「いつか八ヶ岳に住みたい」が叶った二拠点生活。だけど、東京から完全移住はしない。その理由は？#暮らしの選択肢

今回お話を伺ったのは、東京と長野県 八ヶ岳で二拠点生活を送るNさん。小さい頃からよく通っていた八ヶ岳は「いつか住みたい！」と思っていたほど大好きな場所だったそう。そんな幼い頃からの夢を二拠点生活という形で実現して約3年。二拠点生活をはじめてからのことを振り返ってみても、特別苦労したことは思いつかないというほど、充実した生活だったと言います。一方で、周りには完全移住をされる方も多い中で、Nさんは、このまま東京と八ヶ岳の二拠点生活を続けていくと考えているそう。一体どうしてでしょうか？Nさんの二拠点生活に迫ります。

〈プロフィール〉Nさん

東京近郊育ち。幼い頃から父の実家のある八ヶ岳に足繁く通い、「いつか八ヶ岳に住みたい」というのが夢だった。2020年コロナ禍をきっかけに、土地を購入しセカンドハウスを建てる。2015年から2018年まで暮らしたスウェーデンの暮らし方、考え方を活かしながら、二拠点生活を送る。

自然豊かな場所にセカンドハウスを持つ時に考慮した方が良いこととは？

– 二拠点生活をはじめて良かったこととは何でしょうか？

Nさん: 大好きな八ヶ岳に拠点を持てたというのが、一番良かったことだと思います。また、忙しい中でも家族で過ごす時間が増えたことにも満足しています。東京だと仕事や学業が中心なので、どうしても個人個人でバタバタしている感じになってしまいます。だから、東京の生活をオンだとすると、八ヶ岳の生活はオフになるのかと思います。

– スウェーデンの方々のように、東京では仕事や勉強する時はそれにしっかり集中して、八ヶ岳では家族の時間を大切にできるているということですね。オンオフは、すぐに切り替わるものですか？

Nさん: はい。場所が変わると、自然と切り替わります。東京では、本当に色々なことに追われていますが、八ヶ岳でリフレッシュしているおかげもあってか、それぞれやるべきことをしっかりと行うことができていると思います。一方で、八ヶ岳に行ったら、楽しい時間を過ごすことに集中できます。

 

– 東京での仕事のことが忘れられなかったり、帰りの時間のことが気になってしまうということはありませんか？

Nさん: ないですね。東京の仕事のことは忘れられます。主人は忘れることができないことも多く、八ヶ岳でパソコンに向かっていることもありますが。また、家が建ってからは、帰りの時間のこともそこまで気にならなくなりました。振り返ってみると、家が建つ前は、渋滞に巻き込まれないようにするために神経を使っていて、充分に楽しめていなかったような気がします。中央道の渋滞にハマって、10時間くらいかかったこともあるんでよ。特に夏休みや連休の時期などは渋滞がひどいです。最初にお話した通り、身内の不幸が重なったことで、父の実家にはステイできなくなってしまったので、八ヶ岳にいる時はホテルにステイしていたんです。ホテルだとチェックアウトの時間は決まってるじゃないですか。けれど、今は自宅なので、ニュースで事前に渋滞情報を確認すれば、ピークの時間をずらすこともできるので、だいぶ楽になりましたね。

– いいですね。逆に、3年間の二拠点生活を振り返ってみて、苦労されたことなどはありましたか？

Nさん: 二拠点生活において特に苦労したということはないと思います。ただ、家を空けている期間が多いので、自然災害には少し心配事があります。台風や大雪で、倒木する、停電するということもあるので。我が家は、冬の間は凍結防止のための水抜きをしないでも良い設計にしてもらっているのと、遠隔で暖房操作をできるようにしているのですが、停電してしまうと、暖房の遠隔操作ができなくなってしまいます。ただ、八ヶ岳は地理的に、大雪になることも少ない地域なんです。寒さは厳しいですが、そこまで雪が降るエリアではないので、今の所、大雪でそこまで困ったということもありません。

 

– 自然の脅威に関しては、やはり注意を払わなければいけないということですね。

Nさん: あとは、人っ気のない家だと、キツツキやモグラが来るんです。モグラが庭に穴を掘ったり、家庭菜園をしているご家庭は畑を荒らされてしまったという方もいます。キツツキは外壁に突っついて穴を空けてしまうんです。我々の家は今のところ、穴はまだ空けられていないのですが、キツツキに突かれた痕は残っているので、注意が必要だと思っています。あとは、夏前には、小さな蜂の巣が軒下にできていました。まだ小さかったので、なんとか素人でも駆除できたのですが。

– 自然豊かな場所ですと、野生動物たちと共存する方法も身につけていかないといけないわけですね。野生動物と言えば、熊は出ないのでしょうか？

Nさん: 私はまだ熊に会ったことはありませんが、1キロちょっと先のところで、熊が出たと耳にしたので、散歩の時は熊よけの鈴を持ち歩いています。音楽を爆音で流しながら散歩しているという友達もいます。一方で、鹿はよく出ますね。鹿にぶつかって、廃車になったというのを耳にしたことがあります。

完全移住はしない予定。その理由は？

– 二拠点生活をはじめてから、東京に対して何か見方がが変わったということはありますか？

Nさん: 特に変わったことはないと思います。もしかしたら、二拠点生活だからかもしれませんが…。八ヶ岳の方には、移住された方々も周りにたくさんいらっしゃいますが、移住者は、みなさん幸せそうですね。そういう方々を見ていると、私も八ヶ岳に移住したいと思ったりはします。

– ゆくゆくは完全移住することも視野に入れているのでしょうか？

Nさん: 完全移住というのは、おそらく当分しないと思います。というのも、そもそも私たち夫婦は、東京で仕事をしています。また、私たち家族の考えとしては、子供たちの教育は東京で受けた方が合っていると考えていて。もちろん、真逆の考え方の方も結構多いと思うのですが。自然豊かな場所で子育てをしたいという方は、子連れで移住されていますよね。

 

– では、お子さんたちの手が離れるまでは、しばらくは今の二拠点生活が続くというわけですね。

Nさん: そうですね。また、子供たちが巣立った後も、おそらく、このまま二拠点生活は続けていくと思います。ただ、八ヶ岳がメインで、東京がセカンドハウス的な感じにしたいと思っているんです。仕事もこのまま続けていきますし。また、八ヶ岳は車社会なので、運転ができなくなったら暮らしていくのが難しいのではないかと。例えば、80歳近くになって足腰が弱くなってきたら、やはり東京の方が暮らしやすいのかと考えています。そのため、東京の家もこのまま維持して、ライフステージに応じて、生活スタイルも変えていこうと思っています。