大阪-松本の二拠点生活をする49歳女性が「可能性が広がった」と語る理由 #暮らしの選択肢

大阪-松本の二拠点生活をする49歳女性が「可能性が広がった」と語る理由 #暮らしの選択肢
写真提供: 堀井 朋子

近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。

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今回お話を伺った二拠点生活者は、大阪と長野県松本市で生活をする堀井朋子さんです。堀井さんは、2024年春から、長らく単身赴任をしていたご主人に合流し、大阪(赴任先)と松本での二拠点生活をはじめられました。今年49歳を迎える堀井さんは、生まれも育ちも長野県。そんな彼女は二拠点生活が可能性を広げてくれたと話します。堀井さんの二拠点生活に迫ります。

二拠点生活のおかげで冒険ができるように

– 二拠点生活を始めてから、何か変化したことはありますか?

堀井さん: 一番大きなことは、大阪に来て車を手放したことです。先程もお話した通り、松本では、どこに行くにも車で移動するのが普通で、それは私にとってはかなりの変化ですね。

– 車を手放したのはどうしてですか?

堀井さん: 大阪では、公共交通機関だけで便利に暮らせるので、車が必要ないんですよね。あと、今はレンタカーが時間ごとに借りられるので、それで充分です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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– 確かに、都市では公共交通機関で色々なところに行けちゃいますし、お子さんも大きくなったら、車を持つ必要性もそこまで高くないかもしれませんね。

堀井さん: そうなんですよね。6時間以内のレンタカー利用なら、ガソリンを入れて返さなくてもよくて、料金もリーズナブルに提供してくれる会社がありますから。車がない生活になって、車を所有するのってすごくお金がかかっていたんだな、と実感しています。ガソリン代や税金、保険だったり。松本の冬はスタッドレスタイヤが必須ですし、出費はかさんでいました。今はレンタカーとたまにタクシーを利用しても、こちらの方が経済的です。車との付き合い方は二拠点生活をはじめてから変化した良かったことの一つです。

– 松本でも車は所有されていないんですか?

堀井さん: はい。車が必要であればレンタカーを借ります。松本では、車ないんだよって言うとすごいびっくりされるんですけどね。「どうやって暮らすの?」と言われます(笑)

– 車を手放すのはかなり勇気がいることだったのではないでしょうか?

堀井さん: 大阪を拠点にあちこち移動することに慣れたので、そこまで大変ではなかったですね。松本でも公共交通機関を駆使することができるようになりましたし。松本では、車を持っているのが当たり前なので、バスの乗り方を知らない大人は意外と多いんです。最近、クレカタッチ決済でバスに乗れるようになったんですけど、みんな知らない(笑)。バス路線も知らないし。だけど、私は大阪生活を通して「バス」という選択肢を知ったので、フットワークがかなり軽くなったと思います。知らない地方のバスに乗るのって、勇気がいるじゃないですか。「どこに行くのかな」というように。外国人と同じような感覚ですね。そんなことは松本に住んでいた時には絶対できなかったんですが、今はそれも楽しめる様になりました。

– 冒険ができるようになった感じですかね。

堀井さん: そうですね。冒険ができるようになったし、間違えてもいいじゃんって思えるようになりました。

都市で暮らすようになって、改めて感じる松本の魅力

– 松本には用事をからめて帰ることが多いとのことなので、滞在はあっという間に時間が過ぎてしまうのでしょうか。

堀井さん: 基本的には時間の流れが違うので、松本の家に帰るだけで、短い滞在でもゆっくりできちゃいますね。実は、松本の家ではテレビを手放したんです。二拠点生活になるまで、ケーブルテレビとネットと固定電話の回線を通していたんですが、それは全部やめました。固定電話なんて、1ヶ月に1回なるかならないかなのに、やっぱり田舎だから固定電話を通している家が多いんですよね。そのため、なんとなく我が家もやめられなくて。けれど、そういったランニングコストももったいないと思い、ネットの契約も切りました。今は松本に戻る時は、一時的にWi-Fiルーターのレンタルをします。そのおかげもあって、すごくゆっくり時間が流れますし、デジタルデトックスにもなっています。 

– 余計なノイズが入らないので、時間の流れがゆっくりするんでしょうね。

堀井さん: そうですね。それに大坂がにぎやかな街だからこそ、一層そう感じるのかもしれません。

– 静かなところに帰って、すぐに切り替えることができますか?

堀井さん: 自然に切り替えられますね。本当に静かなので。松本に暮らしてた時は、松本がこんなに静かだってことに気づかなかったんですよ。やはり、ずっとそこにいると気付かないものなんですね。だけど、大阪に暮らすと周りの音が多いので、そこから松本に帰った時に、静かすぎてびっくりしました。鳥の声と風の音しか聞こえなくて。

– 大阪で暮らすようになって、松本に対しての見方は何か変わりましたか?

堀井さん: 前々から綺麗なところだと思って暮らしてはいましたけど、やはりずっといると、その素晴らしさが分からなくなってくるのだと思います。トレイルランニングで家から少し小高い山まで行くと見える北アルプスの景色があるんですけど、以前も綺麗だと思って見てましたけど、今はそれが、どれだけ特別なことなのかというのが、分かりましたね。そのため、松本に行く度に、周りの人に「松本の自然は本当に素晴らしいんだよ」と言っています(笑)きっと、私も二拠点生活をしなかったら、そこまで感じることはなかったかもしれません。

年齢を理由に諦めたくない

– 二拠点生活をはじめて良かったことはどんなことでしょうか?

堀井さん: それぞれの土地の良さが、際立って見えるということではないでしょうか。大阪の都市の便利さも感じるし、信州の空気や水の美味しさもより感じることができる。それぞれにないものの価値をすごく感じられることは本当にラッキーなことですよね。もちろん、どちらも楽しむためには、健康じゃないと絶対ダメだと思うのですが。

– 松本と大阪の移動だけでもかなりのエネルギーが必要ですもんね。二拠点生活をして可能性がすごい広がった感じですね。 

堀井さん: そういうことですね。「私、こんなことできるんだ」とか、新しい自分の発見の連続です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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– 逆に二拠点生活で大変だと感じられることは何かありますか?

堀井さん: 交通費ですかね。飛行機を使っているので、頻繁に行き来が必要な時は、やはりお金がかかりますよね。

– 月に2回行き来があるとなると、お金もかかりそうですね。松本のご自宅のメンテナンスはどうされてるんですか?

堀井さん: 管理は、お庭のお手入れをお願いしている業者さんがいるので、留守中も引き続きそちらにお願いしています。ただ、大したメンテナンスは必要ないんです。と言うのも、松本の家はハウスメーカーで建てたので機能性や防犯面が優れていて、冬もほったらかしにしてもどこかが凍ってしまうということもないですし。

– 雪国だと冬は大変なのかなと思ってたんですけど、そうでもないんですね。

堀井さん: そうですね。寒冷地用の建物になっているので、ある程度コントロールできています。そういう面は安心かな。それに松本は寒いですが、そこまで大雪が降ったりするのは、まれなんですよ。

– 二拠点生活はいつぐらいまで続く見通しなどはあるのでしょうか?

堀井さん: おそらく5年以内には、松本での一拠点生活に戻ることになると思います。それまでに大阪ではない土地にまた異動があるかもしれないですし。そのため、大阪を拠点にしていけるところは、今行っておこうという気持ちでいます。コロナ禍を経験したっていうのもあるんでしょうね。あの時どこにも行けなかった感覚があるからこそ、そう思うのかもしれません。ゆったりしている場合じゃないな、という(笑)松本にいた時は、松本以外をよく知らなかったので、その良さがちゃんとは分かっていなかった。松本を外から見ることで、今はその良さを再確認することができましたし、松本に移住なり二拠点生活を考えている方などもたくさんいると思うので、興味がある方に向けて、何か携われたらいいなという気持ちも生まれました。あとは、「年だから」と言って、諦める人がやはり多いと思うんです。そこを払拭していきたいですね。

– 確かに年齢を重ねるごとに可能性が広がっていくことを実感している堀井さんだからこそ、伝えられることがありますよね。堀井さんは、二拠点生活をはじめる前は、こんなにご自身が二拠点生活を楽しんでいることがイメージできていましたか?

堀井さん: 実は、生活を楽しむ以前に心配していたのが、夫と久々に一緒に暮らすことだったんです。彼は10年間単身赴任でしたし、単身赴任の前に子供が生まれていたので、2人で暮らすのが本当に久々で、大丈夫かな、と夫も心配だったみたいです。お互い「初めまして」という感じで、なんかちょっと変な感じでした(笑)

– お二人で暮らすようになって一年半近く経つわけですが、いかがですか? 

堀井さん:お互い大人になってるので、生活のルールをいくつか決めました。結婚したばかりの頃って、お互い好きが勝って、相手の為になればと我慢もするし、我慢とも思わずにやってあげることはよくあることだと思うんです。その後、子供ができて、家族になってみたいなところがあって、10年間の単身生活でそれぞれのマイルールも確立していただろうし、だからこそ、改めての同居ルールを決めました。 

– 偏見かもしれませんが、ルールを決めるということを嫌がる男性も多いのではないのかな、と思っていて。だから、そういうことに協力的なのはいいですね。

堀井さん:そうですね。夫は、結婚当初、いわゆる昭和の家庭像みたいな考えが強い、亭主関白でした。年齢も私と10歳以上離れているので、ジェネレーションのギャップも相当あって。けれど、単身赴任をするようになってすごく変わりましたね。帰宅するとご飯が出来ていること、洗濯がされて畳まれていること、私からしたら、そんな些細なこと、と思いますがものすごい感謝してくれるようになったんですよね。今でも毎日「洗濯をしてくれてありがとう」と言ってくれます。

– 素敵!嬉しいですね。

堀井さん: そうですね。だから、私は「あなた伸びしろがあって、すごいよ」といつも言っています(笑)

– いいですね!最後に、これからの二拠点生活の展望を教えて下さい。

堀井さん: 実は二つ叶えたいと思うことがあります。今、私はコーヒー豆の麻袋でバッグを作る仕事をしています。大阪や、旅行した地でコーヒーを飲むのですが、最近自家焙煎のお店がすごく多いじゃないですか。そこで、不要になったコーヒー豆の輸送に使われた麻袋をいただいて、アップサイクルして商品にする、という活動をしているんです。せっかく、大阪を拠点に色々な場所に行けて、向こう5年ほどはこの生活が続くのであれば、その地で出会ったコーヒー屋さんと仕事するっていうのを、これからも続けられたらと思っています。その土地を楽しみながら、その土地に関われて、なおかつ誰かをちょっと楽しくするものづくりができたらいいなと思っています。

もう一つは、長野県へ戻った後のこととして、夫の実家である築100年の農家古民家を整備して活用していきたいということ。まだ考え出したばかりの夢物語ですが、その準備の為に松本へ帰省する機会も増えてきています。二拠点生活で都市部に暮らしたからこそ分かる田舎の歴史ある古民家を、何とか輝かせていけないかと思案するのが、昨今の悩みであり楽しみになっています。

〈プロフィール〉堀井 朋子

写真提供: 堀井 朋子
写真提供: 堀井 朋子

49歳。松本⇔大阪 二拠点暮らし。趣味は、ランニングと喫茶店巡り。

コーヒー豆の麻袋から作る布小物、数寄屋ポーチ専門店『HORII_ya』を展開

Instagram: @horii.sense

Instagram: @horii_ya
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