしてしまったので、それはかなり嬉しくて。のんびり温泉に浸かって、モードを切り替えるようにしていますね。
– 温泉が蛇口から出るなんて羨ましい!二拠点生活をはじめて、良かったことはどんなことですか?
山内さん: やはり20代の頃からの願望が叶ったということが一番良かったことですね。「願望だけで終わりました」というのは、くやしいので。人生欲張って生きていきたいタイプです。
二拠点生活をして良かったこととして大きいのは、オン・オフの場所が持てたことですね。北海道にいると、風や鳥の音だけが聞こえて、心身ともにリフレッシュできる感覚があります。一方で、やっぱり街育ちなので、街が恋しくなり、そしたらいつでも帰ることができる。これは二拠点生活ならではだと思うんですよね。
加えて、例えば庭づくりからも、たくさんのことを学べています。そこに自然に備わっている環境や植物に耳を傾けながら、ときに強引に手を入れながら、を繰り返しながら、少しずつ理想の庭に近づけていくのかな、と。人と自然の共演のような気がしています。人間の無力さや、逆に人間にしか出来ないことにも気づけたり、自然から学ぶことはとても沢山ありますね。もっと自然とも仲良くなりたいです(笑)
– 物理的に2つの異なった環境に身を置くことで、バランスが整えられるのかもしれませんね。
山内さん: そうなんです。変な話ですけど、逃げる場所があるので、安心感がありますね。
– いいですね。逆に二拠点生活で大変だと感じることはありますか?
山内さん: やはり一拠点で暮らすより、お金がかかるのは事実です。そこは大変なことなのかもしれません。ただ、二拠点生活をしていなければ、そのぶん別のことにお金を使っていたと思うので、そこはデメリットだと思っていません。以前は、大型バイクにも乗っていましたし、車検などにも結構費用がかかっていました。バイク仲間と色々な場所でキャンプをしたり楽しい経験をたくさんさせてもらったのですが、二拠点生活をすると必然的にバイクに乗る時間がなくなって。だから、大きなバイクは手放しました。バイクにかけていたお金を今二拠点生活に使っている感じですね。おそらく、二拠点生活をしていなかったら、もう少しバイクにも乗り続けていたと思います。
75歳まで二拠点生活継続を計画。そのために、必要なこととは?
– 今後もしばらくは、二拠点生活をする予定ですか?
山内さん: はい、その予定です。私はファイナンシャルプランナーでもあるので、二拠点生活をはじめる前に、この無謀な野望をどうやったら叶えられるかっていうのをちゃんと裏設計しているんですよ、実は。それはちょっと自分でも、ありがたいなと思っていて(笑)その設計では少なくとも75歳までは、二拠点生活ができるようになっています。
– 75歳!すごいですね!
山内さん: もちろん体力的な問題もあると思いますし、健康で居続けることが前提にはなりますが、75歳まではいけたらいいなと。健康でさえいられたら、今のようなネット社会だからこそ、二拠点生活の継続は想像以上に簡単にできるのではないのかなと思うんですよね。どこを拠点にしていようと、だいたいの場所で、仕事、家族、振込、手続き、結構な範囲が解決できてしまうので。ほんと、ありがたい!
– きちんとした設計があると、安心して暮らし続けていけますね。
山内さん: そうなんですよ。金銭的なこともそうなんですが、家の維持管理についても設計が必要だなと感じています。田舎暮らしだったり二拠点生活を計画する時は、まだまだ元気な時なので、年齢を重ねた時のことを視野に入れずに進めることも多いと思うんですが、そうなると年を重ねた時、メンテナンスがしんどくなってきて、家や周辺が荒れてきたりとか、庭は草ボーボーになったりとか、絶対なりますよね(笑)せっかく拠点を持つからには、できる限り素敵な状態を維持したいので、年齢を重ねた時にも、維持管理がしやすいような庭作りを、体力があるいまのうちにやっておこうと、楽しみながら計画して、コツコツ実行あるのみです。
– ファイナンシャルプランナーのお仕事をされてるのとかも全部そのためだったんじゃないかという気がしますね。
山内さん: そうなんです。自分の野望を叶えるためだったのか、みたいな(笑)ありがたいことに上手い具合にことが運んでくれました。もし今後二拠点を考えられている人で、金銭的なことがネックになっているようであれば、プロに相談するのも手だと思います。それを機会にファイナンスの勉強をするのもいいかもしれません。本当に叶えたい願いがあって、それに対して計画をして行動に移しさえすれば、協力者が現れたり、なにか別の方法に出逢えたりするものだと思っています。
– 経験者だからこその説得力があります!最後に、今後の展望について教えて下さい。
山内さん: 二拠点というところでは、コツコツ生活の最適化を継続して、より心地よい環境づくりを進めていきたいです。また二拠点生活を維持しつつ、国内も海外もウロウロできたらいいのにな、と。短い期間でもその土地にとどまって暮らすように旅していけたら、と今は考えています。そこから、たくさんのカルチャーショックや面白いことを持ち帰って、日本での二拠点生活や絵の制作に組み込んでいけたら楽しいんじゃないかと思っています。
【プロフィール】山内洋子
1972年、神戸生まれ神戸育ち。
2023年より、神戸⇔道南 二拠点生活をスタート。
ファイナンシャルプランナーなどの数字の仕事をメインに、30代からは絵の制作もコツコツ。木版画の作品が菓子箱のパッケージに採用されたり、たまに仕事に結びつくことも。今後は絵の制作にも注力していく予定。来年は東京で二人展、神戸で個展を予定。詳細は、Instagramにてお知らせ予定。
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