「捨てられる野菜で染めた服」廃棄食材を再活用するFOOD TEXTILEが目指す未来
お気に入りのファッションアイテムが、オーガニックや天然染料にこだわったものというだけで、日常にほっこり癒しを感じられます。「FOOD TEXTILE」も、天然染料90%以上のやさしい色合いに心がほぐされ、それも、廃棄されるはずだった野菜やフルーツなど、食材の残渣から抽出された天然の色だと知って、ますます愛着が増してくるアイテムたち。食品で染められた安心感を感じながら、深刻な廃棄食材問題へのアプローチもできて、自然愛もぐっと深まる……そんなFOOD TEXTILEのサステイナブルな取り組みに、注目が集まっています。
このTシャツは「キャベツ」、これは「ブルーベリー」、このパジャマは「レタス」……なんて思わず誰かに自慢したくなるネーミング。「着る野菜」というキャッチーなコンセプトを掲げて、2015年からスタートした「FOOD TEXTILE」は、アパレル業界から廃棄食材再活用に貢献するプロジェクトです。
現在、世界の食品生産量のうち約1/3が捨てられ、食品廃棄量は世界で年間約13億トン、日本国内では年間約2800万トン。そのうち、規格外の食材や売れ残り、期限切れの食品、食べ残しなど、「まだ食べられる食品」も国内だけで年間600万トン以上が無駄に捨てられ、「食品ロス」として大きな社会問題となっています。これは日本人1人あたりお茶碗1杯分の食べ物を毎日無駄に捨てている計算になり、世界の食料援助量の約2倍にも相当するそう。
食品ロスに限らず、トレンドの波が激しいファッション業界も、衣服の過剰廃棄が増え続け、大量生産・大量消費・大量廃棄というアンバランスが大きな問題に。染色にも多くの化学染料が使われ、地球環境にも大きなダメージを与えてしまっています。FOOD TEXTILEはそんな食品業界とファッション業界の架け橋となり、持続可能な未来を目指したアイテムを通して、社会問題を考えるきっかけやメッセージを届けています。170年以上の歴史を持つ繊維の専門商社「豊島株式会社」で、今取り組みを手掛けるプロジェクトリーダーの谷村佳宏さんに、立ち上げのきっかけや活動への思いを伺いました。
ーー「ファッションを通して廃棄食材を再活用する」とはとても斬新なアイデアですね。思いついたきっかけは何だったのでしょうか?
「僕らは繊維商社として、衣類の原料となる糸や生地など繊維製品の買い付け・販売などの事業を展開していて、僕はおもに、ブランドさんの黒子役として、海外に製品縫製を委託したり、洋服を生産・流通する業務を担当してきました。ちょうどプロジェクトを立ち上げた2015年頃は、ファッション業界の『価格競争』がどんどん激しくなって、消費者は安さを追い求め、クオリティは高くても価格は安くせざるを得ない。作り手側も大量生産・大量消費・大量廃棄が当たり前になり、環境破壊も深刻になっているのを実感していました。そんな現実を目の当たりにして、『このままこの仕事を続けて、本当に豊かな人生が送れるだろうか』と感じるようになり、この状況をなんとかしたい、何か自分にできることはないか、と考えたのが一番最初の動機でした」
ーーファッション産業の問題点や環境負荷を肌で感じたことがきっかけだったんですね。そこから廃棄食材にフォーカスした経緯を教えてください。
「以前から異業種の方々とも交流させていただいていましたが、あるとき今の取引先でもある『キューピー』のCSR担当者さんとお話する機会があって、そこで食品ロスの現状を伺ったんです。最近はわりと知られるようになりましたが、5~6年前はまだそこまで問題意識が大きく叫ばれていなかった頃。ですが『キユーピー』さんは当時からすでにさまざまな工夫や開発にチャレンジされていて。そこで『僕らも一緒に何かできたら』と思いついたんです。実際に、食品関連企業や飲食店、農園などへ伺ってみると、サイズ・形などが不揃いで規格外になった食材や、売れ残り・食べ残りなどが大量に廃棄処分されていて、そんな処分予定の余りものにも、作り手さんたちの想いが宿っていることを感じたんですよね。そこで、それらを買い取らせてもらって染料を抽出して、染色した生地や商品を作ってみようと。立ち上げから5年ですが、オリジナル製品も日常使いからビネスシーンまでラインナップも広がり、Tシャツや靴下、ネクタイ、エコバッグ、エプロンなどを販売しながら、企業やブランド、カフェなどとの商品コラボレーションもやらせてもらっています」
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
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