〈東京→長野移住〉電車は1時間に1本。不便な暮らしの中で、見つけた小さな幸せ #暮らしの選択肢
近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市から地方へ完全移住をする人々が増加傾向にあるのはご存知でしょうか。自然豊かな環境でのびのびと生活ができる、住宅費などの物価の安さ、あるいは子育てのメリットなども魅力の地方移住。一方で、実際に移住した人たちのリアルな本音はどうなのでしょうか。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ人」から、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる移住者たちの「暮らしの選択肢」の今を伝えます。
今回お話を伺ったのは、2025年に東京から長野県へ移住されたhimaryさん。自身の体調を考慮したこと、また20歳年上のパートナーの夢を一緒に叶えたいという思いから、地方移住を決断。電車は1時間に1本しかない、手に入るものは限られている。そんな選択肢が少ない暮らしが、とても幸せなことだと、語ります。himaryさんの #暮らしの選択肢に迫ります。
〈移住者プロフィール〉himary
デザイナー。2025年、パートナーと共に、東京から長野へ移住。Instagram: @hhiimmaarrii YouTube: @hhiimmaarrii_youtube
選択肢が少ないことは、幸せなこと
長野移住をして1年。himaryさんは、今年に入ってからデザイナーの仕事を休んで、専業主婦として過ごしている。家事をしたり、家の庭で畑仕事をしたり、時には農家でアルバイトをすることもあるんだとか。
移住1年目よりもペースをやや落とし暮らしをする中で、himaryさんが長野の暮らしで感じていること。それは、人々の優しさ。そしてその理由は街全体にちょっとした心の余白があるということだという。
彼女が東京に住んでいた頃、最も苦痛だったのが、電車に乗ることだった。満員電車で通勤して、満員電車で退勤して、を繰り返す日々。しかも、東京であれば3分に1本電車が到着する。それでも1本を逃せば、感情的になってしまう人も珍しくない。
一方で、長野では、1時間に1本しか電車がない。1本乗り遅れたら、もうアウト。けれど、そこで焦らないのが長野の人々だという。少なくとも、周囲のエネルギーに敏感なhimaryさんは、乗り遅れた後の苛立ちを長野の人々から感じたことはないそう。
「次の電車までの1時間、楽しそうに話している学生やおばあちゃんたちをよく目撃します。あとは、ホームのベンチでスマホも触らずぼーっとしている会社員の方もいますね。そのような時間の使い方から、人に優しくできる心の余白が生まれてる気がします」
便利でスピード感のある東京の暮らしでは、何でもコントロールをしやすい。だからこそ、思い通りにならなかった時に感情的になってしまうのかもしれない。一方で、1時間に1本という電車の数からも分かるように、決して便利とは言えない環境なことは、不便さを受け入れ、その代わりに、心の余裕を生む機会を与えてくれるのかもしれない。
交通機関だけではなく生活全般での不便さにも、himaryさんは幸せを感じているという。himaryさんの暮らすエリアは、どちらかというとアクセスの良いエリア。車がなくても、買い物をすることや、カフェに行くこともできる。一方で、選べる選択肢は圧倒的に少ないという。
「選択肢がないということは、他に比較する候補がないということ。それは、すごく幸せなことだと思います」
長野暮らしで、辛かったこととは?
himaryさんが地方移住に魅力を感じるのは、日本の美しさを再実感することができたということ。四方八方をビルに囲まれた場所で過ごしてきたからこそ、豊かな自然に魅了されているのでは、と彼女は考える。また、社会人1年目で体調を崩したこともあり、食には人一倍気を遣っている。だから、無農薬で生き生き育った野菜で毎日お腹いっぱいになることがありがたいのだとか。
「物価高騰など、食をめぐるさまざまなニュースを耳にしますが、この辺りでは農家さんでなくても畑を持っている方が多いんです。特に夏野菜はたくさん採れるので、ご近所同士でお裾分けし合うことも多くて。食べ物に困ることはまずありませんね。」
一方、思っていた以上に辛かったのは、寒さだったそう。himaryさんの暮らす場所の冬は、最高気温がマイナス1度、最低気温は山間部の方だと、マイナス16度にもなることも。特に、彼女は自律神経のバランスを崩して体調が悪くなってしまったという経緯もあるため、気温の変化や季節の変わり目にはかなり敏感な方だという。もともとは、外交的で人と話すのが大好きなのだが、去年初めて過した長野の冬は完全に冬眠モード。雪国のため除雪車も優秀で外に出ることも可能だったが、春から秋のように、活発に外に出ることはなかった。
「この期間は、家に篭って、春が芽吹くのを待っていましたが、自分の内側と向き合う時間に当てることができました。気分が落ち込んでしまいやすい時期ではありましたが、春になって、ぱっと草花が芽吹き始めた時に、一皮むけた自分が現れたというか。今思うと、すごくいい期間でした」
長野の春夏秋冬を経験し、移住生活2年目を迎えたhimaryさんたちは、現在、自分たちの家を持つという方向で、物件を探している最中。こちらで希望の職に就いたパートナーも、仕事を楽しんでいるし、何よりも二人とも長野のバイブスが合っている。また、長野で暮らすようになって、より地方移住のリアルが分かった今、自分たちの家を決めるのがベストなタイミングだったと、改めている感じているという。
「長野へ移住する前は、いずれかは、山間の小さい集落で暮らしたいというイメージを持っていました。けれど、山間ですと、冬はより雪深く、街中に出る道中もアイスバーンなど危険が伴います。また、いずれか子供ができるかもしれないということを考えると、学校のことなどもありますし、アクセスの良い平地で、けれど、今よりもさらに自然に近い場所が良いと考えています」
最初に、移住したいと思ってから、3年が経った今、新たな夢に向かって動き出した、himaryさんとパートナー。ただ地方に移住することだけがゴールではなくて、暮らしを徐々に快適で、より理想的なものに近づけるために、奮闘している。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





