エシカルでサステナブルな石鹸ブランド「9.kyuu」プロデューサーが社会に伝えたいこと

手のひらにのせて、ぬるま湯を加えて泡だてはじめると、ふんわりとムースのようにきめ細かな泡が立ち、大自然の中にいるような香りがふわーっと広がり、まるで精油を炊いているかのように、もしくはそれ以上にバスルームに香りが漂い、身も心もほぐれて軽やかな気持ちになる。9.kyuuの石鹸を初めて使った時、今までにない石鹸感覚を体験しました。

この9.kyuuを手がけるのはコスメブランディングコンサルタントで社会起業家としても活動する菅野沙織さんです。9.kyuuは年始に発売されて以来、広告を一切行っていないにも関わらず、一度使ったユーザーからの口コミでじわじわと人気が広がり、Instagramでも話題となっています。

―菅野さんは15年以上、様々な化粧品のプロデュースに携わってこられていますが、なぜ今石鹸に特化したブランドを立ち上げられたのでしょうか？

「世に送り出す化粧品を通じて多くの人が、外側からだけでなく、内側も綺麗になれるように。そして、広い意味での社会貢献に繋がるように…」という思いで、常にものづくりに携わってきました。しかし、この仕事に携わって15年以上経った今、改めて感じるのは世の中に物が溢れすぎているということです。また情報が多すぎて、多くの消費者は何を選べば良いか分からないという状況下にあると感じています。

そんな世の中の流れから再注目した素材が石鹸でした。石鹸はゴミも少なくてすみますし、使い切ったら最終的に消えてなくなります。また、9.kyuuの石鹸は美容洗顔石鹸として、ボディソープとしてお使いいただけるのでアイテムがシンプルでバスルームもすっきりします。私はこの職業でありながら、実はスキンケアにあれもこれも使うのが苦手で、しかしボディも洗顔と同じようにケアしたいという想いもあったので、9.kyuuの石鹸は一石二鳥でとても便利です（笑）。洗い上がりもぬるぬる感が残らず、泡切れがよくすっきり洗い上がるのも9.kyuuの石鹸の好きなところです。

また、9.kyuuの石鹸素材は1856年創業の英国のStephenson社の素材をベースとして使用しています。同社の製造する石鹸素材は、伝統的なコールドプロセス製法の石鹸とは異なり、安全かつ簡単に初めての方にも石鹸を作っていただくことが可能です。もちろん商品をそのままお使いいただくこともできますが、湯煎やレンジをお使いいただき、たった3分程で自分だけの石鹸を作ることも可能です。色も香りも形も変幻自在でその日の気分や調子、目的に合わせてパーソナライズすることができます。また、工程がとても簡単ですのでお子様でも楽しめます。家族や友人と暮らしの中のアートなひと時を共有したり、一人でも自分だけの有意義な時間を楽しんだりして頂きたいと思います。

近年、多種多様な価値観や文化が広がり、お客様からのニーズも非常に様々です。一人一人に合ったパーソナライズな商品をお届けしたいという思いから9.kyuuが誕生しました。

―9.kyuuはSDGsへの取り組みも積極的に行っているとお伺いしました。9.kyuuを通して社会に伝えていきたいメッセージはありますか？

2015年国連サミットで採択された国際目標であるSDGsを耳にした時、「これこそまさに私がずっと意識してきたこと、そして力を入れていきたいことだ」とピンときました。なんとなく頭に思い描いていたことがまとめられていて、作る側も使う側もこういうことをしっかり意識する時代になったんだなと実感しました。

SDGsの中でも目標12の「つくる責任・つかう責任」は特に重要視しています。9.kyuuの「つくる責任・つかう責任」に関する取り組みは大きく3点にわけられます。まず、パッケージなど資材を減らし、過剰な包装を避け、出来る限りゴミの削減を目指しています。

第二に、過剰な在庫を持たないように需要を考えながら生産や物流管理を行っています。第三に、オーガニック素材や持続可能なパーム油など環境や人に配慮した素材を積極的に取り入れています。

多くの皆様が責任を持って使うものを選び、そして責任をもって消費することができるようになる「気づき」を提供していければと考えております。そして、地球や環境のことを考えたり、自分自身のマインドセットを変えたりするきっかけになったら嬉しいです。

―異業種とのコラボレーションを積極的に行っているそうですね？

全国の教育機関、美術館、ブライダル会社、地方自治体など様々な業種や団体、アーティストなどと連携し、9.kyuuの石鹸素材を使ったワークショップや教育活動の実施、またコラボレーション商品の販売などを行っています。

Fun Fun Flower代表でフラワーサイクリストの河島春佳さんには、結婚式やイベントで廃棄される花（ロスフラワー）を再利用して作るロスフラワー石鹸に9.kyuuの石鹸素材をご使用頂いております。

また、私もメンバーの一人として活動する「一般社団法人green4」では、全国の大学や高校などの教育機関、地方自治体、文化施設にて、9.kyuuの石鹸材料を教材としてご使用頂いています。同団体はSDGsの啓発や普及に取り組み、持続可能な社会を目指す教育活動を行っています。現在、私も大学や高校で、女性の働き方やSDGsについて、またエシカルなものづくりについて授業を行っています。また、ワークショップ形式を積極的に取り入れ、石鹸作りを通して「つくる責任・つかう責任」について一緒に学んでいきます。本年度は、創立100年を迎える姫路女学院高校（兵庫県姫路市）にて石鹸で「ものづくり」そして「SDGs」を学ぶ1年間のビジネスプログラムを実施予定です。

今後も美容業界だけではなく、異業種とも積極的に連携し、石鹸を通じて新たな文化や価値観を発信していきたいです。また、9.kyuuはヨガとも親和性の高いアロマセラピーを取り入れていますので、今後コラボできれば嬉しいです。

―自身も二児の母でもある菅野さん。9.kyuuは主に女性メンバーで立ち上げたと聞きました。

はい。それぞれ家庭を持っていたり、子供が産まれたばかりで育休明けであったり、フリーランスであったり、様々なライフスタイルを持った女性メンバーで立ち上げました。日々笑いの絶えない愉快で温かいメンバー達です。そんなメンバーの雰囲気が9.kyuuのアイテムやInstagramでも伝わっている気がします。

私自身も小学生と中学生の子供を持つ母で、母親としてはまだまだ未熟だなと思うことも多々あります。しかし、母親業をしながら、自分なりの働き方、そして心地よいライフスタイルを常に模索してきました。女性はこうあるべき、という考えは取り払い、もっと肩の力を抜いて、仕事や子育て、美容に対する考え方、多様な考え方があって良いと思っています。9.kyuuは、女性が「自分軸」を大切にし、自分自身をブランディングするお手伝いができればと思っています。

―3月23日に発売される新商品「コズミックキューブ」は占星術のエッセンスを取り入れています。五感を研ぎますことを大切にする9.kyuuらしいコンセプトですね。

「コズミックキューブ」は12星座のそれぞれの性質をイメージし、肌効果はもちろんのこと、香りとホロスコープごとのカラーにこだわって自然由来の美容成分をブレンドして作った12種類の美容石鹸です。占星術がきっかけとなって、自分の知らなかった自分自身の個性を知ったり、モチベーションが上がったりと特にマインドへの効果を意識しました。

相手の生年月日で商品を選べるので、ギフトとして購入される方も少なくありません。大切な誰かに贈る際、その人だけのオリジナル感を出せるのは贈る側も受け取る側も嬉しいですよね。

また、手作りにも興味があるけれどなかなか時間が避けない、まずは9.kyuuを使ってみたい、自分に相性の良いアロマが配合された石鹸を使ってみたい、という需要にもお答えしたいという想いもあり、「コズミックキューブ」が誕生しました。

―お客様からの声で印象に残っていることはありますか？

ツクレルネコキットというネコ型の石鹸キットを販売しているのですが、色んな色と香りのネコ石鹸を作れると評判でInstagramなどでもお写真をシェアしてくださっている方が多く、現在人気ナンバー１のアイテムです。

そのキットをご使用いただいたお客様から「チョコレートづくりよりも簡単！面白すぎてドンドン石鹸を作りすぎてしまいます！」という声をお寄せ頂き、とても嬉しかったです。思わず周りにも教えたくなったり、ワクワク心踊って思わず笑みがこぼれたりするようなものづくりができればと思っていたので、こういった声はとても励みになりますね。

―最後に菅野さんのインスピレーションの源を教えてください。

田舎に生まれ育ち、常に自然が身近な存在でした。都会に暮らす今も、どちらかというと海より山派で、植物に触れたり、自然と触れ合ったりするのが大好きですね。空気や風、季節や植物の香り、自然の織りなす色…五感を研ぎ澄ましたときに得られるインスピレーションに勝るものはありませんね。

私が菅野さんと知り合ったのは10年以上前のこと。その後、彼女も母となり、年齢や経験を重ね、様々な経験が人生に、仕事に、益々彩りを加えているようだ。たおやかで物腰柔らかな中に芯の強さを秘めた彼女の作りだすものには人を惹きつける不思議な魅力がある。

菅野 沙織さんプロフィール
コスメブランディングコンサルタント / 社会起業家 / 9.kyuu プロデューサー。
明治大学農学部農芸化学科卒。美容商品開発コンサルタントとして、数多くの企業で化粧品開発に携わり、300アイテム以上の商品を世に送り出している。現在はエシカルでサスティナブルな化粧品開発の傍ら、大学や高校でビューティービジネスやSDGsについての講義を行なっている。また、講演会やラジオなどにも出演。アーユルヴェーダヨガインストラクター
9.kyuu Instagram
9.kyuuブランドサイト

ライター／山口 華恵 
東京女子大学 文理学部英米文学科卒業後、製薬会社、外資系・日系PR会社で広告や広報業務に携わった後、ベルギー・ドイツ・アメリカの3カ国で約10年間生活を送る。現在は英日・仏日翻訳者、ライター、PRプランナーとして活動。ヨガジャーナルオンラインの記事翻訳も毎月レギュラーで担当している。

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