国家公務員だった私が今、福島でサスティナブルな化粧品を作る理由

 国家公務員だった私が今、福島でサスティナブルな化粧品を作る理由
Miai Kobayashi
SAKURA
SAKURA
2021-04-11

国家公務員という仕事を辞め、福島と東京の二拠点生活を始めた女性。しかも、その地で放棄されていたものを活用し、女性の体にやさしいデリケートゾーンケアのブランドを立ち上げた。生き方、働き方、そして持続可能な社会に向けての思いとは。

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2021年3月、アメリカで初めて、カリフォルニア州ペタルマ市が新たなガソリンスタンドの新設や改修、移転を禁止することを発表した。すでに、イギリスやデンマークでは2030年までにガソリン車・ハイブリッド車の新車販売禁止に踏み切っており、化石燃料からの脱却に向けてそれぞれの国で対策が進んでいる。日本政府も「2050年カーボンニュートラル」に向けて、2020年12月には「純ガソリン車の新規販売を2030年代半ばまでに終了する方針」を打ち出している。

このように世界が急速に持続可能な社会に向けて変化していくなか、2021年1月に「サスティナブルコスメアワード2020」の受賞コスメが発表された。このアワードは「SDGsの理念のもと、人にも地球にもやさしいコスメを応援する」ことを目指し、2019年に始まった。数多くのエントリーコスメのなか、シルバー賞を受賞したのは2020年1月に誕生したばかりのデリケートゾーンケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』のフェミニンオイルだった。審査員の一人、サスティナブルファッションに関する情報を発信している一般社団法人unisteps代表・鎌田安里紗さんは「循環型ものづくりの仕組み、ローカルでの雇用創出、女性のエンパワーメントなど、ひとつのアイテムから複数のよいエネルギーを生み出していることが素晴らしいと思います。まだまだ日本では一般的ではないデリケートゾーンケアですが、カジュアルで魅力的なパッケージと商品名で、新たな使用者の後押しをすると考えられます」とコメントしていた。

男性並みに働くことが「やりがい」だと思っていた。でも、それは働くロボットだった

『明日 わたしは柿の木にのぼる』を作ったのは、小林味愛さん、34歳。コスメ業界で経験を積んできた、オーガニック業界で働いてきたというキャリアではなく、社会人としての一歩は国家公務員だった。

「大学に入学したときは、受験勉強じゃない、社会についての学びができるというのが楽しくて、毎朝5時に起きて大学に通い、教室の一番前の席に座り、1限から授業を受けるという学生でした。漠然とですが、将来は社会の役に立つ仕事をしたいと考えていました」

そして、国家公務員を選んだ。「利益とかではなく、人の役に立てる仕事が自分に向いていると思った」のがきっかけだったが、採用人数はごくわずか。配属されたのは、衆議院調査局。

「2年後に異動になり、経済産業省に。ちょうど民主党政権から第二次安倍政権に移ったばかりのときでしたから、本当に忙しくて。帰るのは毎日深夜、泊まり込むこともありましたし、毎日の睡眠時間は2~3時間くらいでした。今思うと、よく生きていたなと思うほど」。

小林さんは「24時間ほとんど仕事をしていたから、いろんな人と会って話をするとか、家族との時間を過ごすとか、自分をケアするとか、心のゆとりとかも全くありませんでした」と振り返る。

「睡眠時間を削ってでも働いていたのは、男性がそういう働き方を当然としている世界で認められるには、同じことができないとダメと思っていたからなんですね。男性と同じように働き、いかに男性と同じと思われるかということをずっと考えていて…頑張ることが美徳という世界でしたから、体調が悪くて病院に行くのも、隠れて行くしかなかったし、休むなんてできませんでした」

それを「やりがい」と思い、自分が社会で役立つためにはそういう働き方をするしかない、だから男性並みに働くのだと、自分を納得させてきた日々だった。それを小林さんは「ロボットだった、ちょっとした感情をはさむとやっていけなくなるから、ロボットが正しいと思うしかなかった」と語る。

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